【独自】すし職人“出稼ぎ”希望で養成学校殺到 異業種から転職し米で「給料2倍」も[2023/05/16 13:07]

 円安などの影響で、日本よりも高い給料を求めて海外への出稼ぎを希望する人が急増しています。なかでも、寿司(すし)職人の短期養成学校には申し込みが殺到していました。

■ロサンゼルスの求人“月給7000ドル〜1万ドル” 

 白い調理服を身に着けた老若男女。真剣な表情で学んでいたのは…。

 講師:「脇しめて、指のせて、くるっと返して、脇しめて、そっと指をのせる」

 ここは、寿司職人を育成する専門学校。実は、去年秋から入学希望者が急増しているといいます。

 東京すしアカデミー 後藤幸子校長:「2カ月のコースは、年内すべてキャンセル待ちになっております。来年1月の受け付けをしているところ」「最も多いのは海外で活躍したいという方で、寿司の仕事は海外で非常にニーズも増えていますし。日本人ならではの技術ということで、海外目指す方が多いのが特徴です」

 実際、教室の隅には、世界各国から寄せられた多くの求人票が貼られていました。

 よく見ると、カナダのバンクーバー、そしてオーストラリアのシドニー、さらにポーランドと様々な勤務先が掲載されています。

 例えば、アメリカ・ロサンゼルスで募集している求人には月給7000ドル〜1万ドル、日本円でおよそ95万円から135万円という内容のものもあります。

 こうした海外の店舗で働く場合、日本で働くよりも待遇面では上だといいます。

 後藤校長:「円安で海外のほうがお給料がいいと、海外のほうが稼げるというのが、すごくその考えも浸透してきているので。そういう(海外で働く)ことにチャレンジしたいということ」

 寿司職人となって、円安と低成長の日本を飛び出し、世界で稼ぐ…。そんな野心を秘めた学生が続々と入学してきているのです。

■生徒は10代〜60代 異業種からの転職組も

 一人前になるには、「飯炊き3年、握り8年」と言われてきた寿司職人の世界。

 「技術は見て盗め」とされてきましたが、この専門学校では講師が手取り足取り指導するため、最短2カ月で修行3年目程度の技術を習得できます。

 長澤吟遊さん(24):「イカはすごく苦戦中です。魚と違って、骨がないじゃないですか」

 この日、苦戦しながらも、イカを握った学生。講師に見てもらうと…。

 講師:「いいんじゃないですか、ベリーグッド」

 学生がさばいた魚は、皆でお昼に食べて味を確かめます。

 長澤さん:「めちゃめちゃおいしいです」「すごく皆が仲良くて、先生も1から10まで説明して教えてくれるので、勉強になっている」

 生徒は10代〜60代までと幅広く、異業種からの転職組が多いのが特徴です。

 元建築会社営業 加藤愛理さん(27):「普通に大学に行って、卒業後、建築系の会社の営業をやって、ほぼ5年間働いていました。日本の経済がだんだん悪くなってきたりするなかで、自分で手に職をつけて、とりあえず生きていくだけのお金は稼げるようになりたいなと思い始めて」

■1年以上悩み…SEから転職「人生一度きり」

 米田彰基さん(30):「重いですね、やっぱりシャリが。結構、腕に…」

 この日、初めて酢飯作りに挑戦した米田さん。新卒から7年間、システムエンジニアとして働いていました。

 その仕事柄、実際に使っている相手の顔が見えないことに不満があったため、客の反応を目の前で見ることができる、寿司職人への転職を決意したといいます。

 米田さん:「寿司ですと『晴れの日のもの』というイメージがあると思うので、お祝い事とか比較的楽しい場面で楽しんでいただけるということで、人を楽しい気持ちにさせることができたらなという思いで」

 会社員から学生に戻ることになった米田さん。すぐには決断できず、1年以上悩みました。

 米田さん:「一度きりの人生なので、一度やってみたいなと思ったことはやってみようかなと思って、飛び込んでみたという形です」

 海外で働くなかで、本格的に寿司を学びたくなった人もいました。

 オーストラリア在住10年 藤田晋さん(40):「オーストラリアのほうで10年くらい。日本食を扱っているレストランで働いていた」

 日本では、料理の勉強をしたことがなかった藤田さん。オーストラリアでよく「寿司を握れるか?」と聞かれたといいます。

 藤田さん:「やはり、日本人として日本食の勉強ができたらいいなと。2日目から握りの練習をしてみたりだとか、僕に関しては時間短縮ができたらなというのがあったので、有効だなと思った」

■50歳手前で…渡米を決断「給料2倍に」

 こちらでは、学生の8割が海外での就職を希望しています。実際、異業種から転職して寿司職人となり、海外で活躍している人もいました。

 アメリカ西海岸のシアトルで寿司職人として働く、山田義之さん(49)。医療機器販売の営業マンでしたが、7年前に一念発起。寿司職人養成学校で2カ月間学び、その後、国内の寿司店で経験を積み、去年に渡米しました。

 山田さん:「シンプルに人生経験として、海外で働いてみたいなという思いがあった。50歳になる手前なので、挑戦するならここだなという思いがあった」

 日本での給料はサラリーマンの平均的な水準でしたが…。

 山田さん:「やっぱり給与水準がよく言われるが、高いですよね。ざっくりですけど、日本の倍ぐらいの水準ではあると思う」

 さらにプライベートも充実。メジャーリーグやアメリカンフットボール観戦がもともと好きだった山田さんは…。

 山田さん:「一番直近はヌートバー、カージナルスがシアトルに来た時に行きました。大活躍してホームランも見ましたし、もちろん昨シーズンは大谷選手とか、まあ色々見に行きましたね」

 アメリカの現場で働いていると、日本人職人の需要を実感することは多いといいます。

 山田さん:「よく勤勉というか、日本人にとって普通であっても、海外に出てみればそれが武器になるというのはあると思います。あとはお客さんにとって、日本人がカウンターに立っていること自体も意味があるのかなと思います」

 今後については…。

 山田さん:「よく出稼ぎにという話もありますけど、実際に日本で働いているよりは間違いなく稼げるというのもあるし。色んな国であったり都市であったり、そういう所で色んな経験ができたらいいなと」

(「グッド!モーニング」2023年5月16日放送分より)

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