11月2日(日本時間)にトロントで行われたワールドシリーズ第7戦、ロサンゼルス・ドジャースがブルージェイズを破り、ニューヨーク・ヤンキース(1998年〜2000年)以来、今世紀初めてのワールドシリーズ連覇を達成した。
ワールドシリーズ制覇を決めた第7戦、先発の大谷翔平選手(31)が3ランホームランを浴び3回途中でマウンドを降り、1点差を追いかけるドジャースは9回表の攻撃で、再三守備でチームを助けてきたミゲル・ロハス選手(36)が起死回生となる同点ホームランを放つ。
土壇場で追いついたドジャースだったが、9回裏に一打サヨナラのピンチを迎えるとベンチは前日に先発した山本由伸投手(27)にマウンドを託す。
山本投手は、デッドボールを与え満塁のピンチを背負ったが、後続を抑え、試合は延長戦に突入する。
11回表にドジャースは、山本投手とバッテリーを組むウィル・スミス選手(30)がソロホームランを放ち、この試合はじめてリードを奪う。
11回裏、ブルージェイズ打線を抑えれば、優勝が決まるドジャースのマウンドには、この日3イニング目に入った山本投手の姿があった。
好調ブルージェイズ打線をけん引するゲレーロJr.選手のツーベースヒットをきっかけに1アウト1塁・3塁のピンチを背負うが、ドジャースの内野陣がダブルプレーで試合を締め、山本投手を中心に歓喜の輪が広がった。
大谷選手、山本投手は2年連続2回目、今シーズンから加入した佐々木朗希投手(24)はメジャー初制覇となった。
一方、32年ぶりのワールドシリーズ制覇に届かなかったブルージェイズ。
9回、ロハス選手に同点ホームランを浴びたジェフ・ホフマン投手(32)は「自分がここにいる全員からワールドシリーズのチャンピオンリングを奪ってしまった気分だ。あの場面はもっと確実に投げ切って、ああいう事態を起こしてはいけなかった」と1球を悔やんだ。
選手がワールドシリーズ制覇に置き換えて表現するくらい大切な意味をもつチャンピオンリング。
そのリングは頂点に登りつめたチームの選手らにしか手にすることができない。
チャンピオンリングの歴史やデザイン、リングを手にした日本人選手を紹介!
記念すべき第一回WSはチャンピオンリングではなく…
ワールドシリーズを制覇した選手や監督・コーチ、球団職員などの関係者に対して、その記念としてチームからチャンピオンリングが贈られることが恒例となっているが、実はワールドシリーズが始まった頃は、そのようなリングはなかったという。
1903年に第一回ワールドシリーズに行われ、優勝したボストン・アメリカンズ(現在のボストン・レッドソックス)対して、ボストン・グローブ紙から腕時計ホルダーが選手達に贈られたのが始まりだといわれている。
その後、当時運営を行っていたナショナル・コミッションがダイヤモンドを埋め込んだ「ラペルピン」を製作し、選手が身に着けられる実用的な記念品となった。
最初のチャンピオンリングは、1923年に前年WS制覇を果たしたニューヨーク・ジャイアンツ(現在のサンフランシスコ・ジャイアンツ)に贈られた。
14金のリングには、野球のダイヤモンドの中央にダイヤモンドが一粒、その両側に交差したバット、ボール、グローブなどがあしらわられ、「Giants World Champions 1922」の文字が横に大きく刻まれている。
この中央にダイヤモンドが入ったデザインが現在のチャンピオンリングの基礎となるが、その後のチャンピオンチームの中には、リングではなく懐中時計などを選ぶチームもいた。
1926年にセントルイス・カージナルスがチャンピオンリングのデザインに初めてチームのシンボルを取り入れ、1931年にカージナルスが、再びチャンピオンになった以降はチャンピオンチームがリングを受け取るのが通例となった。
その後、チームのイニシャルをリングの中心に据えるなど、デザインが改良されていた。
前回のドジャースのチャンピオンリングは…
近年のチャンピオンリングのデザインとして去年ワールドチャンピオンに輝いたドジャースのチャンピオンリングを紹介する。
ロサンゼルスの象徴であるヤシの木を表現
2 ICONIC DODGER STADIUM SIGN
ドジャースタジアムの象徴的なサイン
3 8 DIAMONDS SYMBOLIZE 8 WORLD CHAMPIONSHIPS
8つのダイヤモンドは、8回のワールドシリーズ制覇を表現
4 SUNBURST SHAPE THAT REPRESENTS THE SUNNY CLIMATE OF LA
ロサンゼルスの太陽のような気候を表すサンバースト(放射状)デザイン
5 PAYS HOMAGE TO THE HOME OF THE DODGERS
ドジャースの本拠地であるロサンゼルスへの敬意を表すデザイン
6 A PIECE FROM THE BASES USED IN THE WORLD SERIES
ワールドシリーズで実際に使用されたベースの一部を埋め込み
