三井不動産社長インタビュー 10%賃上げ、神宮外苑再開発を語る[2024/01/05 21:28]

三井不動産 植田俊社長

■地震についてイマジネーションをフルに活用して支援の体制を整えたい

Q:能登での地震。北陸に施設も持つ
A:令和6年能登半島地震で多くの方がお亡くなりになりまして、亡くなられた方々、そしてご遺族の方々には心よりお悔やみ申し上げます。多くの方が被災されて未だに苦しんでいらっしゃいますし、まだ収束が見えてないという厳しい状況でありますけれども、謹んでお見舞いを申し上げたいと思っています。私どもの北陸でのビジネスというのは直接的には金沢にビルがあったり、ホテルがあったり。富山の小矢部にアウトレットを持っています。人的な被害はありませんでしたし物的な被害につきましても最小限ということでありますが、我々は北陸という一つ大きな経済圏の中でああいった大きな災害が起きたということ、個人的にも十数年前に能登半島を旅行しまして本当にいい街だということを実感していますので、本当に個社としても全力を挙げて支援をしたいということです。商業施設だとかホテルだとか、さらに言うと東京ドームといったいろいろな場所を持っていますので、こういったものを活用して、もうイマジネーションをフルに活用して支援の体制を整えていきたいというふうに思っています。

Q:募金活動という話も聞いた
A:それも当然のことのように始めています。

■東京ドームの今後の整備はもう少し時間をかけながら考えていきたい

Q:東京ドームは今後の動向が注目されている
A:東京ドームの今後の整備のあり方については、これからもう少し時間をかけながらいろいろなイマジネーションを働かせながら考えていきたいと思っています。東京ドーム、もしくは東京ドームシティ自体まだまだ活用できる状態にありますし。2020年に東京ドームの中のスクリーンなどかなり変えて、昨年のWBCのときも大谷翔平選手がホームランを打っていましたけれども。それ以外でも日本サッカー協会と組んで「blue-ing!(JFAサッカー文化創造拠点)」という施設を作ったり、吉本興業と組んで笑いの劇場を作ったりいろいろなことをまだやっていますので。時間をかけて、やっぱりいろいろな意味での聖地でありますので、そこを絶やさず再整備に生かしていきたいと思います。

Q:野球やサッカー、バスケットボール。スポーツとの繋がりはどういった考えの中で生まれているのか
A:やはりコロナを経ましてリアルでの体験というものですね。これがもう一度再認識されたと思っています。商業施設ではスポーツクライミングの場所を作ったり、3X3のバスケットのコートを作ったり。こういった裾野を広げるといういろいろな活動もしています。あわせてやっぱりリアルの体験ができるスポーツの場。しかもそれをまた見て楽しむという場、この辺りも同時に整備していってスポーツエンターテインメントという領域で我々も力を蓄えて発揮していきたいというふうに思っています。

■神宮外苑の再開発このままバトンタッチできる状態ではない正しい情報を発信しご理解頂きながら進めたい

Q:神宮外苑の再開発について進捗状況は
A:まず、ぜひ皆さんにご理解いただきたいのは象徴的な4列の銀杏並木、これは万全の努力をもって保存いたします。今も1本でも伐採する本数を減らしてどう緑を増やすかということを考えています。現状の緑を増やします。今あるあの風景を残したいと、非常になじみがある風景を残したいという気持ちは私も全く同じですが、例えば神宮球場はまもなく100歳、築100年になります。非常に老朽化が進んでいまして、今後、いろいろと首都直下型地震も含めて考えますとやっぱり心もとない状態です。こういったものをどうやって建て替えていくか、そして去年、日本のスポーツが格段に世界で輝いた年ですけれども、このスポーツを絶やさずに。要は施設の建て替えによる施設の休止期間ができるだけなくなるように場所を入れ替えて段階的にやっていこうと。関係者が集まって15年来やってきました。こういったことの中で現状三つの施設があります。これを二つにすることによって空いたスペースに緑の大きな芝生広場もできて一般の方々も入って親子で憩えるスペースも作ります。やはりこれから強靭化ということも含めて建て替えていく一つの手法として、ぜひご理解をいただきたいと思っています。21世紀に生きる我々のためだけじゃなくて。この状態では22世紀に生きる我々の子供たちにバトンタッチできる状態じゃないっていう事実をぜひ皆さんにご理解をいただきたいと思っています。

