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2025年1月7日 16:45

韓国下回る日本の『稼ぐ力』労働生産性の低さが課題 経済復活のカギは?

2025年1月7日 16:45

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豊かさの目安と言われる1人当たりの名目GDPが、初めて日本が韓国を下回ったことが分かりました。

国民1人当たりの“稼ぐ力”が韓国に抜かれ、貧しくなる日本の経済復活のカギとは、何でしょうか。

■日本の『稼ぐ力』22位で韓国下回る 要因に高齢化も

日本の1人当たり名目GDPが、初めて韓国に抜かれました。
日本は2000年には、1人当たりの名目GDPがOECD加盟38カ国中2位でした。これが、2012年をピークに下がっていき、2023年は22位。韓国は21位で、韓国に抜かれたのは、比較可能な1980年以降で初めてです。
さらに、2024年は台湾にも抜かれる見通しです。

『GDP』とは、国内総生産のことです。

第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生さんによると、
「名目GDPは、国内で生み出されたモノやサービスの『もうけ』の合計」ということです。

1人当たりの名目GDPとは、『もうけ』を総人口で割ったもので、『国民1人当たりの「稼ぐ力」』を表しています。

この1人当たりの名目GDPですが、日本が韓国に抜かれた要因の一つ目が、高齢化です。

日本は、2024年9月の時点で、総人口に占める65歳以上の割合が29.3%。世界最高です。

総人口のうち、高齢者が多いので、働いていない人が多いということになります。

この割合が、日本は断トツです。
今回抜かれた韓国は、19.3%、次に抜かれる台湾は、18.6%です。

日本の働き手は、どんどん減っています。
15歳から64歳までの生産年齢人口は、1995年の8716万人をピークに減り続けています。
40年後の2065年には、4529万人になると推計されています。

日本の“稼ぐ力”です。

熊野さんです。
「日本の高齢化率は、断トツの世界1位。結果的に働いていない人の割合が高いため、1人当たりの『稼ぐ力』が低い

つまり、1人当たり名目GDPが低いということになります。

■円安も影響 1人当たりの『稼ぐ力』が低いワケ

1人当たり名目GDPが韓国に抜かれた2つ目の要因は、円安です

国際比較はドル建てで行われます。
1人当たり名目GDPは、円換算だと、
●2021年442万円、
●2022年は12万円増えて454万円、
●2023年は25万円増えて479万円、
3年連続の増加です。

ところがこれをドルで換算すると、
●2021年4万70ドル、
●2022年は5958ドル減の3万4112ドル、
●2023年は263ドル減の3万3849ドル、
3年連続で減少となります。

韓国や台湾と比べると、2023年の1年間でのドルに対する価格の変動は、
●台湾ドルは、マイナス1.54%
●韓国ウォンは、マイナス2.87%
●日本円は、マイナス7.93%と断トツです。

熊野さんによると、
日本の経済規模をドル建てで比較すると、大きく下がる。輸入に頼る食糧やエネルギーの値段が上がって、生活も苦しく、日本は相対的に貧しくなっている」ということです。

■「無駄な作業が多い」労働生産性の低さも課題

日本の1人当たりの名目GDPが低い理由に、日本の労働生産性の低さもあると言われています。

日本人労働者1人当たりの労働生産性は、1年間で、約877万円。
これは、OECD加盟国38カ国中32位と、1970年以降、最も低くなっています。

各国の労働生産性です。

●アメリカは、約1608万円
●ドイツは、約1306万円
●韓国は、約931万円
日本は韓国と比べても、54万円少ない計算になります。

日本は、なぜ労働生産性が低いのでしょうか? 

熊野さんです。
「日本では、無駄な作業が多いので、他の国と比べて効率が悪い。短時間で多くの成果を上げるのが、今の日本企業に求められている」

実際に働く現場の声です。

30代の会社員の方です。
部長・課長20人ぐらい集まる報告だけの会議に2時間出席しなければいけないということです。
報告だけならメールで良い。わざわざ対面にする必要がないのでは」

■日本経済復活のカギ握る「AI化」「機械化」

では、どのように労働生産性を上げれば良いのでしょうか。

AI導入で効率アップした企業があります。

冷凍餃子を生産販売している、イートアンドホールディングスは、これまで冷凍餃子の検品を1つ1つ人の手で行っていて、人手不足になりました。
そこで、AIカメラなどを導入し、製造ラインで、不良品を探知できるようになりました。
その結果、冷凍餃子の生産速度が2倍になり、人員は3割削減出来たということです。

ただ、日本の中小企業のAI導入率は低いです。

中小企業360万社のうち、AI導入済みは、わずか3%です。

なぜAIを導入しないのでしょうか。
「経営層にAIの理解がない」
「AIを開発・運用する資金や人材、データが社内にない」
という理由です。

韓国では、日常生活でもAI活用への取り組みが進んでいます。

2024年4月、韓国では『AI戦略最高位協議会』が発足し、国民がAIの恩恵を実感できるように、約800億円を投入します。
教育の現場でも、2025年度からAIデジタル教科書を導入します。
生徒の学習状況などをAIが診断、分析し、生徒の理解度に合わせて、問題の難度を変化できるということです。

AIを導入しないとどうなるのでしょうか。

熊野さんによると、
「高齢化による少ない労働力を生かすために、AI化して技能労働を機械化することに必死にならないと、日本は世界からさらに遅れる事態になる」ということです。

(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年1月6日放送分より)