小泉農水大臣は、5月30日にも再開される備蓄米の随意契約について、中小のスーパーや町の米穀店を対象にした説明会を5月29日開催すると明らかにしました。
すでに契約した小売業者には、5月29日にも備蓄米の引き渡しが始まります。
さらに、コメの価格が高騰している一因ともいわれる『スポット取引価格』についてもみていきます。
■随意契約の備蓄米 大手小売へ引き渡し 販売日と価格は?
『備蓄米』の新たな随意契約です。
2021年産の古古古米、10万トンの申請受付を、5月30日にも再開します。
店頭価格は5キロ1800円程度(税抜き)を想定。
対象は、これまでの大手小売りから、中小のスーパーや米穀店に変更されます。
「様々な形を検討しながら、スピード感をもって、できる限り広く行き渡る努力を続けたい」としていて、5月29日夕方に、事業者対象に説明会を開催します。
随意契約は、これまで、5月26日に、大手小売りを対象に受付が開始され、2022年産の古古米20万トンに申し込みが集中しました。
そこで翌5月27日に、受付を一時休止しました。
61社から申請があったということです。
小泉農水大臣は、備蓄米の運搬について、国交省に倉庫業者への協力と、トラックの手配の要請をしました。
輸送コストは国が負担します。
備蓄米は、5月29日にも引き渡しが始まります。
随意契約を結んだ『アイリスオーヤマ』のグループ会社です。
5キロ2000円(税抜き)で、5月29日から、通販サイトで予約販売を開始します。
1万トンを申し込み、自社で精米。
店頭でも6月2日から販売を開始する予定です。
随意契約を申請している『イオン』は、5キロ2000円(税抜き)を目安に、6月初旬から販売予定です。
約2万トンを申し込んでいて、精米や袋詰めは、取引のあるメーカーに依頼するとしています。
同じく随意契約を申請している『ファミリーマート』です。
1キロ400円(税抜き)。
5月27日に3000トンを申し込んでいて、6月上旬から1キロ単位での店頭販売を目指します。
ファミリーマートの備蓄米に対し、SNSの声です。
『随意契約』以外のコメの価格は下がるのでしょうか。
「赤字で売る状況でもない。今まで通りの額で販売を続ける」
「影響はありません。値段が高いものと安いものでは味に差があるので、選択肢が増えたと考えていただければ」としています。
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■なぜ価格高騰?一因とされる『スポット取引価格』とは■なぜ価格高騰?一因とされる『スポット取引価格』とは
コメの店頭価格の高騰の一因といわれる『スポット取引価格』です。
「コメ価格の高騰の原因は、コメ不足が原因だったのか。それとも流通の問題、目詰まりの問題か、大臣はどう考えているのか」と質問しました。
「2024年産米は、18万トン前年より増加。生産量が減っていての不足ではない。生産者が全農(JA)など集荷業者へ出荷する量が31万トン減少した」
2024年の生産量は679万トンで、前の年より18万トン増えました。
生産者は、JAなどの集荷業者に、玄米60キロ2万円前後で出荷しましたが、この量は、前の年より31万トン減りました。
一方で、JAより高値で買い取る卸売業者への出荷量は、前の年より44万トン増えました。
1、JAの相対取引価格は、玄米60キロで平均2万4500円。前の年と比べて1.61倍です。
2、一方で、卸売業者のスポット取引価格は、玄米60キロで平均4万7000円。前の年と比べて、2.3倍です。
3、JAを通じた小売店への供給が減りました。
4、そのため、在庫が不足すると、スポット価格で発注するので、これが、コメ高騰の一因になっているということです。
なぜ店頭価格が高いのでしょうか。
宮城大学の大泉一貫教授によると、大手外食チェーンは、1年分まとめて大量に長期契約しますが、スーパーなどの小売店は、在庫が減ってから発注し、不足分をスポット価格でその都度契約するので、現在の高い価格が反映されている、ということです。
■コメ国会攻防『増産』『適正価格』めぐり小泉大臣vs野党3党首
5月28日の衆院農水委員会で、小泉農水大臣に、立憲・国民・維新の野党3党首が質問しました。
個別分野の委員会に、党首級がそろうのは異例です。
「3000円台でも驚いたのに、2000円と数字を明確にした。バナナのたたき売りじゃないので、気合は分かるが、適正価格かどうかということ」と質問しました。
「2000円は、生産者にとっては適正ではないと思う。しかし、古い備蓄米を卸していく価格としては、適正だと思う。生産者の皆さんに、消費者のコメ離れを防ぐんだと理解してもらうよう、丁寧に進める」としました。
