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報道ステーション

2025年12月14日 15:14

ミラノ・コルティナ冬季五輪 共同開催に小都市がなぜ?立候補の思惑 松岡修造取材

ミラノ・コルティナ冬季五輪 共同開催に小都市がなぜ?立候補の思惑 松岡修造取材
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2026年、ミラノ・コルティナと2つの都市の名前が付いた初のオリンピックとなります。近年、オリンピックは在り方について問われています。開催都市の負担が大きすぎるんです。立候補する場所も少なくなってきてしまいました。2つの都市での共同開催は初となりますが、コルティナダンペッツォは5500人のです。ここに新しいオリンピックの形があります。松岡修造さんが取材しました。

小都市がなぜ?立候補の思惑

イタリア北部、世界遺産の山脈に囲まれた自然豊かな街コルティナダンペッツォ。人口およそ5500人。映画「007」や「クリフハンガー」のロケ地になった場所です。

街の中心にある教会の前に大会期間中、聖火がともります。この小さな街はなぜ、オリンピックに手を挙げたのでしょうか?

訪ねたのは市役所。ジァンルーカ・ロレンツィ市長(56)に話を聞くことができました。

ジァンルーカ・ロレンツィ市長
ジァンルーカ・ロレンツィ市長
「オリンピックは観光の起爆剤。30年後も持続可能な観光地にしたい」

観光業がメインの街には深刻な課題がありました。冬はスキーが盛んですが、気候変動でシーズンは年々短くなり、ホテルも打撃を受けていました。

加えて不安定な雇用。物価高騰もあり人口が減少。街は寂しさが漂います。

そんななか、転機になったのが共同開催という新しい形のオリンピックでした。

共同開催という新しい形のオリンピック
共同開催という新しい形のオリンピック
「コルティナダンペッツォだけでオリンピックはできなかった。1956年のオリンピック開催時と現在は全然違う」

実は、1956年にオリンピックを開催。当時は競技数も少なく、施設は今ほど必要ではありませんでした。

「1956年、スピードスケートは湖の氷で行われた。安全基準が厳格な今ならできない。新しい施設を作らないといけない」
4つの場所に分散
4つの場所に分散

今回のオリンピックは4つの場所に分散。イタリア北部にある既存の施設を活用します。そのため、小さな街でも負担を抑えることができるのです。

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若者対象の育成プログラムも

オリンピックをきっかけにお金も集まり、30年先の観光を見据えインフラ整備。もちろん、街を支える人も必要です。

アカデミア コルティナ
アカデミア コルティナ

彼らが向かったのは、この地域の若者が対象の育成プログラム。「テーマは持続可能性、倫理、責任」。オリンピックに関連した助成金を使い、街が始めました。

ローマやミラノなど大都市から専門家を招いています。

ビジネススクール教授 アレッサンドロ・ベッリ氏(右)
ビジネススクール教授 アレッサンドロ・ベッリ氏(右)
ビジネススクール教授
アレッサンドロ・ベッリ氏(55)

「観光業界は洗練され複雑になっている。金融スキル、マネジメント、マーケティング、コミュニケーション。多くの人が勤務するので、人を動かす知識も必要」

多くはオリンピック本番にボランティアとして参加。その後は街の未来を担っていきます。

参加者(21)
「コルティナダンペッツォに住んでいる人はとても少なく、若者はごくわずか。20年もすれば私たちしかいなくなる。この街を愛しているから、若者が定着できる場所にしないといけない」
参加者(30)
「オリンピックはゴールではなくスタート。自分の仕事で街の未来を広げたい」
「オリンピックは信じられないほどのチャンス」
「オリンピックは信じられないほどのチャンス」
ベッリ氏
「(Q.オリンピックは一大イベント)オリンピックは今回のように新しいことをやる理由や動機になる。若者にとって、どこでどう働くか考えるいい機会。今回のようなプロジェクトはコルティナダンペッツォ以外でも再現できる。コルティナダンペッツォのような小さな都市にとっては、オリンピックは信じられないほどのチャンス」
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人口5500人 コルティナダンペッツォ

共同開催という新しい形で生まれるチャンス。他の世界的ビッグイベントもその傾向にあります。

ミラノ・コルティナ組織委員会 広報責任者 アンドレア・モンティ氏
ミラノ・コルティナ組織委員会 広報責任者 アンドレア・モンティ氏

サッカーワールドカップ、来年の北中米大会は3カ国で。2030年も3カ国、ヨーロッパとアフリカ。そんな新しい時代に手を取り合うヒントを教えてくれたのがミラノ・コルティナ組織委員会・広報責任者のアンドレア・モンティ氏(69)です。

「(Q.どんな難しさがあった?大都市ミラノと小さな都市コルティナダンペッツォで)大変なことはなかった。それぞれが知識と専門性を提供する。私たちミラノがコルティナダンペッツォに行って仕切ったりしない。ミラノは国際都市、大都市でイタリアで最も近代的。コルティナダンペッツォはイタリアアルプスの中で伝統的な冬の街。リズムも地域性も伝統も異なる。それでもかみ合って一つの形になった。ミラノ・コルティナ2026の奇跡です」
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生き残る機会「大事なのは調和」

松岡修造氏
松岡修造氏
徳永有美キャスター
「当たり前かもしれませんが、イタリアやヨーロッパの小さな街の過疎化みたいな、日本で起きているようなことが起きているんだなと思いました」
板倉朋希アナウンサー
「そういう意味でいうと、オリンピックが街の生き残りのためのチャンスになるという新しい形が見える気がします」
大越健介キャスター
「コルティナの例は他の場所でも再現できると。今までの大規模な街がやってきた大がかりなオリンピックではない、違うやり方を我々に提示してくれている。そんな気がします」
松岡さん
「そういうオリンピックの時代になってきてるんだと。共同開催について正直、取材をするまであまりにも都市として違いがありすぎる。大きな問題があると思っていた。いろんな人に聞きましたが、大きな問題はなかったというんです。それはなぜかというと、文化や大きさ規模が違ったとしてもお互いの良さを見つけて、それをしっかり尊重して対等にコミュニケーションを取った時に大きな調和が生まれる。共同開催という新しいスポーツの流れが転換期になっていくんだなという印象を受けました」
大越キャスター
「ミラノがコルティナを仕切ったりしないんだという話がありました。若者たちの手作り感がすごく生きていて、オリンピックを見るのが楽しみになってきました」
松岡さん
「ミラノでも、例えば選手村というのは今後、大学生に受け渡していくとか、とにかく未来という言葉が大きく出てきました」
大越キャスター
「未来は我々、年かさの人間が押し付けるものじゃなくて、自分たちで育ててほしい、引き継いでいくものだということがよく分かりました。大事なのはやはり、調和」

(「報道ステーション」2025年12月12日放送分より)

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