15日は2カ月に一度の年金の支給日でした。政治の空白が長引いて物価高対策が進まないなかで、多くの年金受給者が安い輸入米を購入するなどして生活を切り詰めています。
年金支給日 ATMに長蛇の列
15日は2カ月に1度の年金支給日とあって、多くの高齢者が銀行を訪れていました。
1カ月4万円の家賃を振り込みに来た、81歳の男性はこのように話します。
「家賃を8万円払って次の(年金支給日)12月まで払わないようにして2カ月分払って。なにかあって金がなくなって追い出されても困るから」
銀行のすぐ隣にある宝くじ売り場でも列ができています。
年金受給者(78)
「(銀行の)中でいくら残っているか見てジャンボ(宝くじ)を9000円」
「(Q.どうして宝くじを購入した?)夢だよ。金のないやつの夢だよ」
夫と暮らす80歳の女性は、ギリギリの生活を余儀なくされているといいます。
「(家賃は)4400円なんです。安いでしょ。だから生活できるんです」
「(Q.生活で工夫していることは?)全部、工夫です。食べるものも生活の日用品も。お金を使わないように(外出も)散歩だけとか」
東京・足立区にある激安スーパー。店内では新米が売り出されていますが、訪れた年金生活者はこのように話します。
「新米は手を出さない(5キロ)4000円オーバーなので。(今年の初めコメは)2000円ぐらいで買えたんだよ。高いね、おコメは特に」
現在、一人暮らしをしているという84歳の女性。1カ月4万円の年金で生活しています。
女性が訪れたのは近くの和菓子店。2カ月に1度の年金支給日の楽しみは?
出身地の新潟産のおコメを使用したおにぎりや稲荷ずしを食べるのが楽しみだといいます。さらにスーパーでお買い物。以前働いていたなじみのお店です。厳選しながら商品をカゴの中に入れていきます。
会計は6000円ほどに。
近くの都営団地に暮らしているという女性。自宅まで同行させてもらうと、築50年以上の団地の家賃は月1万円ほど。2Kの部屋は所狭しと物が置かれ、ふすまははがれ、天井や壁には黒ずみができるなど年季が入っています。
この日買ってきたものを冷蔵庫に。中を開けてみるとガランとした状態。
「(Q.ちょっとずつ食べて?)うん」
別れて生活している2人の息子が食べ物などを持って来てくれたり、一緒に買い物に行ってくれたりするといいます。
「(Q.助けがないと生活は難しい?)そうですね」
楽しみにしていた和菓子店の稲荷ずしを食べ、至福のひと時です。
月4万円の年金に対し、1万円の家賃や光熱費、医療費などを支払うと手元に残るお金はないといいます。それだけに次の年金が出るまでの2カ月間を待ちわびています。
「(お金を)使うのは簡単だけど、本当にためるのは大変なことですよね」
「本当にいつも思う、泣けてきますよ」
酒・たばこやめ 唯一のぜいたくは…
2025年度は多くの受給者の年金が前年比で1.9%増えたものの、物価高騰に追いつかず、実質的には目減りが続いています。
「狭いけど…ビジネスホテルみたいな」
都内で一人暮らしをしている石井さん。1カ月あたり9万円ほどの年金を受け取っていますが、物価高騰で生活は苦しくなる一方だといいます。
「(Q.これはなんですか?)これはアメリカ産カルローズ米。これは2000円、4キロ」
石井さんは去年1月からコメを購入するたびに家計簿に価格を記しています。
「(Q.去年1月に買ったもの?)ずいぶん太っ腹だなと思って(スーパーに)行ったら…店頭価格2480円。ふざけるなと」
去年8月に「令和の米騒動」と書かれた前と後では、値段が高くなっているのが分かります。そのため…。
部屋は4.9畳のワンルーム。キッチンはほとんどスペースがなく、炊飯器や電気鍋は床に置き、冷蔵庫はありません。
「(Q.結構…)しますよ。酒はやめた、たばこはやめた、本来はこの分、浮くわけですよ」
家賃は約5万5000円。2カ月ごとに18万円の年金が支給されますが、支給日に2カ月分の家賃約11万円を支払っていて、残った7万円ほどで生活をやりくりしています。
「(Q.これも安い?)これは安いですよ。だって4袋入っているんですよ。400円しないのでずいぶん安い。400円以上だと買いません」
物価高騰が続くなか、さまざまな節約術で日々を乗り切る石井さん。そんななか、楽しみの一つだというのが…。
懸賞に当たった時が“唯一のぜいたく”だと言います。
受給者怒り「希望の話はない」
年々苦しくなる年金生活者の暮らし。街で多く聞かれたのは、政治に対する“不満の声”。
「とにかく日々の生活が、とてもやりくりできる状態じゃない。物価高をなんとか下げられないものかしら」
「社会保障もどんどん減っているし、将来というかもう目の前が危ない」
「代わりばえがないという気がしますけどね」
「(Q.誰が(総理に)なっても?)同じかなという気がします」
都内で一人暮らしをする佐藤さん(仮名・80)。「年金だけでは生活できない」と訴えます。
「足りない、足りない。やっぱり貯金がなかったら生きていけない。今ごろきっと生活保護の申請しているかもしれない。年金だけでは、本当やっていけない」
年金はひと月約10万円。家賃6万円を支払うと手元に残るのは4万円ほどで、貯金を切り崩しながら生活しています。夕方のニュースが始まると…。
目まぐるしく動く政治のニュースを見て不満を口にする佐藤さん。
物価高についてはこう話します。
独自節約術“混ぜる”
多くの年金受給者が口にする政治への不満と物価高。こちらの79歳の鈴木さん(仮名)が訴える不満もコメの価格高騰です。
「今はまだ(5キロ)4000円〜5000円ぐらい。前はだって去年までは2500円ぐらいで食べてましたからね。それが一気に倍ぐらいになっちゃったでしょ」
スーパーの売り場では新米が並んでいますが、値段が高くて買えず、古米や古古米を食べているといいます。
鈴木さんは50年ほど前に離婚。今はアパートで一人暮らし。家賃は月5万5000円です。他に光熱費・通信費などが2万円ほどかかり、月に8万円の年金だけでは生活は難しく、現在、週に3〜4日働きに出ているといいます。
今、生活苦を理由に働きに出る高齢者の数が増えています。総務省の調査によると65歳以上の就業者数は2014年は683万人でしたが、去年は930万人と大幅に増加。
鈴木さんは4年前までタクシー運転手として働いていましたが、退職してから生活が厳しくなり、また働き始めたといいます。
苦しくなっていったという生活。普段食べているおコメを見せてもらいました。
「(Q.色が違いますね)もち米と古米と…」
「(Q.自分で家で混ぜた?)そうです。もち米買ってきて。粘りが出るんですよ。もち米を入れたことによって」
もち米を混ぜて炊くと、古米や古古米でもおいしく食べられるといいます。
ご飯ができるまでの間におかずの準備をします。
「(Q.スプレーなんですか?)そうそう、油断するとかけすぎちゃうから」
「(Q.これで節約?)まあね、多少」
この日は年金支給日の前日。自分へのご褒美として、奮発しチキン南蛮を買いました。
「(Q.ご褒美で買ったチキン南蛮どうですか?)結構おいしいですよ」
「(Q.買ってよかったですね)まあね。みんな(おコメが)高いから控えて安いやつ食べてんだろうから、できればみんな新米食べたいですよね」
「(Q.新米がいくらだったらいいなと思う?)3500円ぐらいだったらね」
「(Q.新米また食べたいと思う?)まあね」
先の見えない物価高に思うことは?
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年10月17日放送分より)