「備蓄米の一部が転売され、高値になりゆがんだ形で、市場に回る危険性もある」と指摘しました。
「その懸念も出ている。転売しないよう付した上で売り渡し、様々な検討が必要」だとしました。
「備蓄米の倉庫は、すっからかんになった。ゼロを維持するのか、外国産を入れるという選択肢が現実味を帯びてくる。どう補うのか」
「備蓄米をすべて売り渡した後に、仮に大凶作等の事態が発生した場合、国民が最低限必要とする食料の供給について、国が保有するミニマムアクセス米も活用可能」としています。
「コメは増産すべきと考えるか」と聞くと、
「今よりも増やしていきたい。一方でセーフティーネットの問題。玉木氏は戸別所得補償、直接支払いを強化すると、私は収入保険、ナラシ(収入減少対策)をどう考えるか。すべてテーブルに載せる」としました。
■コメ農家が小泉氏に手紙「コメ増産宣言を」小泉氏の考えは…
コメ農家さんが、小泉農水大臣に手紙を出しました。
手紙を出したのは、秋田県の『大潟村あきたこまち生産者協会』会長の涌井徹さんです。
涌井さんは、長く減反政策に反対の立場の方です。
5月27日に、提言文書を小泉農水大臣あてに発送しました。
涌井さんの提言です。
55年間続いた減反政策により、コメ農家の多くは後継者がおらず、設備投資の資金もないため、増産ができない環境にある。
小泉大臣みずから、主食用米の増産を宣言してほしい。
「収穫量が多い品種の開発・普及などによって、生産コストと価格を抑え、輸出を増やすことで値崩れを防げる。『コメが余ったら価格が暴落する』ではなく、『余ったら輸出する、そのためにコストを下げる』と考えるべきだ」としています。
「海外でコメを売るには、きめ細かく販路整備や、流通や商社などとの協力関係を構築する必要がある。安易に余ったからといって、海外に出すことは難しい」としています。
涌井さんの提言2つ目
その組織は、全国の金融機関や農機具・農薬メーカーのほか、商社・量販店などが出資した新たな組織を想定している、ということです。
「コメ作りを始めるには、初期投資が莫大だが、それに対するリスクヘッジは何もない。自然環境が相手で不安定、保障もなければ、若い就農者は増やせない。そのための新たな組織が必要だ。こうした役割は、本来、農協がやるべきだが農協はやらない」
■AIが予測 2025年〜2027年のコメ価格 上昇?下落?予測結果は
AIによる、今後のコメの店頭価格予測です。
これは、過去の価格や気象データ、作付面積、生産コスト、備蓄米放出等の政府の介入などをAIに学習させて分析しました。
ただ、小泉農水大臣になってからの新たな備蓄米放出の影響は、加味していません。
そのうえで、2025年〜2027年の5キロのコメ店頭価格を予測しました。
その予測です。
現在価格を5キロ4268円で計算しています。
3つのケースがあります。
価格が大幅に上昇するケースでは、2025年後半〜2026年は、5120円〜5980円程度。
2027年には、6300円以上もある、という予測です。
緩やかに上昇するケースでは、2025年後半〜2026年は、4300円〜4570円程度。
2027年からは、約4%から10%程度上昇し、4440円〜4700円程度という予測です。
やや下落するケースでは、2025年後半〜2026年は、3930円〜4220円程度。
2027年は、3760円〜3970円程度という予測です。
価格が大幅に上昇するケースの要因は、
●記録的な猛暑や干ばつ、大規模な水害などにより、収穫量が大幅減
●備蓄米の放出も、深刻な供給不足から、価格抑制効果は限定的
緩やかに上昇するケースの要因は、
●過去の平均的な気象条件が続き、作付面積が緩やかに減少する
●備蓄米の放出は、一定の価格安定効果を発揮するものの、上昇圧力を完全に抑制できない
やや下落するケースの要因は、
●天候に恵まれ、全国的に豊作
●新しい栽培技術の普及や政府の生産支援策が効果を上げ、コメの供給量が安定的に確保される
これらのケースの中で最も可能性が高いのは、
『緩やかな上昇』が55%、
『大幅上昇』は30%、
『やや下落』は15%です。
5キロ約2000円の新たな備蓄米が放出されたら、価格はどうなるのでしょうか。
「新たな備蓄米を放出しても、コメの消費量の1割にも満たず、一気に値段が下がるというのは難しいだろう。消費者は、他の主食で代替する頻度を増やす可能性があり、外食産業が価格に転嫁すれば、外食を控える可能性もある」ということです。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年5月29日放送分より)