スポーツ

報道ステーション

2025年7月7日 07:21

出産×競技の両立へ 女性アスリートの環境と意識に変化 産前・産後トレーニングの重要性とは

出産×競技の両立へ 女性アスリートの環境と意識に変化 産前・産後トレーニングの重要性とは
広告
3

オリンピック出場選手の男女比率を見ると、1984年のロサンゼルスオリンピックは男性77%、女性は23%です。2028年のロスオリンピックは男性49.5%、女性50.5%と比率が大きく変わっています。この40年間で男女平等が進み、女性を取り巻く環境もだいぶ変わってきました。

そこで今回は「出産とスポーツ」をお伝えします。女性にとって出産は大きな出来事です。妊娠、出産そのまま引退というのが今までのケースでしたが、だいぶその環境が変わってきて、選手の意識も変わってきています。

出産と競技の両立が進む世界 日本は?

去年のパリオリンピック。陸上1500メートルで先頭集団を走るアメリカ人選手は、なんと産後から1年半。さらにフェンシング女子サーブルに出場していたエジプト人選手は、なんと妊娠7カ月。

パラリンピックでも、妊娠7カ月の選手がアーチェリーで団体金メダルを獲得しました。

世界では、出産と競技の両立が進んでいます。しかし、日本では、まだまだ勇気のいる決断だといいます。

11年前に出産し、復帰後には100メートルハードルでオリンピック出場を果たした、寺田明日香選手(35)は次のように話しました。

寺田明日香
寺田明日香
寺田選手
「当たり前が当たり前じゃない。それが今の日本と海外の違いかなと思っています。海外は子どもが生まれて復帰するのが当たり前なんです。『いつ復帰するの?』と、復帰ありきな感じがします。日本では小さい子どもがいる中で、子どもを置いて遠征や合宿とか、『家を離れることについてどう思うんだ?』と、『子どもを置いて自分の競技を優先するほど、その競技は大事なのか?』と」
松岡修造さん
「『子どもとスポーツ、どっちをとる?』と言われるような気がしました」
寺田選手
「比べるものなのかなってまず思ったんです」
海外との差がよく表れているのが「トレーニング」
海外との差がよく表れているのが「トレーニング」

トップアスリートの拠点、ハイパフォーマンススポーツセンターによると、海外では出産後に復帰をするアスリートが日本よりも格段に多いといいます。この差が、よく表れているのが「トレーニング」でした。

寺田選手
「海外では復帰プログラムが組まれている。産前・産後で大体8週間くらいかけて安全にアスリートに戻っていく。そういう復帰プログラムも生まれるし、研究機関もできるし、トレーナーも育つ。選手も『トレーニングしていたら復帰できる』という安心感も生まれる。そこは本当に違うなと思いました」
広告

産前・産後トレーニング キーワードは「骨盤底筋」

産前・産後トレーニング
産前・産後トレーニング

海外では当たり前になっているという、産前・産後のトレーニング。その重要性を感じたというのが、女子サッカーの岩清水梓選手(38)。なでしこジャパン不動のセンターバックとして、世界一に貢献しました。

岩清水選手は、5年前に出産。産前・産後トレーニングを経て、1年9カ月後にリーグ戦復帰を果たしました。

岩清水梓
岩清水梓
岩清水選手
「(妊娠すると)根本的に体が変わる。ゼロスタートというよりかはマイナススタート。尿って自分で止められるじゃないですか。止められなくなるんですよ、筋力が入らなくて」
松岡さん
「そこまで…」
岩清水選手
「骨盤底筋っていう地味な筋肉がある。それって出産をしなかったら、気にしていない筋肉なんですよ。骨盤底筋があるから腹筋もできる」
骨盤底筋
骨盤底筋

競技復帰へ向けた産前・産後トレーニングにおいて重要なキーワードとなるのが「骨盤底筋」。

骨盤底筋とは、骨盤の底にある筋肉の総称。妊娠すると、胎児の重みで緩みが生じます。

より強化するトレーニングが重要
より強化するトレーニングが重要

一般の女性も、産後にベルトなどを使って骨盤をケアしますが、アスリートとなると、それだけでは足りず、産前から骨盤底筋の緩みを予防し、産後には回復させ、より強化するトレーニングが重要なんです。

近年、日本でも、こうしたトレーニングに取り組む環境が少しづつ増えてきています。

妊娠8カ月のアスリート
妊娠8カ月のアスリート

こちら都内のジム。妊娠8カ月のアスリートです。

「足開いた時に骨盤が倒れないようにコントロールしていきましょう」
楠田悦子
楠田悦子

一方、こちらは産後5カ月のアスリート。骨盤底筋のトレーニングに手応えを感じているといいます。

トライアスロン 楠田悦子選手
「『してはいけないこと』『していいこと』が分かるので、安心して妊娠中も動けた。正しい時期に正しいことをすると、競技復帰はできるんだと思います」
広告

出産と競技…日本でも当たり前に両立できる時代へ

さらにトップアスリートへの支援も進んできています。

選手に合ったオリジナルのプログラムを作成
選手に合ったオリジナルのプログラムを作成

ハイパフォーマンススポーツセンターでは、トレーナー・理学療法士・婦人科・栄養士などがチームを組み、その選手に合ったオリジナルのプログラムを作成しています。

そんななかで先月、日本でもこんな選手が…。

レスリング明治杯で3位に輝いたのは、東京オリンピック金メダリストの、志土地真優選手(28)。なんと、産後7カ月。ハイパフォーマンススポーツセンターで産前・産後プログラムを受けていた一人です。

志土地真優
志土地真優
志土地選手
「おなかにいる時からずっと復帰に向けてトレーニングも進んでいましたし、子どもを産んで金メダルというのを目指していたので。それをかなえたい気持ちで今後も頑張りたいと思います」

出産と競技。日本でも当たり前に両立できる時代が近づいています。

松岡さん
「今後、出産後に競技を続けたい女性アスリートがどんどん増えてくる。そういう選手に対してのアドバイス、思いは?」
出産後に競技を続けたい女性アスリートへ
出産後に競技を続けたい女性アスリートへ
岩清水選手
「諦めたくない人は諦めなくていい。競技を続けたい気持ちの火を消さない世の中、スポーツ界になったらうれしい」

出産後の競技両立「どれだけ大変なのか実感した」

出産後の競技両立ついて語る
出産後の競技両立ついて語る
徳永有美キャスター
「産後、競技に戻るということは、実はアスリートだけに限らず、働く女性で出産を経て戻りたいと思っている。その人たちみんなの共通の課題のような気がします。だからこそ彼女たちが輝くということが、やっぱり社会にとってもアスリート界にとってもいいことだなと思います」
松岡さん
「挑み続けるということだと思います。ただ、話を聞いていて、やっぱり産んだ後に競技を両立するのがどれだけ大変なのか実感しました。ただ、日本でも産んだ後にスポーツができるんだというのが少しずつ浸透してきている。できるという積み重ねが多くなることによって、寺田さんの言う当たり前というものにつながっていく気がします」
大越健介キャスター
「インタビューの中で、スポーツ界、世の中という言葉がありました。アスリートたちがそこを切り開いているんだから、スポーツ界にも広まるように、私たちも理解するように応援することが大事でしょうね」
松岡さん
「印象的だったのが、何が一番メンタル変わったかというと、何も怖いものがなくなった。これは大きい」

(「報道ステーション」2025年7月4日放送分より)

広告