2月14日、侍ジャパンの選手を乗せたバスが宮崎市のひなたサンマリンスタジアムに到着した。
集まったファンの声援を受けながら、「11番」のジャージ姿で姿を現したのは、ダルビッシュ有投手(39)だ。
パドレスでプレーする現役メジャーリーガーが、異例となる“アドバイザー”としてキャンプ全日程で投手陣を見守る。
去年10月に右肘の手術を受けたダルビッシュは、今回の参加に至った経緯について次のように語った。
「井端監督からは去年10月に手術をお伝えしてから何かしらの形で関われないかというお話をいただいており熟考の末、宮崎合宿に参加させていただくことになりました。
選手の皆さんが自信を持って大会に臨めるように、過去の大会から得た経験を選手たちに伝えられたらと思っています。」
侍ジャパンの指揮を執る井端弘和監督も、その存在価値を強調した。
「ダルビッシュ投手のこれまでの経験は、各国の名だたる投手や打者の特徴を知るには、チームにとって大変有意義な時間になると確信しています。
何より代表の投手陣にとっては技術面、精神面において、とても大きな存在になると思います。
私もダルビッシュ投手から学ぶことがたくさんありますし、限られた期間ですが、共に世界一に向けて準備したいと思います。」
10秒の“間”で勝負 ダルビッシュ流ピッチクロック対応
吉見一起投手コーチからピッチクロックへの対応を問われると「難しいかなと思っていたけど、意外と大丈夫でした」と語る。
「セットポジションに入って10秒くらい持つ。残り時間のカウントを見ると打者もカウントを見るので、そのタイミングで投げる」と、打者心理を突く“間”の使い方を明かした。
ブルペンでは、日本ハムの北山亘基投手(26)やソフトバンクの松本裕樹投手(29)の投球を見守り、終了後には即座に意見交換。
特に日本ハムの後輩にあたる北山投手には、カーブの握りやリリースの感覚を伝授した。
「日本人で一番いいピッチャー。もうこれ以上ない方。一語一句逃さず聞きたい。
新しい視点をもらった。」
「しっかりと考えがあってやっているから大丈夫」北山の背中を押す一言
2月15日、2日連続でブルペン入りした北山投手。
ダルビッシュ投手から前日に教わったカーブをブルペンで試し投げし、さらにブルペン後に投球フォームの動作を行いながら、ダルビッシュ投手と長時間話し込む様子が見られた。
「ダルビッシュさんからは『北山くんしっかり考えがあってやっていると思うから、それは大丈夫だと思うよ』みたいなことは言ってもらいました。
(ダルビッシュさんは)ちゃんとやってきたものを出せば、絶対にリターンを返してくれる方。
ちゃんと準備して話すべき人だと思う。そこは意識しています。」
「速いジャイロでいい」ダルビッシュが説くメジャー基準
第2クール初日となった2月17日、グラウンドでは投手陣がダルビッシュ投手を囲んだ。
北山投手がツーシーム(横や下に少しズレながら沈む速い変化球)を投げると「曲げにいこうとしすぎて腕が緩んでいた」とダルビッシュ投手から指摘を受け、より腕を振りながら急激な変化を生むリリースを確認した。
また、「回転効率が良いわけじゃないけど、ツーシームになっているし強度もスピードもある」と評価した。
一方、巨人の大勢投手(26)は自身のスライダーについて「ジャイロ回転になってしまう」とダルビッシュ投手に相談した。
「ジャイロ回転でいいよ。ディアスもスライダーは奥行きで空振りを取っている」
メジャーでリリーフを務め、今季からドジャースでプレーするエドウィン・ディアス投手(31)を、大勢投手と似ているタイプとして引き合いに出して答えた。
「別に大きい変化はいらない。去年、スイーパー(横に大きく滑るように曲がる変化球)はみんな打たれていた。俺も結構打たれた。
一昨年は大丈夫だったけど、バッターは慣れてくるから。速くて(バッターに)近い方が今は意外と良い。」
メジャーでの実体験を踏まえ、「球速帯だけ気を付けて、強いジャイロで」と具体的な助言を送った。
「メジャーリーガーの似たような選手と比較していただいて、ジャイロ回転しているスライダーの選手も多いですし、逆にそれが良かったりもする。『曲がっているから良いっていうわけでもないよ』と言っていただきました」
さらにダルビッシュ投手は、中日の高橋宏斗投手(23)や松本投手と日本とメジャーのストライクゾーンの違いについてもアドバイスした。
「低めは狭いですか?」
「低めもちゃんとストライクを取る。横は日本より狭い。
高めは日本より高い。ジャッジなんてちゃんと高めに構えないと、全部ホームランだから」
「高めのボールは突き刺していく感じですか?」
「高いリリースポイントから来る高めのボールに対しては弱い」
アメリカ代表のキャプテンとして出場するヤンキースのアーロン・ジャッジ選手は身長が約2メートル。
体格の大きな選手が並ぶ各国代表相手には、日本選手相手の感覚で高めに投げても通用しないとアドバイスした。
日米通算208勝の右腕が惜しみなく語る経験と引き出し。
実践的かつ具体的なアドバイスが次々と飛び出した“ダルビッシュ塾”は二度目のWBC連覇を目指す侍ジャパンの投手陣にとって、これ以上ない学びの時間となっている。
※高橋宏斗投手の「高」は、はしごだかです。






