日本シリーズ進出を目指す阪神タイガース。その阪神で活躍しながら2年前、28歳の若さで亡くなった横田慎太郎さん。現役中に脳腫瘍を患った横田さんが引退試合で見せた「奇跡のバックホーム」は今もずっと語り継がれています。その遺志を胸に、今も現役にこだわり続ける選手がいました。
元猛虎戦士“現役”を続ける原動力
阪神タイガース、2年ぶりのリーグ優勝に湧いた9月。黙々とバットを振り続ける、かつての猛虎戦士がいました。
北條史也選手(31)。おととし阪神を退団し、現在は社会人野球・三菱重工Westでプレーを続けています。
今年の都市対抗野球では、2年連続でホームランを放つなど新たなステージでも奮闘しています。なぜプロ野球を離れた今でも現役を続けているのでしょうか?
「ヨコ」とは横田慎太郎さん。北條選手の1歳下、プロで初めてできた後輩でした。2012年、光星学院高校からドラフト2位でプロ入りした北條選手。そして翌年、同じく高卒で鹿児島実業からドラフト2位で入団したのが横田さん。2人はグラウンドでも寮でも、多くの時間を共に過ごしました。
2人は2016年に共に開幕1軍入り。横田さんは開幕スタメンを勝ち取ると、抜群の身体能力と懸命なプレーで球場を沸かせます。その後、北條選手もショートのレギュラーになり、この2人が阪神の未来を担うと期待されていました。
しかし翌年、横田さんの目に異変が起きます。
18時間にわたる大手術、闘病生活は半年間に及びました。懸命なリハビリを経て、育成選手として復帰したものの、目の状態は元には戻らず、2019年に引退を決断します。
プロでなくても「ヨコの分まで」
迎えた2軍での引退試合。視力が回復していない状態で守備につきます。その直後でした。センター前の打球を見事にキャッチし、ノーバウンドで本塁に返球してアウトをとります。
試合後、横田さんは「本当に神様は見てると思いました」と涙ながらに語りました。
このプレーは「奇跡のバックホーム」と呼ばれ、当時、報道ステーションの特集をきっかけに書籍化。さらに映画化もされ、来月公開されます。
引退後、横田さんの病状は悪化の一途をたどります。脊髄に腫瘍が転移し、脳腫瘍も再発しました。横田さんは治療が困難となり、ホスピスに入りました。
そのおよそ2カ月後、横田さんはこの世を去りました。
横田さんが亡くなった同じ年、北條選手は度重なる脱臼の影響もあり、阪神を戦力外に。満身創痍、プロでなくてもバットを振り続けています。
「(Q.横田さんが北條さんの野球人生を?)長くさせられてる感じがします」
新たな目標「社会人野球で全国優勝」
「このインタビューが終わった後に北條選手が、グラウンドのセンターを見つめて、ぼそっと『横田がいる気がするんですよね』と話していて。それだけ近い存在であり、原動力なんだなと思いました」
「あるんですね。やっぱり、亡くなっても心のなかで生き続けるというのは、こういうことのことも言うんでしょうね」
「そんな北條選手は新たな目標ができたとお話ししていて、それが社会人野球で全国優勝すること。あとは社会人野球をもっと知ってもらいたいと話していて、応援も含めて本当に魅力的な社会人野球をたくさん頑張って、もっともっと注目を浴びるようにこれからも頑張りますと語ってくれました」
(「報道ステーション」2025年10月16日放送分より)