
映画「初恋」(三池崇史監督)のオーディションで3000人の中からヒロインに選ばれ話題を集めた小西桜子さん。「ファンシー」(廣田正興監督)、「初恋」、「佐々木、イン、マイマイン」(内山拓也監督)で第42回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。2021年には「ファンシー」で共演した永瀬正敏さんがカメラマンを務めた写真集「月刊 小西桜子・刹」(小学館)が発売に。「まどか26歳、研修医やってます」(TBS系)に出演中。ヒロインを務めた映画「ありきたりな言葉じゃなくて」(渡邉崇監督)が公開中。(※この記事は全3回の中編。前編は記事下のリンクからご覧いただけます)
■永瀬正敏さんがカメラマンでファースト写真集

2021年、本格的な俳優デビュー作となった「ファンシー」で共演した俳優で写真家・永瀬正敏さんが撮影を担当したファースト写真集「月刊 小西桜子・刹」が発売。鮮烈な商業映画デビューを飾った小西さんを間近で見て来た永瀬さんがカメラマンならではの写真集だと話題に。
――永瀬正敏さんがカメラマンで写真集というのはすごいですね
「そうですね。永瀬さんは広く知られていて、私も尊敬する方ですし、ステキな方で、もちろん映画もずっと見ていました。私は、初めての写真集だったので、それを一緒に作らせていただけるというのは、身に余るというか、ありがたい経験だなと思いました」
――映画では共演されていますが、カメラマンとモデルという関係はいかがでした?
「全く不安はなく、信頼してお任せしてという感じだったので、安心して撮影に臨むことができました」
――永瀬さんに撮っていただいたお写真をご自身でご覧になったときはいかがでした?
「永瀬さんの世界が確立されたものがあるので、その中にどこかその当時の私にしかないような、その瞬間、瞬間の何かが永瀬さんの世界観と融合したものが残せていたらいいなとは思いました」
――写真集について永瀬さんとどんなお話をされたのですか?
「いろいろお話しているというよりか、永瀬さんの撮りたいものがすごく確立されていましたし、もちろん私と永瀬さんだけで作ったわけじゃなくて、出版社さんと編集さんと皆さんで一緒に作って…という感じで。みんなの思いが詰まった写真集になったと思います」
――撮影で苦労されたことは?
「コロナ禍になってから撮影した写真集なので、閉鎖的な中でハウススタジオのプールで撮影したり、大変ではありました。
でも、自分が訴える『刹那主義』というか、その瞬間、瞬間が好きと言いますか。写真集もできればまた出せたらいいんですけど、一生にそんなに何冊も出せるものではないと思うので、その瞬間、瞬間の刹那的な瞬間がずっと残ったらいいなっていう思いを込めて、“刹”というのを月間シリーズのサブタイトルに付けてもらいました」
――納得のタイトルになったわけですね
「そうですね。そこは、唯一譲れなかった私の意見というか、そうさせていただきました」
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■コロナ禍は映画の公開で舞台挨拶もできず…■コロナ禍は映画の公開で舞台挨拶もできず…

