高校野球、夏の甲子園出場校が続々と決まっています。27日は、春夏連覇を狙う横浜(神奈川)も3年ぶり21回目の出場を決めました。横浜高校といえば、春夏連覇を達成した1998年にも甲子園で歴史に残る大逆転劇がありました。明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督(69)と松坂大輔さんがその激闘の裏側を語ってくれました。
「ええか、横浜はこのままでは終わらんぞ」
明徳義塾の馬淵監督は、1992年の夏の甲子園で星稜(石川)の松井秀喜さんを5打席連続敬遠したことでも知られる高校野球界の名将です。
馬淵監督と松坂さんが会うのはあの夏の対戦以来27年ぶり。球史に残る大逆転劇を2人が振り返ります。
まず、この準決勝は横浜がPL学園と延長17回を戦った翌日だったということ。
「延長17回の激闘から24時間が経っていない甲子園。再び横浜高校が戻ってきました。背番号1の松坂、きょうはレフト」
前日250球を投げた右腕にはテーピング。マウンドにいたのは2年生の袴塚健次投手でした。
「松坂投手を目標にやってきて、『ここで対戦できるぞ、よし!』と思ってたところを登板しないというので、ガクッときた」
「打って勝ってきている明徳打線に、正直『あいつら大丈夫かな』というのは、僕は思ってました」
松坂さんの不安は的中します。
「レフトへ大きなあたりだ!浜風が押していきますが、ポールをまいた!松坂の視線の先!」
「打球は高々とまた松坂の上を超えていく!」
8回表を終わり6対0。「勝ちを意識した」という馬淵監督。実は、この時に選手にかけた一言がこの試合を大きく動かすきっかけになったといいます。
「一つだけ、僕は後悔していることがある。6対0で勝っていた時に『ええか、横浜はこのままでは終わらんぞ』と言った」
「ええか、横浜はこのままでは終わらんぞ」この言葉のどこに後悔があったのか。監督が声をかけた直後の8回ウラ…。
「守りにミスが出た明徳」
「うまいバッティングは1・2塁間!ノーアウト1・2塁」
監督の後悔、それは…。
「後から選手に聞いたら“すごく気になった”って。“横浜はやっぱり違うわ”と思いながらやっていたって」
「難しいですね」
「僕は引き締める意味で言ったんですよ」
「勝っているけど油断するなと」
馬淵監督が見た松坂投手の神髄と横浜の強さ
リードするプレッシャー。それを横浜は見逃しませんでした。
「はじき返した!横浜高校、反撃の1点!」
さらに点差は縮まり、流れは一気に横浜へ。このタイミングで…。
「松坂が三度四度キャッチボール。あっ!テーピングを外します!」
「松坂をマウンドに送り出します。甲子園球場が大きな拍手で揺れます」
「横浜高校選手の交代をお知らせいたします。レフトの松坂くんがピッチャー。4番ピッチャー松坂くん」
甲子園に松坂コールが巻き起こります。そんななか、1人目を空振り三振。2人目の4番・寺本四郎選手に対しては、明らかなボール球が続きフォアボール。しかし、この時に馬淵監督は横浜の強さを感じていました。
「怪物と言われる松坂投手が、寺本とあえて勝負しない、みたいな雰囲気だった。さすがやなと思いました」
「勝負を楽しみたいというのはありましたけど、明徳の中で無理に勝負してはいけないバッターだった。それは最初から頭の中にありました」
「そこまで勝つことに徹底しているのがすごい。さすが横浜ですよ」
1%でも勝つ確率を上げるため、あえて勝負を避けるという選択。馬淵監督が見た松坂投手の神髄と横浜の強さでした。すると…。
「142キロでつまらせました。ダブルプレーをとった松坂」
「ダブルプレーでうまく野手が動いて終わることができた」
「最高の終わり方ですよね」
最高の終わり方をした9回表。エースが流れを持ってきたそのウラ、横浜はノーアウト満塁とすると…。
「たたきつけた!3塁ランナー佐藤が帰る!2人目のランナーも帰ってきた!同点!」
そして…。
「2球目、柴の打球は詰まったセカンド後方!落ちた!横浜の執念!6点差をひっくり返しました横浜。7対6、決勝進出!激闘の歴史にまた新たな1ページ」
「真のチャンピオンでしたよ、横浜は。負けて悔しかったけども。チーム力ですよ。流れだけでは、6点差は終盤にひっくり返せない。本当の実力がないと」
「最後の2イニングは複雑なものがいろいろ絡み合っていたんだな。今、改めて思いました」
「でも、明徳義塾に松坂大輔がいたら、勝っていたかもしれない。怪物ですから、平成のね」
27年ぶりの春夏連覇を目指す横浜
「私はこの試合、息子たちを連れて甲子園で見ていたんですよ。松坂投手がテーピングを外して投げ始める時、それから9回のマウンドに上がる時にどよめきがすごくて。球場全体が松坂投手のみならず、馬淵監督が言う横浜の強さみたいなものを信じている雰囲気がありました。恐ろしさも感じました」
そんな横浜は27年ぶりの春夏連覇を今年目指します。
(「報道ステーション」2025年7月28日放送分より)