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2025年3月9日 11:00

浅草100年食堂の「グルメ遺産」 元祖釜めし味を守る伝説のワザ 2度おいしい中華そば

2025年3月9日 11:00

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 101年続く釜めし専門店。具材によって火加減など調理工程を変えるこだわり。釜めしを始めるきっかけは、関東大震災にありました。「しょうゆラーメン発祥の地」といわれる東京・浅草。創業111年の中華店では、昔ながらの中華そばが時間と共に味が変わると評判に…。なぜ長く愛されるのか?ヒミツに迫ります。

■101年続く“釜めし発祥の店”

 浅草で1世紀にわたり愛され続ける「100年食堂」。そこには代々受け継がれる「グルメ遺産」があります。

 東京・浅草。この地で101年続く老舗があります。新年を迎えた3日。およそ600人が来店した、その名も「元祖 釜めし春」。店名に「元祖」と付く通り、「釜めし発祥の店」だといいます。長年足を運ぶ、常連さんが多いんです。

50年以上通う親子
「浅草に来ると必ず『釜めし春』に来る。家族で過ごす特別な場所」
60年以上通う男性(79)
「おいしい。釜めしは『釜めし春』だけ。よそへは行っていません」
五目釜めし 1450円
五目釜めし 1450円

 この100年食堂の「グルメ遺産」が、創業時から愛され続ける「五目釜めし」。エビやトリ、タケノコなど5種類の具材のエキスがご飯に染み込んだひと品です。100年以上にわたり、お客さんの舌を楽しませてきました。

埼玉から(70代)
「おいしい。好き、このにおいが。しょうゆベースのにおいが食欲をそそる」
埼玉から(70代)
「20歳くらいの時に1回食べて、こんなにおいしいモノがあるんだという感じ」
かき釜めし 1450円
かき釜めし 1450円

 季節限定メニューの「かき釜めし」。ぷりぷりの広島県産のカキをしょうゆベースのタレで炊き込みました。

特上釜めし 2170円
特上釜めし 2170円

 こちらは「特上釜めし」。カニやいくらなど、8種類の具材がふんだんに盛られた贅沢なひと品です。

 この100年食堂のグルメ遺産「元祖釜めし」はどのように生まれたのでしょうか?

■伝説のワザが?元祖釜めし

 豊田慶子さん(80)。3代続く老舗の3代目女将です。

豊田慶子さん
豊田慶子さん
豊田さん
「私が聞いた話では、関東大震災の時に夫の祖母が上野の山に避難した。その時、みなさんが釜や鍋などを持ち寄って炊いていたのを見て、ヒントにした」
1合釜を開発
1合釜を開発

 そこからひらめいたのが「釜めし」。一人ひとりに提供する1合釜を開発したといいます。

 女将の夫である3代目店主・豊田隆さん(84)は大きな病気をしたため、自宅で静養中ですが…。

豊田さん
「(夫は)すごくこだわっている。味見して、ちょっと違うなとか。おコメは『どこの何のコメを今注文しているんだ』って。『それをちょっと持ってこい』って家で炊いてみて、そういうチェックは今でもうるさい」

 おコメは釜めしに合う、粘り気の少ないモノを厳選しています。

元祖釜めし春 職人歴30年
中村悟さん

「(Q.ダシをとらない?)ダシはないです。具材からのダシだけ」
味付けは創業時から変わらず
味付けは創業時から変わらず

 味付けは、創業時から変わらず、しょうゆ・酒・みりんのみ。素材本来のうま味を大切にしてきたのです。ごはんの炊き方には、伝統の技があるといいます。

ごはんの炊き方には伝統の技が
ごはんの炊き方には伝統の技が
中村さん
「ムラができないように混ぜるのは必要だけど、あまりいじり過ぎると米が割れる。食感が悪くなる」

 さらに、具材によって火加減を調整。フタをするタイミングも変えているといいます。

 「五目釜めし」は、ご飯を混ぜて40秒ほどしてからフタをします。一方、「かき釜めし」は、1分半ほど待ちます。

中村さん
「カキは水分量が多いので、フタをするタイミングがちょっと遅くなる」
具材によって火加減を調整
具材によって火加減を調整

 カキの水分を逃がすため、フタをするまでの時間を長く。ご飯が柔らかくなり過ぎないようにするためです。

まさに職人ワザ
まさに職人ワザ
中村さん
「感覚的にどれくらいで沸騰するか、何となくタイミングが分かる。それに合わせて作業している」

 厨房にはガス台が70口あり、一つひとつ、タイミングを見極めて仕上げていきます。まさに職人ワザです。

 こちらは40年通い続ける女性。

40年通う女性(85)
「私は気に入ったら何十年でも通うタイプ」

 このお店は、お客さんの要望に応えてくれるといいます。

40年通う女性(85)
「“おこげ”を(多く)頼んだ。好きだから。おいしい」

 お客さんをとりこにする100年食堂のグルメ遺産。

60年以上通う男性(79)
「オレは来たいから来る。おいしいから来る。なじんでいるから来る。この店がずっとあるから来ている。何歳生きられるかですよ」

■スープのコツは「雑」

 続いては、浅草で100年続く町中華。昼と夜で味が変わる摩訶不思議な中華そばとは?

