全国大会優勝4度。日本代表を数多く輩出し、女子ラグビーの歴史とともに歩んできた伝統ある古豪「日本体育大学ラグビー部女子」。
「学生はやっぱり無限大の力を持っていると思うので。ひたむきでパワフルで」
しかし、近年は女子ラグビーのレベルが上がるとともに、経験豊富な社会人選手やフィジカルに勝る外国人選手が強豪チームに集中。大学生である彼女たちは、その大きな壁に真正面から挑んでいる。
強敵を前にしても、一歩も引かない気迫!無限大の力で狙うのは、女子ラグビーナンバーワンの座。覚悟を決めて戦う「ワイルドな奴ら」である!
厳しい戦いの最前線に立つ「ユニコーンズ」
体育・スポーツ教育の最高学府・日本体育大学で日々練習に励むのが、日本で最も古い大学女子ラグビー部の1つ、名門の日本体育大学ラグビー部女子・ユニコーンズだ。
その歴史は女子がラグビーをすることが想像もできなかった時代、1988年に始まる。
日体大女子の成長期をキャプテンとして支えたOG、現日本ラグビーフットボール協会の浅見敬子副会長に当時の苦労を聞いた。
こうした歴史を積み重ね、今では日本代表選手を数多く輩出。去年の「女子ラグビーワールドカップ」では、登録メンバー32名のうち、10名が日体大女子の現役、またはOGだった。
さらに今年1月8日から徳島で行われた女子セブンズ日本代表合宿では、17名中8名、日体大女子の現役・OGが選ばれた。
セブンズ日本代表の谷山三菜子(2年)もそのひとり。ワールドセブンズシリーズアワード2025で「トライオブザイヤー」を受賞。世界に名をとどろかせた。
「オリンピックに出るという夢があって、それを考えた時に、毎日ラグビーができるグラウンドとジムもありますし、日体大の整った環境の中で、高いレベルでできると思いました」
大学の部活動であるラグビー部。しかし、15人制では「大学のラグビー部」としてではなく、大学生主体のクラブチームとして大会に出場している。なぜなら、女子は、大学だけで戦う大会自体が存在しないからだ。
女子ラグビーでは、18歳以上になると、大学生主体のチームと外国人選手もメンバーに加わる社会人主体のチームが同じカテゴリーで戦うことになる。そのため、日体大女子は今、厳しい戦いの最前線に立ち続けている。
古賀千尋監督
「(Q.チームのウィークポイントとストロングポイントは?)良くも悪くも学生らしいっていうところですかね。勢いがある時はシニア(社会人)もその勢いに圧倒されてしまう部分もあると思う。逆に勢いがつきすぎてコントロールが利かなくなってしまうところもある。経験値の高い選手にはかなわない部分はあるかなと。教えていかなきゃいけないところなんで、難しさを感じてます」
チームスローガン「ALLOut やるか、やるか」
そんな事情を抱えるチームにも、心強い唯一の社会人メンバーがいる。OGの堤ほの花(28)。「ワールドラグビー セブンズシリーズ2026」ドバイ大会で女子セブンズ日本代表、初の銅メダルという快挙を成し遂げたメンバーだ。
「日体大にいて自分自身もここの環境のほうが、まだまだ成長できるなと感じます。あと学生たちの力強さにひかれるのが、自分が今一番残っている大きな理由なのかなと感じています」
チームを率いるのは、4年生の向來桜子。日本代表でも、学生ながらゲームキャプテンを務めるほどのリーダーシップの持ち主だ。
「代表活動中は、たくさんの人に支えられながら自分の持ち味を出せていたと思うので、自分だけの力ではキャプテンになれたわけじゃないと思うんですけど、やっぱり声が大きいですし、しゃべることがすごく得意です」
チームのためには忖度(そんたく)しない。どんな物事でもはっきり伝える。
「みんなをまとめてくれて頼りになるキャプテンです」
「明るくて面白いです」
女子ラグビーの「女王の座」奪還を目指し、掲げたチームスローガンは「All Out(オールアウト) やるか、やるか」。
「「部活をしているのは学生だけで、みんなで過ごす時間は、どのチームよりも多いと思います。All Outはそれをみんなで体現する。出し切って勝つという決意です」
手厚いサポート体制
彼女たちをサポートする体制は手厚い。スポーツや各種分析に長けた日本体育大学ならではの「NASS(日体大アスリートサポートシステム)」。この日は、その職員が血液検査の結果を持ってやってきた。
