スポーツ

グッド!モーニング

2025年12月5日 08:02

ミラノ五輪へ…日本フィギュアをメダルに導く 世界一のコーチ・濱田美栄と新星・千葉百音

ミラノ五輪へ…日本フィギュアをメダルに導く 世界一のコーチ・濱田美栄と新星・千葉百音
広告
3

五輪6大会連続メダルへ 京都発!日本フィギュアの「虎の穴」とは?

ミラノオリンピック開幕まであと77日に迫り、日本のフィギュアスケートは2006年トリノ五輪の荒川静香さん、2010年バンクーバー五輪の浅田真央さん、2014年ソチ五輪、2018年平昌五輪の羽生結弦さんらがけん引し、5大会連続でメダルを獲得してきました。

 6大会連続のメダルを目指す中、日本フィギュアスケート界の鍵を握る存在として注目されているのが、京都府宇治市にある「木下アカデミー 京都アイスアリーナ」です。

国内屈指の練習環境
国内屈指の練習環境

 このリンクは国内屈指の練習環境を誇り、オリンピック選手をはじめ、先日のグランプリシリーズ・カナダ大会を制した千葉百音選手など、次々と有力選手を輩出しています。その成果から、日本フィギュア界の「虎の穴」とも呼ばれている場所です。

札幌の“氷上の妖精”に魅せられた少女が「世界一のコーチ」になるまで

濱田美栄コーチ
濱田美栄コーチ

 ここで指導しているのが、世界一のコーチと評される濱田美栄コーチです。リンクでは、濱田コーチが選手のひとりひとりに的確に声を掛け、氷上で指導にあたっています。

30人以上の生徒を指導
30人以上の生徒を指導

 現在、濱田コーチが指導している選手・生徒は30人以上にのぼり、今シーズンはジュニアを含めて8人の選手をグランプリシリーズに送り込んでいます。

 その実績と指導技術が国際的にも高く評価され、去年、日本人コーチとして初めて国際スケート連盟の「最優秀コーチ賞」を受賞しました。ミラノオリンピックのメダルの鍵を握る存在として、その手腕に期待が高まっています。

 かつて、濱田コーチ自身も選手として活躍し、全日本選手権に出場していました。

 競技を始めたきっかけは、「氷上の妖精」と呼ばれたレジェンド、ジャネット・リンさんの演技に憧れたことだったといいます。1972年の札幌オリンピックで、ジャネット・リンさんはスピンで尻餅をつきながらも笑顔で立ち上がり、銅メダルを獲得しました。その姿は日本中の心をつかみましたが、この有名なシーンのテレビ中継の後ろに写っている青い服の少女こそ、小学生だった濱田コーチだといいます。

 大学時代にはフィギュア強豪国のアメリカに留学し、そこで得た知識と経験を次世代に伝えるため、23歳からコーチ業をスタートしました。以降、国内外の経験を生かしながら、数多くの選手を育て続けています。

広告

「一番の才能は好きでいること」濱田メソッドが生むオールラウンダー

濱田コーチの1日のスケジュール
濱田コーチの1日のスケジュール

 濱田コーチの1日は、休む間もないほど練習でびっしり埋まっています。ジュニアからシニアまで幅広い年齢の生徒を教え、時には5人もの生徒を同時に指導することもあります。

 1人の生徒に指示を出した直後、瞬時に別の生徒へアドバイスする姿も見られました。すべての生徒の特長を細かく把握し、瞬時に適切な指導に切り替えられる観察力こそ、濱田コーチのすごさの一つです。

山口輝乃選手(9)
山口輝乃選手(9)

 生徒の山口選手は「熱心に丁寧に教えてくださいます。すごく頼りになる先生。夢はオリンピックで金メダルを獲る事です。」と話し、厚い信頼を寄せています。

トリプルアクセル着氷する金沢選手
トリプルアクセル着氷する金沢選手

 リンクでは、世界選手権銅メダリストの千葉百音選手と、世界ジュニア女王の島田麻央選手が共に練習していて、ノービスを3連覇した13歳の金沢純禾選手は、練習からトリプルアクセルをきれいに着氷しています。

金沢純禾選手(13)
金沢純禾選手(13)

 金沢選手は「濱田先生は本当にすごいです。ジャンプだけじゃなくて、スピン、ステップも教えてくれるので、オールジャンルできるからこそ世界に行ける選手が多い」と語り、指導の幅広さを強調します。

中村俊介選手(20)
中村俊介選手(20)