Q:当初の予定では去年伐採にとりかかると
A:東京都ともいろいろやり取りをしていますし、少しでもご理解いただいた上で着工したいと思っていまして。そこは拙速にする気は全くございません。もう少し皆さんに正しい情報を発信し、ご理解をいただきながら進めていきたいと思っています。

Q:伐採開始の時期のめどは
A:それは東京都とご相談しながら決めていきたいと思っています。

■金利の動向は注視しているマンションの価格高騰は需給のバランスが崩れているのも一因

Q:2024年に目を移すとまた金利がある世界に戻るとも言われている。マンション価格の高騰の中でどうみているか
A:金利の動向に関しては注視しています。多分、今年のどこかでやはり大きな転換点があるのであろうということは私どもだけではなくて購入される方々含めて皆さん考えていらっしゃることだと思います。ただ、販売の現場で今、何が起きているかというと、特段これに対して対応は起きていません。買われる方々もそこは冷静に対応されているというのは現実だと思います。供給で言いますと、マンションの新築の供給は首都圏で一時は9万戸近く供給されていましたが、昨年は3万戸弱と非常に絞られてきています。そういう意味では需給のバランスが崩れているのもやっぱり事実ですね。そしてもう一つ、やっぱり忘れではいけないのは今株価が上がっていますので。かつて下がっているときは逆資産効果と言われて非常に足を引っ張る要因になっていましたが、今は株価が上がっています。純資産効果があると思うんです。実現すれば不労所得としてマンション購入の一助にはなるということで大きな下支えにはなってきていると思うんですね。そういうことで言えば、私どもはこれからも得意としいてます再開発を含めた大規模開発によって優良な住宅を供給し続けていくという責務を負っていると思っていますので。引き続き注視をしながらそういった活動を進めていきたいなと思っています。

■ベアも含めて10%の賃上げを目指す失われた30年から脱却できるか勝負の年

Q:賃上げについては
A:結論から言いますと処遇改定等を行いまして、ベアも含めて10%アップというのを目指していきたいなと思っています。もちろん物価が上がったというものに対応するところもありますけれども、何よりも会社、(われわれは)建物などのハードを作っている会社と思われがちかもしれませんけれども、街づくりを通じて街に豊かさと潤いという付加価値を提供している会社ですので、人材が財産だということなんです。価値創出の源泉である人材に報いると。その還元をするという趣旨で今年は10%を目指したいと思っていますし、グループ全体でも底上げをしたいというふうに思っておりますし、単年度に終わらず今後も継続的に対応をすることによって、やっぱり成長と分配の好循環というものを少しでも我々も個社として努力していきたいと思います。

Q:このデフレの30年はそこの部分がなかった
A:失われた30年、今年そこから脱却できるか、ピリオドを打てるか勝負の年だと思うんです。本当に今まで賃金とコストを抑えて利益を出すことが正しいと信じてやってきたのが間違っていたということにやっと気づいたということですね。デフレの時代は作った付加価値が正当に評価されずに安いものがいいということで気分も萎縮してイノベーションが起きないような時代でしたけれども、脱却をすればやはりイノベーションが大きい、また新たな付加価値が正当に評価される。そういった時代になっていくんじゃないかなと思っています。

■2024年問題は非常に懸念している建築費の上昇のインパクトが我々にとっては大きい

Q:2024年問題(物流・建設)についての考え
A:これはやっぱり社会的に大きな影響があると思っていまして非常に懸念をしていますが、物流はやっぱりテナントがいかに効率的に物流の中で作業ができるのか、省力化・機械化・共同配送化のようなことを一緒に相談しながらお手伝いをしています。建築費はやっぱり非常に大きなインパクトが我々にはあります。これから計画するもの、先を見越して我々は計画をしておりますけれども、中にはもうとても受け入れられないような見積もりが出てくることもあります。我々も企業努力でそれを飲み込んだり、場合によっては付加価値をやっぱり正当に受け入れていただいてということをしながら今後も計画を進めていきたいと思っていますが、やはり度が超したものについては計画の見直しだとか延期みたいなことも考えざるを得ないことが出てくるかもしれません。

こちらも読まれています