世界のコロナ死者、実は3倍 一方、日本は…超過死亡の数字から見る「日本のコロナ」[2022/05/07 20:45]
「新型コロナウイルスの影響で亡くなった人は、実は3倍も多かった」。
WHO(世界保健機関)は5日、そんなレポートを発表しました。
2020年と2021年の2年間に直接的または間接的にコロナの影響で亡くなったのは、実に1490万人にのぼったとみられると記されています。
その期間に、コロナによる死者として世界で報告されたのは約540万人。
実際にはその2.8倍の人がコロナの影響で亡くなっていたということになります。
これは「超過死亡」として、実際に亡くなった人の数と、過去のデータをもとにコロナがなかった場合に予想される死者数との差で計算されました。
WHOはこの「隠れたコロナ死」について、コロナの感染拡大で医療体制がひっ迫したため、ほかの病気の予防や治療に影響が出たことを一因として指摘しています。
また、コロナと診断されないまま亡くなった人たちも含まれていると考えられます。
各国の超過死亡を見てみると、インドは474万人、アメリカは93万人、ブラジルは68万人、ドイツは19万人などとなっています。
では、日本はどうだったのでしょうか。
期間中、超過死亡が最も多かった月はちょうど1年前、2021年5月で5081人となっています。
当時は東京や大阪で緊急事態宣言が出されていました。ただ期間全体では、マイナス1万9471人。
マイナスというのは、予想されたよりも実際の死者が少なかったことを意味します。
粗く言えば、日本ではコロナの感染拡大の結果、予想より死者が減ったということです。
なぜ、そういうことが起こるのでしょうか。
WHOはその要因として、コロナ対策として強化された衛生対策が、コロナ以外の病気による死を防いだことを挙げています。
ソーシャルディスタンス、マスク着用、手指の消毒などの対策が考えられます。
たとえば日本ではインフルエンザ患者の顕著な減少が見られました。
国立感染症研究所によると、2020/2021シーズンのインフルエンザの受診者の推計値は1.4万人で、前シーズン(728.9万人)、前々シーズン(1200.5万人)に比べ、大きく減っています。
また社会活動が抑えられたことなどで、交通事故の死者も減りました。
警察庁によると、コロナ前の2019年は3215人でしたが、2021年には2636人となっています。
もちろん日本も影響がなかったわけではありません。
2021年は男女とも60代以上で超過死亡はプラスになっていて、コロナが高齢者に大きな影響をもたらしたことがわかります。
厚労省によると、日本では昨年末までに1万8000人以上がコロナで亡くなりました。
一方、近隣諸国を見ると、ゼロコロナ政策を進める中国がマイナス5万2063人、北朝鮮もマイナス7098人となっています。
徹底した水際対策を取ったニュージーランドはマイナス2677人でした。
厳しいコロナ対策には賛否がありますが、「命を守る」という意味ではコロナの予防のみならず、一定の効果があったと言えるでしょう。
ANNパリ支局長・金指光宏