 中村俊介選手も「自分で直しきれない部分を指導して直してくれる。すごく信頼しています」と話し、技術面での支えの大きさを実感しています。

 濱田コーチは氷の上で「毎日7時間ぐらい」指導していると言い、「それぞれ目標をもってやっているので、なかなか休む時間がないです」と忙しさを打ち明けます。

シーズン中は約1カ月で4万キロ以上移動
シーズン中は約1カ月で4万キロ以上移動

 シーズンに入ると、さらに多忙を極めます。国内大会だけでなく世界各地を飛び回り、1カ月で約4万キロ、地球一周分を移動することもあるといいます。

 「スケートは私の生活そのもの。子供たちがうまくできてくれたらすごく嬉しいし、選手たちは、思いを伝えてくれる分身のような存在」と語り、競技への情熱と選手への深い愛情をのぞかせます。

 遠征先では、選手たちに“手料理”を振る舞うこともあります。

「お母さんのようでした」
「お母さんのようでした」

 「どうですか味は?」と問い掛ける濱田コーチに、千葉選手は「おいしいです。」と笑顔で応じます。「なんでもおいしいって言う」と、師弟の和やかなやり取りも見られました。

 千葉選手は「麻央ちゃんと一緒に3人で過ごしていたときは、濱田先生はお母さんのようでした」と振り返り、リンク外でも寄り添う姿を明かしました。

大切にしているのは「好きだという事」
大切にしているのは「好きだという事」

 濱田コーチにとって、指導の上で何より大切にしているのが、「スケートを好きでいること」だといいます。「好きだったらどんな困難も乗り越えられる。選手もそう。やっぱ好きでないと。一番の才能は何よりも好きなことだと私は思ってます」と話し、競技への「好き」という気持ちこそ最大の才能だと強調します。

広告

仙台出身19歳のニューヒロイン・千葉百音「自分を信じて」ミラノの頂点へ

演技前の儀式
演技前の儀式

 濱田コーチの思いが色濃く表れるのが、演技前の儀式です。リンクサイドで「自分の努力を信じなさいといつも言います」と選手に語り掛け、送り出します。その言葉を胸に氷へ向かう選手たちの中で、今もっともオリンピックに近いとされるのが千葉百音選手です。

 演技前、濱田コーチは千葉選手に「自分を信じて いってらっしゃい」と声を掛けます。

千葉百音選手
千葉百音選手

 千葉選手の最大の武器は、美しく伸びやかなスケーティングです。先日のグランプリシリーズのカナダ大会でも、観客を魅了する滑りを披露し、見事初優勝を飾りました。

 努力が実を結んだ瞬間、濱田コーチは「よかったよ、百音ちゃんらしかった」と声を掛けます。千葉選手は「嬉しさがこみ上げてきちゃって、練習ともに、ご指導くださっている中で、ちゃんと結果で恩返しできてよかったです。」と喜びを語り、師への感謝も口にしました。

2017年取材 当時12歳の千葉選手
2017年取材 当時12歳の千葉選手

 千葉選手は、憧れの先輩である荒川静香さんや羽生結弦さんらを輩出した仙台のリンク出身。「静香さんや結弦くんも五輪で金メダルを獲っているので、私も仙台出身の選手として頑張りたいです」と話し、金メダリストたちに続く決意を示しました。

「もっと上を目指したい」と移籍を決断
「もっと上を目指したい」と移籍を決断

 木下アカデミーへ移籍したのは約2年前です。「ジュニアでも頑張ってはいたのですが、もっと上を目指したいと思うようになって移籍を決断しました」と振り返り、その後は大きな飛躍を遂げ、グランプリファイナル、世界選手権でもメダルを獲得しています。そして、いよいよ、幼い頃から思い描いてきた夢の舞台が現実味を帯びてきました。

 「五輪シーズンとして初めてなので、全て全力で、突き進んでいくしかないと思っています」と千葉選手は力強く語ります。

五輪は「一番思いが強い人が行ける場所」
五輪は「一番思いが強い人が行ける場所」

 濱田コーチも「五輪はうまい人が勝つのではなくて、強い人が勝つ。一番行きたい思いが強い人がいける場所」と話し、技術だけでなく、精神面の強さこそが勝負を分けると説きます。

 日本フィギュアスケートは、ミラノオリンピックで6大会連続のメダル獲得に挑みます。その中には、世界一の称号を得た濱田コーチと、新ヒロイン候補の千葉百音選手を始めとする若い才能たちがいます。濱田コーチの情熱的な指導の下、「スケートを好き」という原点を胸に、選手たちは世界の大舞台へと滑り出そうとしています。

広告