南ア発航空便で「オミクロン株」確認…搭乗客語る[2021/11/28 21:13]

世界で相次いで確認されている「オミクロン株」の感染。オランダでは南アフリカから帰国した61人がコロナ陽性と判明し、オランダの保健当局が分析を急いでいます。番組では、当時の緊迫した機内の状況を搭乗客に聞くことができました。

▽“陽性61人”乗客語る…緊迫の機内
(ジャーナリスト ポーラ・ジマーマンさん)
「しばらく機内から降りられないことが分かりました。機内食も出ないし、トイレだけが使える状態です」
緊迫した機内の状況を語る、女性ジャーナリスト。
彼女は26日、61人の乗客が新型コロナに感染していた南アフリカ発の2便のうちの1便に搭乗していました。
(ジャーナリスト ポーラ・ジマーマンさん)
「飛行機が滑走路に停止した後、しばらくしてアナウンスが突然ありました。『乗客の皆さんを降機させることはできない』と。理由は変異ウイルスの対策でした」
(機長アナウンス)「ヨハネスブルグ並びにケープタウンからの乗客は、オランダへの入国にあたって、行動制限が命じられます。皆さん疑問があるのは分かりますが、私自身も分からないことばかりです」
彼女らは、駐機場で搭乗したまま、およそ4時間待たされたのち、ターミナルでPCR検査を受けます。
(ジャーナリスト ポーラ・ジマーマンさん)
「みんな検査の順番を持っている。ソーシャルディスタンスは守られてないわ。一番ショックだったのは陽性と陰性の乗客を徹底隔離していなかったことです。人の流れの管理や誘導の仕方はひどいものでした」
陰性と判明したポーラさんが解放されたのは、着陸からおよそ17時間後。
陽性となった61人が、新たな変異株『オミクロン株』に感染していないか、分析を急いでいます。
(ジャーナリスト ポーラ・ジマーマンさん)
「私の便では30人の陽性患者を出しました。でもオミクロンだとしたら、感染者とかなり近い距離にいたことになるので接種したワクチンの効果に期待するしかありません」

デルタ株と同じく“懸念される変異株”に指定された『オミクロン株』。
新たに2人の感染者が出たイギリスをはじめ、これまでドイツやベルギーなど9カ国、92人への感染が報告されています。オミクロン株の存在を最初に報告した南アフリカは今、どうなっているのか。

(現地コーディネーター 豊崎健太郎さん)「いま南アフリカで、有名なリゾート地キャンプスベイに来ています。一時期のコロナの時に比べればお客さんは戻ってきています。」
現在、観光シーズンを迎えている「ケープタウン」。街では、マスクをしている人もまばらです。
コロナ前には、年間1300万人以上の観光客が訪れていました。
街には、水際対策の強化などで帰国できない観光客がとり残されていました。
(オーストリアからの観光客)「なるべく早く帰国便に乗ろうとしていますが簡単ではありません。」
(スウェーデンからの観光客)「変異株は怖くありません。それより家に帰れなくなるのが怖いです」
影響は地元の人にも…
こちらは、日本へ英語を教えに行くはずだったということですが。
(日本に行く予定だった南アフリカ人)「(仕事で)日本に行くため準備していたが行けなくなりました。南アフリカは新たな変異株を早く見つけたのに世界中の偏見から入国禁止になっているので不満です」
南アフリカでは8月以降、新規感染者は減少の一途を辿り、ロックダウンも解除されていました。しかし、ここにきて感染者が急増。27日には、3220人に達しました。
わずか数日の間に起きた感染拡大。こうした情報は、地方にも伝わっているのでしょうか?向かったのは、ケープタウン外れの貧困地区。アパルトヘイトのなごりを色濃く残す、町の一つです。
市街地に比べると、治安の心配もあるこのエリア。取材をはじめようとすると…。
突然、撮影を止められます。
取材を許されると…そこでは、大勢が路上でお酒を酌み交わし、ほろ酔い状態。
実はこの日は、地区の成人式のセレモニー。
1軒の家にお邪魔すると…溢れんばかりの人々がマスクも無しに、歌い踊ってパーティーを開いていました。
(地元の南アフリカ人)「研究に関わっていない南アフリカ人は、影響についてまだ分かってないのです。」
しかし、懸念されるのは、オミクロン株の置き換わりの速さです。
イギリスの「フィナンシャル・タイムズ」が解析したデータによると、感染力が強いとされていた『デルタ株』が80%置き換わるのに、およそ75日間必要だったのに対し『オミクロン株』の場合、その1/5に相する15日余り。
(南アフリカの感染症専門家 リチャード・レッセルズ氏)「いま変異株は、ハウテン州だけで検出されているますが、これは、その州で集中的に解析を行っているからです。実際は多くの州で似たような兆候があり、変異株が南アフリカ全土に広く蔓延している恐れがあるのです」

▽懸念される脅威…「置き換わる」速さ
オミクロン株は、これまでに類を見ない程、多くの変異がありました。
国立感染症研究所によると、オミクロン株は、感染に関わるウイルスの突起部分に32カ所の変異が起きており、細胞へ侵入しやすい可能性があるとしています。
元・南アフリカ政府のコロナ対策の最高顧問は…
(南ア政府の感染症対策を指導 サリム・アブドル・カリム教授)
「変異の数が増えたから、その感染力は未知数です。しかし、変異の場所をみると免疫を回避し、ブレークスルー感染の恐れもあります。今は南アフリカの感染拡大の抑え込みと感染地域の分析が重要です。そうしないと、この変異株はあっという間に拡大するでしょう」

こうしたなか、日本政府は…
「(待機措置は)南アフリカをはじめとする6カ国に加えてモザンビーク、マラウイ、ザンビア、この3カ国を加えた9カ国」
これまで6カ国だった入国者の措置を、28日の午前0時から9カ国に拡大―。10日間の待機を義務付けました。
一方、オミクロン株の国内検出について「確認されていない」と語る政府に対し、ゲノム研究の第一人者は警鐘を鳴らします。
(林崎良英博士)
「潜伏期間があるんですよね、結構ね。無症状感染者でウイルスを出してる人は検査でつかまるかもしれませんけど、無症状でウイルスも出してない人がこれから出てくるというのは。ある程度ありますよね。かいくぐるものがでてくるでしょ。いったん入っちゃうと、早晩そうなんのかもしれませんけどね」


11月28日『サンデーステーション』より

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