今月、行われたトランポリン世界選手権。8位以上でパリオリンピックの出場枠獲得となるなか、見事、銅メダルを獲得したのは、西岡隆成選手(20)。日本は7大会連続でオリンピック出場を決めました。その素顔は、驚きの連続でした。
■トランポリンは「残酷な競技すぎる」
松岡修造さん:「自分は、どんな性格だと思います?」
西岡選手:「気ままな気がします。わがままな気がします。やりたくないことは、やらないし。結構、偏っていると思います」
トランポリン界を引っ張る西岡選手。今月の世界選手権では、最大の武器「3回宙返り」が光りました。これを10本の跳躍の中で、6本成功させたのです。
さらに西岡選手は、2年前にはとんでもない演技をしていました。なんと、7本の3回宙返り。今でも破られていない、世界最高難度点をたたき出しました。「これはすごい!」「歴史を塗り替えたぞ!」と、普通は思うのですが…。
西岡選手:「(最高難度点ということを)全然知らなかった。世界のトランポリン選手とか、全然知らなくて。今までの人とは戦わないので。今まですごかった人ではあるけど、自分が戦う敵ではない。興味がなかったんですよ」
松岡さん:「ちょっと待ってください。そんな人いるんですか?」
西岡選手:「トランポリン自体あんまり好きじゃない、すみません」
松岡さん:「いやいや、謝らないの!」
西岡選手:「変な競技じゃないですか。たった20秒で、オリンピックの場合は4年やってきたことが終わっちゃう。残酷な競技すぎる。一回のミスで、人生が終わっちゃうくらい。いくら憎んできたかっていう感じです、今までで」
競技時間はたった20秒。タイミングがわずかにズレるだけで致命的なミスとなり、けがのリスクとも常に隣り合わせ。そんな残酷な競技に、この1年は特に苦しめられていました。
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■けがで「レベル0」に…復帰までの“過程”を楽しむ■けがで「レベル0」に…復帰までの“過程”を楽しむ
去年、左ひざの半月板を損傷。12月には手術をし、3カ月もの間マットを離れました。後ろ向きになって、当然な状況。ところが…。
西岡選手:「楽しかったですね。ゲームが好きなんですけど、ゲームも負けたら悔しいし、勝つためにどうしていこうかっていう。徐々に良くなっていく感じは、ゲームをしているような感覚ではありました。手術をして、一回どん底に落ちてレベル0になった。もう歩けもしないっていう。レベル0から、また積み上げで積み上げて、最終的にはレベルどんどん上がっていくっていう。この過程が楽しい」
松岡さん:「トランポリンを辞めるチャンスだったのでは?」
西岡選手:「確かに」
松岡さん:「ですよね。だってしょうがないよね、『けがだもんな』って、みんな納得するわけですよ」
西岡選手:「何かダサいじゃないですか。『あいつけがして、もう辞めたぜ』『上手いやつ抜けたから、俺らラッキー』みたいに思われるのも嫌だし」
逃げたら、ダサい。けがの後、磨きをかけたのは…。
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■やりたいことは…「五輪で金メダルを取ること」ではない■やりたいことは…「五輪で金メダルを取ること」ではない
西岡選手:「演技点を伸ばすのが無難かなとは思います」
松岡さん:「演技点というと、演技をしている…」
西岡選手:「きれいさです。自分の一番の弱点は、つま先がばらけちゃうんですよ。揃えないといけないんですけど、技をしてる時に重なっちゃったりして。そうすると、もう減点」
これまでは、3回宙返りの回数を増やし、技の難しさを表す、難度点勝負してきた西岡選手。現在は膝の負担を考慮し、技の美しさを表す、演技点と向き合いました。
たとえば、つま先をそろえることで、演技点を増やすことができます。さらに、広げると減点になるという両手。フォームの修正に励みました。
銅メダルとなった、世界選手権でも光ったのは、技の難しさではなく、技の美しさ。銀メダルを獲得した2年前のスコアと比べてみても、演技点は上回っています。今までと違う戦い方で、メダル獲得となりました。
松岡さん:「ものすごい伸びしろと期待感が、僕は聞いてるだけも出てくる訳です。自分でもそうなんじゃないですか」
西岡選手:「トランポリン自体は嫌いだけど、自分の成長に関しては楽しみ。何が目的かと言われると別にない。『オリンピックで金メダルを取ること」がやりたいことではない。トランポリンを使って、さらに人生を面白くしたい。その人生を面白くしたいの条件として、オリンピックで1位とかっていうのはあります」
(「報道ステーション」2023年11月28放送分より)