「鉄分のところが少なかったです。元々足が遅いけど、鉄分の数値を上げたらフィットネスもだいぶ楽になると言われました。自分の体のことがよく分かって、とてもありがたいです」
管理栄養士・公認スポーツ栄養士
渡邊香緒里さん
「同じ専門家だけでなく、他分野の先生たちとも連携しながら、選手により良いサポートができるようにやっているのがNASS」
さらに、数々の実績を持つスポットコーチたちが実践面を支える。ラインアウトやスクラムといったセットピース、接点の攻防など細かなスキルを伝授。
元日本代表で、日本体育大学ラグビー部女子の野澤武史スポットコーチもその1人だ。
「賢い子ばかりなので吸収が早いと思います」
YOKOHAMA TKMと対戦
12月も押し迫った、とある夜。ささやかなクリスマスパーティが行われた。普段厳しい練習に励む彼女たちが、プレゼント交換を楽しんだ。
日体大女子が出場する「関東女子ラグビーフットボール大会」は、7チームによるリーグ戦。その上位2チームが全国大会への出場権を手にする。
今大会は、2勝2敗。残り2戦、どちらかを落とせば、夢への道は途絶えてしまい、4年生は大会終了後、引退となる。
しかし残る相手は、強敵ばかり。次の対戦は、ここまで負けなしの「YOKOHAMA TKM」だ。
「お疲れ様です。関東大会だとあと残り2試合。どっちもボーナス取る勢いで行かないと、自分たちが目標としている全国大会には行けないので」
「このチームでもっと長くラグビーしていたいので、みんなと全力で戦っていきたいなと思います」
迎えた決戦の日。YOKOHAMA TKMは、フィジカルが強みの外国人選手を擁する優勝候補だ。
相手スタンドオフは、日本代表で活躍する日体大女子OGの山本実選手。トイメンは、谷山三菜子選手。試合は2人のスタンドオフによる陣取り合戦に。序盤から両者一歩も譲らない。
次々と強力なタックルを浴びせる日体大女子の選手たち。最後まで気迫あふれるプレーを見せる。
まさにオールアウト。体を張り続けた日体大女子に軍配が上がった。
「バックスもフォワードも守るディフェンスではなく、攻めて攻めて相手のゲインラインを切らせないディフェンスができた。自分たち体が小さくても流れを持って来られるディフェンスができたのかなと思います」
全国大会への道を絶やすことなく迎えた最終戦前日。メンバーに日体大伝統の青紺ジャージが渡される。
「ここまでつないでくれて本当にありがとうございます。強い日体大が戻ってきたことを証明できる良い機会だと思うので、みんなでちゃんと全国につなげたいです。お願いします!」
最終戦…勝てば全国 負ければ引退
年が明け、迎えた「関東女子ラグビー大会」最終戦。
「取り急がずに、みんなでボール継続して。全国大会に行くためにはボーナスポイントも大事ですけど、まず勝つことを優先にラグビーしていきたいと思います」
相手は日本代表キャップホルダーを7名擁する、強力フォワードの「横河武蔵野Artemi−Stars」。勝てば全国、負ければ4年生はこれが最後の試合となる。
先制点を奪われるも、すぐに体制を立て直し、反撃へ。
ラックサイドを突き、じりじりと敵陣に迫ると、そのまま押し込んでトライ!コンバージョンを決めて逆転。
その後、ペナルティゴールも沈めて5点リードで試合を折り返す。
「40分間ね。みんなで絶対勝とう」
しかし、後半、日本代表キャップホルダー7名が出場するアルテミスターズとの経験の差が現れ始める。スクラム、ラインアウトで、劣勢に立つ日体大女子。最後まで諦めず挑むも、スクラムで反則を犯してしまう。
10対19で敗北。4年生の大学ラグビー最後の試合が終わった。
「悔しいけど、後輩に残せたものは大きいと思います。来年もっと強くなってほしいです」
「(Q.あなたにとってラグビーとは?)小さいころから家族を含め、たくさんの人たちに支えてもらっているので、恩返しの場だと思っています。これからもたくさんの人に支えてもらっていると思いながら、自分らしいラグビーをみんなに見せて元気づけられたらいいかなって思います」
女子ラグビーの歴史と共に歩んできた日本体育大学ラグビー部女子。過酷な状況を跳ね返し、覚悟を持って、やると決めたらやる!若さが生み出す無限の可能性を秘めた「ワイルドな奴ら」である!
















