“火山国”日本にも教訓「数日以内噴火」未明の迅速避難を支えたアイスランドの心構え
[2023/11/18 18:00]
遥か先まで続く黒い台地と吹き上がる白煙。
火山岩の台地を貫く道路を走る車窓から眺めていると、ここが「火山の島」なんだということを改めて実感する。
(レイキャビック・醍醐穣)
■全住民4000人が短時間で避難
アイスランド南西部で火山が噴火する可能性が高まり、現地取材のため急遽アイスランド入りした。首都レイキャビックから南西約40キロメートルにある港町グリンダビークでは、地震が頻発、道路の陥没も各所で発生し住民約4000人が避難する事態となっている。
地元メディアは、このような集落全体が避難する事態は、50年前の1973年にヘイマエイ島が大噴火した際に島民5000人以上が避難して以来だと報じている。
今回、グリンダビークに避難指示が出されたのは11日の未明だった。にも関わらず、非常に短時間で住民全員の避難が完了したという。
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■「ご飯の食べ方を覚えるように…」■「ご飯の食べ方を覚えるように…」
なぜ迅速に避難できたのか。
アイスランドでは、火山や地震の対策などについて、学校などで学ぶ機会があるのか気になって取材時に利用したタクシードライバーに尋ねてみた。
3人の子を育てたという女性ドライバーは笑いながら、「ミルクの飲み方、ご飯の食べ方を覚えるように親から子どもへと自然と教えて身につくものよ」と話してくれた。
「私たちは火山の上に住んでいて、火山の恩恵も受けながら生活している。地震が起きたら、窓に近づかない、柱に身を寄せる、むやみに外へ出ない…」折に触れて子どもに話すのだという。
アイスランドは、北海道と四国を合わせたほどの面積に、高崎市や長野市の人口とほぼ同じ37万人が住む。世界でも3番目に人口密度の低い国であり、日本と一概に比較できないが、迅速な避難行動の背景には、日頃の心がけによるところが大きいと思った。
■避難先アパートがあっという間に…行政よりも素早い民間サポート
今回の大規模避難に際して感心したのが、民間のサポートの立ち上がりの速さだ。
グリンダビークの住民の避難が始まった同日中に、避難者を支援するためのFacebookページが立ち上がった。現在2万人以上が登録するこのページでは、避難者の要望に対して、市民らが提供できるものを返答するやりとりが活発に行われている。
例えば、グリンダビークから避難した女性が、「私と夫と赤ん坊の3人で、長期滞在できるアパートを探しています」と投稿すると、即座に「私は●●にアパートを持っています。もし関心があれば」との反応がありトントン拍子に入居の話が進んでいく。
このFacebookページで、避難先の住居を見つけた20代の夫婦は、「行政のサービスよりも迅速で、すぐに避難先を見つけることが出来てとても助かった」と話してくれた。
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■取り残されたペットもボランティアが保護■取り残されたペットもボランティアが保護
アイスランドでは、ペットを飼っている人が多い。避難時に自宅に残さざるを得なかったペットを救出して、一時的に保護するボランティアも活躍中だ。
こういったアイスランドの人々の行動や心がけに、同じく「火山と地震の国」に住む我々も見習うことも多いと感じた。
気象当局は、数日内に噴火する可能性が高いとしている。大自然に抗うことはできないが、被害が出来るだけ少なく、避難者が一日も早く元の生活を取り戻せることを願わざるを得ない。