歴史学者ハラリ氏が語るコロナの危険性と“未来”[2021/11/12 23:30]

イスラエル、ヘブライ大学の歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ教授(45)は、世界で最も影響力のある知識人とも称され、マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏や、Facebook創業者(現Meta)のマーク・ザッカーバーグ氏もファンと公言しています。

マーク・ザッカーバーグ氏:「ハラリさんの功績のほとんどには、非常に興味深い未来への重要な洞察と質問が含まれています」

人類の歴史を原始時代から紐解いた『サピエンス全史』は、全世界で2100万部も売れ、今週に発売された漫画版も人気を集めています。

人類の歴史を見つめ続けたハラリ教授は今、どんな未来を見ているのでしょうか。独占インタビューです。

(Q.歴史学者という立場から、コロナをどのように捉えていますか)

ハラリ教授:「伝染病は、人類の歴史において目新しくはありません。今では、ウイルスをどのように克服できるのか分かっています」

ハラリ教授が言うように、歴史的にみれば、感染症は珍しくありません。しかし、人類はワクチンや治療法などを時代とともに開発。その情報をグローバルで共有し、世界で感染症を克服してきました。

しかし、今回のコロナでは。

ハラリ教授:「パンデミック発生から2年経った今でも、世界規模でパンデミックを阻止する方法や経済回復への対応など、グローバルな行動計画がありません。協力しなくて大丈夫だと思ってしまったら、その後は、より自己中心的なり、人類はこの先、戦争と競争だけになってしまいます」

ハラリ教授がコロナ禍で感じたのは、世界が今、抱える危険性。一つが“自分だけはという利己的な考え”そして、もう一つが“監視社会”です。

ハラリ教授:「人間は往々にして怠け者なので、極端な選択にひかれます。バランスを見つけるより、極端な選択の方が簡単だからです。独裁者はよく国民に対し、二者択一を提示します。『健康を選ぶか、プライバシーや自由を選ぶのか。両方を選ぶことはできない』と。これは間違っています」

ハラリ教授が住むイスラエルは、対テロの技術を転用することで、感染者の携帯電話の通信情報や、クレジットカードの利用記録などから位置を追跡するなど、強力な監視システムを構築しました。

ハラリ教授が危惧するのは、コロナ禍で加速した監視社会が、さらに進むことです。

ハラリ教授:「今は歴史上初めて、テクノロジーが、誰と会い、どこに行くのかという人の“行動の監視”だけではなく、体の内側に入り込み、感情や思考まで監視します。これは独裁者が常に夢見ていたことです」

今までの監視は、カメラやネット履歴など“体の外側”からでした。しかし、時計などのウェアラブル端末で、脈や血圧などの健康情報を得ることが、当たり前となった現代。“体の内側からの監視”も行われるようになるといいます。

そして、近い将来、体の内部情報が、感情をどう抱いているのかさえ分かる“感情の監視時代”が訪れると、ハラリ教授は考えています。

ハラリ教授:「今のコンピューターテクノロジーなら、人間よりうまく感情のシグナルを分析できるでしょう。私が同性愛者だと気付いたのは、とても遅く、21歳の時です。人は往々にして、自分に関する重要なことに気付きません。しかし近い将来、私たちよりも先に、テクノロジーが私たちを知るかもしれません。今でも同性愛を犯罪とみなす国があります。本人が気付く前に、テクノロジーが同性愛者だと特定できるようになると、どういうことが起きるのでしょうか。監視システムは、人類史上最悪の独裁政権を築く可能性があります」

コロナ禍により、岐路に立たされている人類。歴史学者のハラリ教授が見る未来とは。

(Q.もしハラリさんが歴史の教科書を作るとしたら、コロナの時代をどんなふうに書きますか)

ハラリ教授:「『選択の時代』と書きます。今、人類は甚大な危機に直面し、難しい決断を下さなければなりません。それでも私たちには、まだ力がありますし、政府機関が存在します。対立を選ぶのか、あるいは協力を選ぶのか。今後、数カ月、あるいは数年後の私たちの選択によって、どのような未来を私たちや子孫が享受できるのかが決まります」

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