14日まで行われていたWBSC U-18野球ワールドカップ。日本は準優勝と健闘しました。U-18では、9イニングではなくて7イニング制で実施されていました。実は、日本の高校野球でも7イニング制への検討が始まっています。歴史を変える大きな改革。一体、なぜなのでしょうか?
負担軽減の一方「投球強度が上がる」リスクも…
まず取材したのは、日本高等学校野球連盟=高野連の井本亘事務局長です。
「7イニング制を導入、なぜ検討されたのでしょうか」
井本事務局長
「毎年ご存じのように特に夏暑くなっていくなかで、『高校生に野球を続けてもらうためには、どうすればいいのか』が話の発端」
ヒロドキャスター
「メリットはどういうところだと思いますか」
井本事務局長
「去年の時点で、高校野球で7イニング制をやるメリットとデメリットを洗い出してみて、選手の負担軽減が大きい。ある程度の期間で試合を複数回こなすという中では有効」
これまで高野連では、時代に合わせた取り組みを実施。暑さのピークを避ける2部制や、選手の負担軽減のための球数制限などを行ってきました。
そして新たに検討しているのが“7イニング制”です。
選手の負担を減らすことが大きな目的ですが、専門家はどう見ているのでしょうか?
スポーツの暑さ対策について研究している早稲田大学スポーツ科学学術院・細川由梨准教授。野球の競技性が損なわれないことを前提に、メリットがあるといいます。
「より条件の良い環境を、アマチュアのスポーツだからこそ大人が子どもたちに準備をしてあげて、そこで良いパフォーマンスをするというところが、やはり目指すべき姿」
野球を中心としたアスリートの診療を行っているベースボール&スポーツクリニック・馬見塚尚孝医師。イニングが減り、投手の球数が減るなどメリットがある一方、デメリットもあるといいます。
一方の高野連は、別の観点からデメリットがあるという認識を持っています。
「9イニングが7イニングに減るので、2イニング分、打者でいうと6打席機会が減少します。機会が減る分どうしていったらいいか、7イニング制に移行ということになれば、考えていかないといけない」
高野連にとって、選手の出場機会を増やすことは一つの課題。来年春の公式戦からDH制を導入するなど対応を進めてきました。
アメリカ・カナダも韓国など7イニング制
メリット、デメリットそれぞれがあるなか、この人はどう考えているのでしょうか?
1998年・夏の甲子園。PL学園戦で延長17回250球を投げ抜いた松坂大輔さんは、さまざまな思いを巡らせます。
「普段アメリカで生活しているんですけど、息子が高校野球をやっている。アメリカは以前から7イニング制で試合している。7イニングだったら7イニングで、最終回にドラマがあるんですよ」
実はアメリカやカナダに加え、韓国や台湾といったアジアでも、高校野球は7イニング制がスタンダードになっています。
今月行われたU―18W杯では2回目の実施となりました。大会を主催するWBSCのシュミット専務理事は、7イニング制を取り入れた意外な理由を話しました。
「7イニング制では1球目から、全力で入り込む必要がある。だから、試合の考え方も少し変わるのです」
高校野球での7イニング制。日本野球の歴史を変える分岐点になるかもしれません。
「100年以上の歴史の中で、何かを大きく変える。継続試合、タイブレーク、1週間500球(球数制限)とは根本的に違うと思いますから、慎重にやっていく必要があります」
「7イニングならではの新しい戦術を」
「慎重という表現がありましたけども、本当にそれだけそれぞれいろんな方向の意見があるんだなというのも感じました。今年の夏、現場の声を取材していますと、7イニングだと少し物足りないとか、できるだけ長いイニングを投げたいという選手の声もありました」
「一方で部員数が20人ほどの少ないチームの監督は、7イニングだと選手全体の負担が減るので助かる面もあるという声がありました」
「今のお話、分かりますよね。例えば、複数の3〜4人甲子園で優勝するピッチャーはなかなかいけないけれども、7回だったら場合によっては2人とか3人とかでしのげるかもしれないから。戦い自体が面白くなるというメリットもあるかもしれない」
「松坂さんも野球が変わるという表現がありましたけども、野球7イニングならではの新しい戦術を考えていくのも面白いという声もありました。今年の国民スポーツ大会は7イニング制が導入されますので、どんな検証結果になるのでしょうか」
(「報道ステーション」2025年9月16日放送分より)