7 COMMISSIONER’S TROPHY CELEBRATING THE 2024 WORLD SERIES
2024年ワールドシリーズ優勝を祝うトロフィー
8 34 SAPPHIRES HONOR THE LATE DODGERS PITCHER, FERNANDO VALENZUELA
ドジャースで活躍した故フェルナンド・バレンズエラ氏を称える34個のサファイア
9 POSTSEASON LOGOS AND FINAL SCORE
ポストシーズンのロゴと最終スコア
10 PLAYER’S UNIQUE SIGNATURE
各選手のサイン
11 5 DIAMONDS REPRESENT THE 5 RUNS THE DODGERS OVERCAME TO WIN THE WORLD SERIES
5つのダイヤは、ドジャースがワールドシリーズ優勝のために逆転した5得点を表現
12 YEAR DATES 1883 AND 2024 PAYING TRIBUTE TO 142 SEASONS
1883年と2024年の刻印は、142シーズンの歴史への敬意
13 ICONIC DODGER STADIUM
象徴的なドジャースタジアム
チャンピオンリングの様々なモチーフは、西海岸に本拠地を置く歴史のある名門チームを象徴するリングと言えるだろう。
またチャンピオンリングを保管するケースは、フタを開けると上部内側にモニターが組み込まれていて2024年のハイライト映像が流れる仕組みになっている。
世界一の称号を手にした日本人選手
この世界一の称号は、日本人選手第1号の伊良部秀樹氏(1998年・ヤンキース)を皮切りにこれまでに13人いる。
中でも、ワールドシリーズMVPに輝いた松井秀喜氏(2009年・ヤンキース)や日本人選手初の胴上げ投手となった上原浩治氏(2013年・レッドソックス)が皆さんの記憶に残っているのではないだろうか。
また、レギュラーシーズン途中で他のチームへ移籍し、ワールドシリーズ制覇時に在籍していなくてもチャンピオンリングを贈られることがあり、高津臣吾氏(2005年)や青木宣親氏(2017年)が手にしている。
伊良部秀樹(2) ヤンキース(1998年、1999年) ※WS出場なし
井口資仁(2) ホワイトソックス(2005年)、フィリーズ(2008年)
田口壮(2) カージナルス(2006年)、フィリーズ(2008年)
高津臣吾(1) ホワイトソックス(2005年) ※シーズン途中で移籍
松坂大輔(1) レッドソックス(2007年) ※日本人選手初のWS勝利投手
岡島秀樹(1) レッドソックス(2007年)
松井秀喜(1) ヤンキース(2009年) ※日本人選手初のWSMVP
上原浩治(1) レッドソックス(2013年) ※日本人選手初のWS胴上げ投手
田澤純一(1) レッドソックス(2013年)
川崎宗則(1) カブス(2016年) ※WS出場なし
青木宣親(1) アストロズ(2017年) ※シーズン途中で移籍
大谷翔平(1) ドジャース(2024年)
山本由伸(1) ドジャース(2024年)
メジャーリーガーではないあの人も?
ちなみにナ・リーグのチャンピオンリングにはなるが、メジャーでのプレー経験がなくチャンピオンリングを贈られた人物がいるのをご存知だろうか。
それが、ヤクルト一筋で名捕手として活躍した古田敦也氏だ。
古田氏は、2023年から2年連続でダイヤモンドバックスの春季キャンプで臨時コーチを務めた。
ダイヤモンドバックスのロブロ監督は古田さんとヤクルトで共にプレーした経験があり、その縁からロブロ監督が古田氏に臨時コーチを依頼した。
臨時コーチを終えた古田氏が「もしダイヤモンドバックスが優勝したら、チャンピオンリングを日本に贈ってください」とロブロ監督と約束をしていた。
そして、2023年にロブロ監督の指揮のもとダイヤモンドバックスがフィリーズを破り、ナ・リーグ王者に輝き、古田氏にはダイヤモンドが72個も入り、「FURUTA」と刻印されたチャンピオンリングが贈られた。
大谷&山本投手は2つめのチャンピオンリング獲得に
大谷選手、山本投手は去年に続き、日本人選手の最多タイ記録に並ぶ2つめ、今シーズンからドジャースに加入した佐々木投手は、初めてのチャンピオンリング獲得となり、リングの贈呈式は来年行われる。
メジャーの頂点に立ったドジャースの選手らに贈られる世界一の称号にぜひ注目してほしい。
また、11月4日(日本時間)にドジャースタジアムで行われた優勝セレモニーで大谷選手は、「来年次のチャンピオンリングを取りに行く準備はできている」と3つめのリングへ意気込みを語った。
来シーズンは3連覇を目指すドジャースの日本人選手はもちろんだが、悲願のチャンピオンリング獲得を目指すサンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有投手(39)や松井裕樹投手(30)など、多くの日本人選手が世界一の称号を手にすることを願っている。















