中国にコロナ“第2波”迫り来る実感 ついに自分も感染 6月末に週6500万人の予測も[2023/06/01 07:00]

中国便り10号
ANN中国総局長 冨坂範明 2023年05月

中国で最近、よく聞く言葉がある。「二陽(アーヤン)」という言葉で、新型コロナ検査で「2回目に陽性になる」という意味だ。
また、「第2波」という単語も、ニュースで見かけることが多くなった。「ゼロコロナ政策」からの転換期、去年の終わりから今年の初めに発生した感染の大爆発を「第1波」として、再びコロナ感染の波が来るのでは?という懸念が、いま中国で高まっている。

これまで感染していなかった私もついに、コロナ検査で陽性となってしまった。移動制限が大幅に緩和され、これから海外へも多くの中国人が移動するとみられる中、再びコロナの大感染が、中国で起きるのだろうか?

■西安から帰任の翌日 感じた違和感

5月中旬、私は中国西部の西安市に出張し、今年初めて開催された「中国=中央アジアサミット」を取材した。
3泊4日の出張から帰ってきたのは、20日の土曜日。その日は夜に北京の支局から情報番組の生中継をしたが、体調は普段通りだった。
しかし、翌日の日曜の朝、同僚との打ち合わせを終えたあたりから、体調が少しおかしくなってきた。喉に「ざらざらした違和感」を感じ始めたのだ。
「もしかして…」

慌てて支局に戻り、ストックしてあった抗原検査キットを試してみる。
「間違いであってくれ…」
心の叫びもむなしく、検査薬には、濃い2本の線が記されていた。まぎれもない、コロナ陽性だ。

西安では最高指導者の習近平氏と同じ空間で取材するとあって、何度もPCR検査を受けた。その時は陰性だったので、タイミングとしては、帰りの飛行機で感染したのかもしれない。1月にゼロコロナ政策が終わり、航空機のマスク着用は義務ではなくなった。また、出張中は原稿執筆などで睡眠時間が少なかったため、免疫力が落ちていたのかもしれない。

■コロナ慣れのフロント「困ったら言ってください」

陽性が判明した以上、まずは感染拡大を防止することが大切だ。出張から帰った後に会った人たちに連絡を取り、抗原検査を受けるように勧めた。また、支局からは一刻も早く出なければならない。ウィルスをばらまくことになるからだ。
家にたどり着いたころは、ますます体調が悪くなり、昼なのに悪寒を感じ始めた。

体温を測ったら、38℃台の後半だった。まずは自宅マンションのフロントに電話して、感染したことを告げる。
ゼロコロナ政策当時であれば、大変な騒ぎになっていただろうが、今はコロナといっても普通の病気。フロントの人も慣れたものだ。
「ゴミは部屋の前に出してください。あと、出前とか買い物を頼んだら、部屋の前までお届けします。困ったことがあったら言ってください」
一人暮らしの身には、なんともありがたい申し出だ。
その日は力尽き、昼だったが、そのまま解熱剤を飲んで眠った。

目が覚めたら、真夜中の1時。ますます喉は痛くなり、咳も出始め、眠るのもままならなくなった。あとはひたすら、解熱剤を飲んで横になることの繰り返し
私の場合は、幸いなことに、熱や咳は2日程度で収まった。しかし、大変だったのは、なかなか陰性にならなかったことだ。

■外出はし放題だが… 陰性にならずもどかしい毎日

ゼロコロナ政策が終わって以降、中国では陽性者の出勤についてのはっきりした決まりはない。症状が治まったら、出勤しても良いのだろうが、やはり基礎疾患のある人や、高齢者に感染させるリスクを考え、陰性になるまでは自宅静養を続けることとした。
そのため、夜と朝の抗原検査を日課としたが、濃い線が毎日出続けて、もどかしい思いばかりが募っていった。
思えばゼロコロナ政策が続いていた時代は、店に行くにもタクシーに乗るにも、陰性証明のアプリが必要だったが、今は陽性でもどこでも行き放題だ。医療機関への報告もいらない。まさに、自己申告に任されている状態で、変われば変わるものだと痛感する。

ただ、7日に及んだ長期静養のおかげで、自分の仕事をゆっくり振り返る時間が取れたのは、“けがの功名”だったのかもしれない。また、部屋から窓の外を見ていると、普段は気づかない色々な発見もあった。隣のホテルでは、雨の中にもかかわらず、結婚式のパーティーが行われていた。屋外なので、多くの人がノーマスクだったのは気になったが、幸せなそうな雰囲気に、こちらも癒された。
また、炊飯器を買って、自炊を始めることにも挑戦した。と言っても、おかゆを作るくらいだが、私にとっては、大きな一歩だ。何はともあれ、一週間が過ぎたころ、ようやく抗原検査の2本線は、1本線となり、仕事に復帰できることとなった。

■“第2波”への備えを 専門家「週に6500万人感染も」

思えば去年の8月に赴任した時は、ゼロコロナ政策の真っ最中だった。そこから10月の党大会、11月の白紙運動を経て、12月に一気にコロナの感染爆発が起きた。懸念されていた変異株の発生はなく、中国はコロナに「歴史的な大勝利」を収めたとアピールしている。しかし、まだ油断は禁物だろう。
今回、コロナに感染して気づいたことだが、いま中国では、新型コロナの陽性者が明らかに増えてきているのだ。
支局スタッフの家族、上海の同僚、同じマンションの住人、大使館の知り合い、多くの人が、同じようなタイミングでコロナに感染していた。

冒頭で、「二陽(アーヤン)」という言葉をよく聞くと書いたが、私の場合は1度目なので「首陽(ショウヤン)」などという。2度目の人は、1度目の人より症状が軽く、回復も早いようだが、それでも大変だという声は多い。

中国政府のコロナ専門家チームを率い、国民からの信頼も厚い感染症の専門家、鍾南山氏は、5月22日に開かれたフォーラムで、「6月末に第2波のピークがくる」として、週におよそ6500万人の感染者が出るという予測を発表した。日本の人口のおよそ半分で、とてつもない数の感染者数だ。
ゼロコロナ政策は終わったが、コロナウィルスが無くなったわけではない。今後もコロナとの付き合い方を、模索していく日々は続いていくだろう。

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