水谷豊 人生を楽しむ“秘訣”「後ろ振り返らない」…監督第3作「太陽とボレロ」公開[2022/06/03 19:00]

俳優・水谷豊さんが監督を務めた3作目の映画「太陽とボレロ」が3日から公開となりました。刑事役のイメージも強い水谷さんですが、今回は、「映画監督・水谷豊」の“素顔”と、人生を楽しむ“秘訣”について、渡辺宜嗣コメンテーター兼スペシャルリポーターが話を聞きました。

■檀れいさんに主演を…脚本時で不思議な経験

――ここまで、監督としての水谷さんの話をお聞きしましたが、今度は、キャストの方々の話をお聞きします。檀れいさんが素敵でした。応援したくなる気持ちになりますよね?

今回は、色んな顔をしてほしいと。僕は実際、仕事を一緒にしていて、「相棒」に出てもらったことも。何年か続けて共演しているのですが、そうすると、カメラ前では見せない檀れいさんの表情、普段の表情をよく見ているわけですね。そこであの時のあの顔というか、ああいう顔を映したいなとか、監督になるとそういうことを思い始めるんです。だから、檀れいさんの魅力的なところをと。

――主演として、檀れいさんをキャスティングしようと思われた瞬間というのは、どういうところだったのですか?

これは本当に不思議なのですけど。脚本を書く時に、具体的にキャストを思い浮かべて書くということをやっていないんですね、今まで。自分のイメージだけ、全部、架空の人なんです全部。書く時は。今回は、1シーンだけ檀れいさんの顔が出てきたシーンがあったんですよ。キャスティングに入った時に、プロデューサーに檀れいさんのオファーしたいと言った時に、その話は言わなかったんですね。プロデューサーにも。とオファーはできるけれども、向こうには断る権利があるので、断られたら、そんな話してもむなしいと思って。

檀れいさんがOKになったと聞いてから、実は、檀れいさんはあのシーンで檀れいさんが出てきてたんだっていう話を後でしましたね。そんなことがありました。

――どのシーンですか?

「白鳥の湖事件」と言っているんですけど、ホテルで「白鳥の湖」が流れるのですが、そのホテルの後に河原で、公園のベンチで横たわっている。あそこの公園。まさに、檀れいさんでした。

――檀れいさんは今回、初主演だそうですね?

そうなんですってね。僕もびっくりしました。もうすっかり“主演顔”ですので。この映画でも、素晴らしい芝居を、何を言うこともなく、その世界に行ってくれるということが多かったですね。

■檀れいさんから質問「元気の源は?」

――実は、水谷さんにインタビューするとなった時に、こちらから檀れいさんに水谷さんにこのことだけ聞いてほしいという質問事項を、オファーさせて頂きました。そうしたら、返ってきた檀さん本人からの質問が2つありました。水谷さん答えて頂きたいと思います。最初は「監督は何でいつもそんなに元気なんでしょうか?水谷さんは1年のうちおよそ7カ月の間、俳優として相棒の撮影をされていて、その間に映画の脚本を書かれたり深夜まで映画を見ていたり、膨大なセリフを覚えたり、一体いつ休まれているんでしょうか?映画の撮影現場でも、常に笑顔で楽しまれている監督の元気の源を知りたいです」ということです。

何でしょうね。そう見えているんですか。実際そうなんですかね。答えになっているか分からないですが、いつも今楽しくいたいんですよ。いつも今健康でいたいと思うんですね。これは、きのうはもうどうでもいいと思っちゃうんです。今健康でいよう、今楽しくいようって。1時間前はどうでもいいです。それは、今なんだって。そういう思いがちょっとどこかにありますよね。もう後ろ振り返ると、笑い話になることだけですね。

――もう一つ聞きたいのは、「監督は何でそんなにつややかな肌をしているのですか?お会いする度に、つややかで若々しい肌をされていて、何を食べたら、そんなにつややかな肌でいるのか知りたいです」ということです。

そこですか。よく言われることがあるんですよ。どんなメイクさんにも言われます。「肌が良いです、きめ細かいです」って言われるんですけど、その分光るので、粉を多く使いますって。

宝塚のトップスターだった、檀れいさんに、そんな質問されるとは思わなかった。いつも笑っているからそう見えるんですかね。

■「演奏シーン吹き替えなし」こだわった理由

――キャストの話で、俳優の皆さんには、「演奏シーンは吹き替えなし」でと。これは大変ですよね?

そうですね。大変だったと思います。実際にプロのオーケストラの中で、一緒に演奏しますから、吹き替え使いませんし、寄りもちゃんと撮っていきたいと。それを最初に皆さんにお伝えして。大変だったと思います。

僕の経験上ですけど、実はピアノをやったことないのに、ピアノを弾くという舞台をかつてやったことあったんです。5曲、6曲、それもすごい速い曲とか交響曲やジャズとか色々弾くんですね。それをやった時に、実は精神がどこか行っちゃうぞというくらいな経験しているんです。

これは人には勧められないなと、思っていたんですけど、今回は、これを乗り越えたらそこにある喜びというのは、おそらく一生に一回のことだと。今回、やって思った人はいると思うんですよ。この喜び、この今まで経験したことない、震えるような感覚。これを味わえるので、皆にそれをしてもらいたかったというのもあるんですね。俳優として。

――プロと同じように、同じよう以上にやらないとできないわけですからね。監督として、見ていた時も感動的だったのではないでしょうか?

そうですね。よくここまで来たなと思いました。途中で、あまり甘い言葉を投げ掛けるわけにもいかなくて、黙って待っていたんですけど。1年くらい皆やっていましたから。コロナで撮影伸びた分も、彼らにとっては少しだけ助かったという時間でもあったと思いますね。

――そういう一つひとつの積み重ねが、あの感動的なラストに向かっていく。そういえば、ボレロってそういう曲ですね?

そうですね。静かに始まって、最後は全部が巻きまれていくという感じですかね。

本当にもう素晴らしいスタッフが集まっている。方向を決めるのが監督で、監督の責任というのは、まず最初に方向を決めること。どっちの世界に行くのか決めることですね。役者、スタッフがそこへ向かって行くわけで。方向間違っていたら、どんなに良い仕事したって、実を結ばないだろうと。でも、監督の方向が良い世界に向かっていたら、皆が素晴らしい仕事になる。

僕は、スタッフが仕事しているのを、俳優さんが仕事をしているのを見ているのが、好きなんです。見ているだけで、うれしくなるんですよ。監督やってみて。現場なのに、感動する自分がいるんです。

■「監督」という“指揮者”として…次回作は?

――“指揮者”もやはり「監督」ですね?

そうですね。確かに。アンサンブルを皆、集めていく。一つにしていく。

――“指揮者”として気を付けたことは?

特に、今回は本当のオーケストラに見せたいという思いもありましたし、映像になるともっと生々しく見ている側に伝わります、舞台よりも。その分、楽器吹き替えにすると、「俳優さんだから仕方ないよね」って、そういう世界がある。プロみたいにできるわけはないんだって。そう思われたくない一心でした。

――きっと水谷さんの中には、第4作の構想があるという気もしているのですが、本当は…?

僕はダメだね、ウソ付けないから。顔に出ちゃっているんでしょ。なんかフワッとね、次やるとしたらっていうイメージは…あります。

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