中華料理 あさひ
中華料理 あさひ

 裏浅草に位置する、大正3年に創業した「中華料理 あさひ」。飲食店の激戦区、浅草で1世紀にわたり生き残ってきた老舗だけにメニューは豊富です。

 常連が足しげく通い続ける訳は?

15年以上通う男性(48)
「この辺でズバ抜けておいしい。なので通っちゃいますね」
40年通う男性(48)
「(味は)変わらない。だから通っている」
中華そば 750円
中華そば 750円

 そんな100年食堂の「グルメ遺産」が、創業時から変わらぬ味を守り続けてきた、ちぢれ麺が特徴の「中華そば」。多い日はおよそ100食出る看板メニューです。

 味を受け継ぐのは4代目店主の植木隆一さん(59)。

植木さん
「味を変えないのが唯一のこだわり」
突然のれんを引き継ぐことに
突然のれんを引き継ぐことに

 先代である祖父が86歳の時に急死したため、突然、のれんを引き継ぐことになった植木さん。

植木さん
「おじいちゃんがやっている時はこう見てさ、自分でこうやってみて再現するんだけど、どうも薄かったり濃かったりするからさ」
4代目店主 植木隆一さん
4代目店主 植木隆一さん

 残されたレシピはないため、信じるのは自分の舌のみ。祖父の顔を思い浮かべたところ、答えが出ました。

植木さん
「雑にやってみたらピッタリ。コツは雑だった」

 中華そばのスープは鶏ガラベース。そこに豚骨と豚足を加えています。

スープは鶏ガラベース
スープは鶏ガラベース
植木さん
「豚骨は甘み、豚足はワイルドさを出すように」
「(Q.鶏と豚以外に何か入れる?)これだけ。おじいちゃんの時から変わらないね」

 しょうゆベースのクリアなスープが特徴の中華そば。浅草は「しょうゆラーメン発祥の地」といわれています。鶏ガラのすっきりとしたスープは、豚の甘みとコクがプラスされ深みが増すのです。

■味が変わる中華そば?

 さらに、この中華そばには、常連さんが通いたくなるヒミツがあります。

50年以上通う男性(80)
「(営業中に)だんだん味が変わってくる。煮込んでいるから」

 実はこの中華そばは昼と夜とでは、味が変わるというのです。

「味が変わる」スープ
「味が変わる」スープ

 店主が「味を変えている」のではありません。スープに使う材料を取り出さず、営業中も煮込み続けているので、「味が変わる」のです。

植木さん
「出だしと最後は多分濃さがだいぶ違うと思う。(午後)5時くらいのラーメンが一番うまいかも。お客さんは知っている」

 常連さんの中には昼と夜2度、中華そばを楽しむ人もいるといいます。

50年以上通う男性(80)
「アッサリしているのか、濃くなるのか、どっちが良いかって言われると分からない」
「(Q.どっちもおいしい?)うん。それなりに食べているから」

 そして、100年守り続けている味にひと手間加えた人気メニューもあります。

しょうがそば
しょうがそば

 これぞ、新グルメ遺産「しょうがそば」。スープはそのままで、おろししょうがをタップリとトッピング。体が温まること請け合いです。

15年以上通う男性(48)
「おいしい。他じゃないよね」

 浅草で愛され続ける100年食堂。将来の5代目も腕を振るっています。

植木さん
「続けられていることはありがたい。お客さんも来ていただいているしね。そういう意味では幸せ。あさひは」
15年以上通う男性(48)
「うまいね。ごちそうさまでした」
  • 元祖 釜めし春
  • 五目釜めし 1450円
  • かき釜めし 1450円
  • 特上釜めし 2170円
  • 豊田慶子さん
  • 1合釜を開発
  • 味付けは創業時から変わらず
  • ごはんの炊き方には伝統の技が
  • 具材によって火加減を調整
  • まさに職人ワザ
  • 中華料理 あさひ
  • 中華そば 750円
  • 突然のれんを引き継ぐことに
  • 4代目店主 植木隆一さん
  • スープは鶏ガラベース
  • 「味が変わる」スープ
  • しょうがそば