反権力象徴のマスク “覆面禁止”の香港にあふれる[2019/11/06 15:29]

 香港で覆面禁止法が施行されてから1カ月となり、街はマスク姿で抗議する人であふれ返りました。ハッカー集団「アノニマス」も着用したマスクに込められたその意味とは。

 香港で顔を覆うマスクなどを使用して無許可のデモに参加するのを禁じた覆面禁止法の施行から1カ月となった5日、大勢の参加者が抗議のためにマスクを着用してデモ隊のテーマソングとなった「香港に栄光あれ」を合唱しました。このマスクは「ガイ・フォークスマスク」と呼ばれ、香港でも先月からよく見られるようになりました。
 ガイ・フォークスは、今から414年前のイギリスで王を殺害しようとした事件の実行者とされる人物です。ちょうど11月5日がその事件の日にあたりますが、事件そのものは失敗。現在では11月5日は王の無事を祝う祭りが行われる「ガイ・フォークスデー」として知られています。
 しかし、王に反抗したこの事件の内容からガイ・フォークスそのものは次第に「権力者への抗議」のシンボルとして使われるようになります。最も有名なのが「アノニマス」。各国政府による抑圧やテロ行為に対してハッキングなどの手段で対抗する集団で、各地で着用しています。
 去年からフランスで続く「黄色いベスト運動」は、燃料税の引き上げへの反発からマクロン大統領の辞任を訴える運動に発展しました。最近ではスペインのカタルーニャ地方の独立運動や、スマホアプリへの課税から大規模な反政府デモに発展したレバノンでも参加者が着用する姿が確認されています。
 香港では「覆面禁止法施行から1カ月」と「ガイ・フォークスデー」が重なったほか、その前日にもう一つ大きな動きがありました。林鄭行政長官と中国・習主席が会談。デモ対策の強化が指示されたとみられ、民主活動家らは警戒感を強めています。
 香港ではデモ隊が訴える行政長官の普通選挙は実現されていませんが、その代わりに今、注目が集まっているのは今月に行われる区議会選挙です。政権の運営には影響力を持ちませんが、議員の一部は行政長官選挙に投票権を持つ選挙委員に選ばれることになります。今回の選挙の立候補者数は過去最多です。多くの若者も声を上げています。
 有権者:「前回の選挙は投票したいと思わなかったが、今回は必ず投票する」
 会計事務所職員の梁凱晴さん(25)は当初、ボランティアで民主派候補を手伝うつもりでした。しかし、親中派の候補が無投票で当選しそうな選挙区があることを知って立候補しました。24日の選挙に向けた戦いはほぼすべての選挙区で中国本土との関係が深い親中派と、デモを支持する民主派が対決する構図となり、ポスターが破られるなど激しさを増しています。
 民主派として立候補した童継民さん(32)は香港を拠点とするキャセイパシフィック航空の客室乗務員ですが、デモに参加した従業員が中国の航空当局による圧力で解雇されたため、出馬には迷いがあったといいます。しかし。
 民主派候補者・童継民氏:「デモ参加者はリスクを背負って香港の未来を変えようとしている。(立候補して)解雇されるかもしれないと悩むことは小さなことだ」
 一方、現職の区議で中国・青島市の政協委員も務める余志栄さん(60)は「今回の選挙は政治を争点にするべきではない」と主張します。
 親中派候補者・余志栄氏:「区議はあくまで地域の生活環境を良くするために全力を尽くすべきだ」
 資金力と組織力で勝る親中派と、若者が支える民主派の支持はほぼ拮抗(きっこう)しています。

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