ヨーロッパでは、ゴールキーパーは一番人気のポジションで、特にイタリアはゴールキーパー大国と言われています。そんななか、イタリア・セリエAで活躍しているのが、鈴木彩艶選手(22)です。日本代表の守護神が進化を遂げています。
■去年のアジアカップで大きな挫折を経験
日本代表ゴールキーパー・鈴木彩艶選手は、今シーズンから日本人ゴールキーパーとして初めてイタリア・セリエAに挑戦しています。チームの拠点は、美食の街・パルマです。
「イタリアですね。日本じゃなかなか見ないですね。Buono!Buono! mi piace si!!(おいしい!おいしい!好きです!)」
ガーナ人の父親と日本人の母親を持つ鈴木彩艶選手は、埼玉県育ちで、浦和レッズの下部組織に所属していました。
現在行われているワールドカップ、アジア最終予選では、ここまで6試合フル出場でわずか「2失点」。22歳ながら、日本代表の守護神として活躍しています。
ただ、ここまで順調にキャリアを歩んできたわけではありません。去年のアジアカップで大きな挫折を経験しました。
A代表で初めての国際大会で、スタメンに大抜擢。しかし、史上最強と言われた日本代表が、まさかのベスト8敗退。5試合で実に8失点。非難の声は、鈴木彩艶選手に集まりました。
「不甲斐ない部分があったので、自分のミスから失点してしまうこともありましたし、いつも通り平常心を持ってプレーしていましたけど。失点を減らせなかった。代表でプレーする重みを改めて感じました」
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■「壁は友達」セーブ力を磨く■「壁は友達」セーブ力を磨く
その半年後、イタリアに移籍。開幕戦からスタメンに定着。ゴールキーパー大国で今、進化を遂げています。
パルマと言えば、これまで数々の名選手が在籍。日本からは中田英寿さんが10番を付けて活躍しました。
そして、なんと言っても世界最高と言われたゴールキーパー、ブッフォン氏を生み出したクラブです。そんな名門には驚きの練習方法があったといいます。
「イタリアで、GKコーチに言われたのは『壁は友達だ』」
「壁は友達」とは…。その答えが練習場にありました。
「壁でいくらでも練習ができる。細かいキャッチングも壁で練習することがある。いろんな学びがあります」
「(Q.日本ではボールが友達)(イタリアは)壁が友達」
人気サッカー漫画『キャプテン翼』の名セリフである「ボールは友達」。日本ではその言葉が浸透していますが、イタリアでは「壁が友達」だったと言うんです。
パルマのゴールキーパーコーチに壁を使う理由を聞きました。
「壁は、反応速度や反応時間をトレーニングするのに非常に有効的です」
壁の反射を利用して、予測不能なタイミングで練習。セーブ力を磨いていました。
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■「言葉の壁」とも向き合う■「言葉の壁」とも向き合う
さらに鈴木彩艶選手は、別の「壁」とも向き合っています。それは「言葉の壁」です。
「試合の中だけじゃなく、細かい話をする時に話せるのが一番。語学は大事かなと思います」
海外挑戦2年目。日本語しか話せない状態で海を渡りました。
鈴木彩艶選手は、今でも週に3回ずつ英語とイタリア語のレッスンを行っています。
「プレー中の言葉だと、とっさに出さないといけない。たまに詰まる時があります。勉強し続けるしかないので、やることがいっぱいある」
「(Q.忙しいですね)幸せですよ!楽しくやらせてもらってます」
「彼は素晴らしい人間性を持ち、明るくて謙虚で学ぶことに貪欲です。大きな可能性を秘めています。輝く将来が待っているでしょう」
まだまだ慣れない環境ですが、チームに溶け込んでいます。
そして先月、クラブ月間MVPに選出。鈴木彩艶選手は着実にイタリアで結果を出しています。
「自分の目標は、小さい時から世界一になる。掲げてきた目標なので、W杯優勝する。ゴールキーパーとして世界一になるっていうのは、今も変わらず目指してやっています」
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■内田篤人「将来が楽しみ」■内田篤人「将来が楽しみ」
「ゴールキーパーというポジションは、後ろからチームメートに指示を出すので、言葉がしゃべれないと始まらないです。海外で活躍するのは非常に難しい。イタリアでプレーしていた吉田麻也選手も言っていましたが、イタリアで、アジア人がゴールキーパーでスタメンをとるのは並大抵なことではないです」
「内田さんから見て、鈴木彩艶選手のすごさは?」
「スーパーセーブに注目いきますが、足元が非常に得意。バックパスを蹴り返すんじゃなくてチームメートにつないだり、彼を起点に攻撃が展開されることが多いです」
「内田さんは鈴木彩艶選手にコーチとして指導していましたが、性格とかはどうですか?」
「非常に真面目で、彼がゴールキーパーに入るとトレーニングの質がぐっと上がります。彼の将来が楽しみです」
(「報道ステーション」2025年1月29日放送分より)