フリーで俳優活動を始め、立て続けに映画5作品に出演するという異色の経歴で注目を集めた小西さん。「ファンシー」、「初恋」、「佐々木、イン、マイマイン」で第42回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞した。
――2020年は立て続けに映画が公開されて、「佐々木、イン、マイマイン」では生後4カ月の赤ちゃんを持つママという設定でしたね
「はい。赤ちゃんがいるというのは初めてでした。結構、内山さんもすごい作り込んで、クラスメイト役のキャストさんと一緒にバスケをしたりして親睦を深めたり、のちにカットになってしまいましたが、結婚式の写真など、いろんなシーンを撮りました。
もちろん、いい作品を作るために、削られた部分もありましたが、準備期間もあったので、すごく自然に入れました。
映画の中では時系列も飛びますが、それも違和感や空白の部分があるままというより、きちんと関係性ができて作品に臨めたので、それはすごくありがたかったです」
――納得のいく流れでしたよね。小西さんは同級生と結婚して子どもも誕生して…という、
時間経過も感じさせて
「そうですね。すごくいい作品で、私は大好きです」
――「映像研には手を出すな!」(英勉監督)もこの年ですね
「当時はすごい目の前のことに必死だったし、まだ自分が出た作品が公開になってうれしいというより焦りみたいなものがありました。
何かもっと頑張らないといけない、もっともっと作品に出たいし、もっといい役者になりたいし…という気持ちの方がすごくあって。どちらかというと焦りというか、もっと頑張らないとみたいな気持ちで、目の前のことにいっぱいいっぱいになりながらやっていたという感じでした。
でも、今思えば確かに当時の自分はすごくありがたい立場だったし、必死さというか、いい意味で、今の若い子たちとかを見ると、ちょっと冷静に当時の自分を思い返せる気もします。
確かに当時の私の焦燥感というか、必死で一つ一つのオーディションを受けて飛ばしていたので、確かに選ばれるかもって思ったというか。周りに対して謙虚にというよりかは、だいぶ図々しかったので、何かそれが功を奏したかなと思います」
――でも、すごいことですね。事務所に所属せずフリーの状態でオーディションを次々に勝ち抜いて出演。「真・鮫島事件」(永江二朗監督)も同じ年に公開でしたね
「はい。あの作品はコロナ禍でリモートで撮影でした。撮影現場で皆さんとお芝居ができるというよりかは別室で…みたいな感じで。本当にそういう一人一人のお芝居だったので難しかったんですけど、新しい挑戦をさせてもらえたなって思います」
――だから大変な時期に俳優活動が本格的にスタートしたという感じでしたね
「そうですね。なので、かえって最近の方が普通に、それこそマスクやフェイスガードもつけずに、普通にお芝居ができるようになったという感じです」
――リモートでの撮影とかそういうのが多かったのは、ご自身ではどう思われていました?
「2020年が一番コロナでお客さんが映画館になかなか足を運んでくれなかったというのもあって、そういうもどかしさはありました。
でも、それが逆に当時、悔しい思いや、いつかもっと映画というものを世のお客さんに見てもらえるようになりたいという思いだったり…そういう思いに突き動かされて頑張っていたと思います。
未来に向かって希望を持っていたのが当時すごい自分の原動力だったので、それは今考えてみても、この業界に限らず同世代の人たちみんな若い世代のこれからという時にぶち当たった壁だと思うんです。
でも、今こうやって何年か経って、その世代の人たちを見ても何か当時の経験がそれぞれの今続けていることになり、どこかで活きているんじゃないかなって思います。当時は、本当に公開初日なのに舞台挨拶もない作品が多かったですね」
――第42回ヨコハマ映画祭で最優秀新人賞も受賞されました
「とてもうれしかったです。コロナ禍で授賞式ができなかったのは残念でしたが、賞状と盾を送っていただきました」
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■大好きな『猫』に縁がある作品があるのはうれしい■大好きな『猫』に縁がある作品があるのはうれしい

猫好きだという小西さんは、前田旺志郎さんとW主演を務めた「猫」(テレビ東京系)、「かんばん猫」(BSテレ東)など猫に縁がある主演ドラマも多い。
2022年に放送されたドラマ「かんばん猫」は、小西さん演じる主人公の雑誌記者・高橋小梅が企画の連載で、都内に実在する“かんばん猫”がいるお店を探訪し、紹介していく様を描いたもの。
――猫を飼っているので「かんばん猫」も好きです
「ありがとうございます。私もすごい好きです。幼いときから実家に猫がいて、そこからずっと猫がいたので、本当に当たり前の家族みたいな存在です。だから猫に縁があるのはとてもうれしいです」
――猫ちゃんと一緒の撮影は大変だったのでは?
「そうですね。でも、そのドラマの猫ちゃんとかもそうでしたけど、やっぱり猫を題材にしているからこそ、猫ちゃんファーストでというか。猫ちゃんになるべく負担がないようにということを考慮しての撮影でした。現場の皆さんも猫が大好きで」
――共演されている田中要次さんも川上麻衣子さんも猫好きで知られていますね
「そうなんです。猫好きの皆さんがキャスティングされていたので楽しかったです。本当に猫ちゃんに負担をかけないように気をつけて撮影していました。
やっぱりワンちゃんと違って猫ちゃんは繊細だし、しつけとかも難しく、あまり言うことを聞かないので、猫ちゃんを先に撮って人間は何でも合わせるみたいな感じでした。猫ちゃんファーストで撮影が進んでいたので、それはすごく心地のいい現場でしたね」
――猫ちゃんたちの可愛らしさもさることながら、主人公の成長物語という面でも面白いですね
「そうですね。それぞれのお店で猫ちゃんのエピソードを知れば知るほどハマっていって。全4話でしたけど、またできたらいいなあって思っています。『孤独のグルメ』とかシリーズ化されている作品も多いので、“かんばん猫”がいるお店があればできるのかなって期待しています」
フリーで数多くの作品に出演してきた小西さんは、2024年9月から小栗旬さんが社長を務めるトライストーン・エンタテイメントに所属することに。次回はそのきっかけとなった映画「ありきたりな言葉じゃなくて」も紹介。(津島令子)