20日(日本時間21日未明)、ドナルド・トランプ氏がアメリカの第47代大統領に就任します。「カナダを51番目の州に」と発言したり、デンマーク領グリーンランド獲得のための武力行使を否定しなかったりと、就任前から注目が高まっています。
就任式はどういったものになるのか、就任後トランプ氏は何をするのか?
名村晃一・テレビ朝日元アメリカ総局長が解説します。
朝、ホワイトハウスでバイデン大統領と次期大統領のトランプ氏が慣例に沿ってお茶を飲みます。バイデン大統領が招待しました。その後、連邦議会に移動し、正午ごろに式がスタートします。副大統領になるJ・D・バンス氏が宣誓した後にトランプ氏が宣誓をして、正式に政権の発足となります。就任式では歌手が国歌を歌うパフォーマンスもあります。そのあと、予定されていた議会からホワイトハウスまで歩くパレードの代わりに、室内で就任を祝う国民に直接あいさつします。
トランプ氏は不倫口止め料を巡る裁判で有罪評決を受けたまま大統領に就任します。有罪評決を受けて大統領になった人物は過去にいません。
通常は就任式に他国の大使が出席するのが慣例ですが、今回は大使の他に大統領や首相を招待しています。現地では、中国の習近平国家主席を招待したという報道がありました。就任式の流れは決まっていますが、誰を呼ぶかという意味ではかなり個性の強い就任式になりそうです。
元大統領のジミー・カーター氏が亡くなり、1月9日にワシントンで国葬が行われました。
バイデン大統領は慣例に従って30日間、ホワイトハウスを含め連邦政府の敷地内にある国旗を半旗にすることを命じました。就任式の20日もホワイトハウスは半旗です。
半旗のままの就任式というのもかなり珍しいです。
トランプ氏は就任式で宣誓後、正式に大統領になったらホワイトハウスに行って半旗をやめるのではないかと思います。連邦議会はトランプ氏に配慮し20日に限って半旗にすることを取りやめています。当日どうなるかということは話題になると思います。
ワシントン市内の道は封鎖されて日常生活とは全く変わります。トランプ氏には2回の暗殺未遂がありましたから、警備は厳重になると思います。ただ、就任式は広く多くの国民に開かれたものです。無料で観覧できる抽選チケットがあります。しかしながら、18日にトランプ氏が当日の寒さを理由に就任式を室内で実施することを命じました。そのため、チケットを持つ多くの人が、宣誓する様子を直接、見ることができなくなりました。
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■バイデン氏がやってきたことを「全部覆す」■バイデン氏がやってきたことを「全部覆す」
基本的にはすべて変わりますね。バイデン氏が今までやったことを全部覆すと思います。初日にどういうものを出すかはわかりませんが、資源開発に関する大統領令を早めに出すなど、象徴的なものは初日にあるかもしれません。
領土に関して初日から何が飛び出すかわかりませんが、宣誓式のあとのスピーチで触れるとか、SNSでの発信とかはあり得る話かなと思います。
ビジネスマンだから、お金の使い方を決めるような提言をするようになるので、相当の影響力は出てくると思います。経済に関連して、外交にも関わる可能性もありますね。マスク氏についてはトランプ氏のかつての仲間たちからも反発が出ているぐらいで、相当世界をかき回す存在になると思います。
直接関税をかけることより、目的のための脅しの材料にしているのではないでしょうか。例えば25%課すとしているメキシコには移民の取り締まりを望んでいます。本当に関税を課していたら物価が高くなるなど、最終的にはアメリカ国民が一番苦しむので、軽々にはできません。ただ実際に関税をかけるのかどうかはその直前にならないと分かりませんね。
1期目のトランプ政権の日本外交と2期目の日本外交、変わるだろうかと言われると大幅に変わることはないと思います。結局、そのときの発言をみないと分からないというのが現実です。
分断が進むアメリカでは新政権への期待は、期待する人と全く期待していない人がくっきりと分かれていますので、アメリカ全体がこうだとは言えません。トランプ氏を支持している人たちは何に期待しているのかというと、トランプ氏の言葉どおりのことを期待しています。
トランプ氏がどこまで本気かわからないところがあるのですが、これまでの発言から考えるとアメリカや世界の将来に心配な点を残してしまうことも起きるのではないかという感じはしますね。
今までは民主主義のルールがあるから、さすがにそれは駄目だよねっていうような意識が国民の間に芽生えていました。リーダーが配慮のない発言をし、「何でもあり」みたいな主張をし続けると、国全体がそういう気持ちになってしまい、民主主義に対する意識はどんどん下がっていきます。やはり権力のある人の意識は国民にとても影響するので、アメリカ国内の民主主義に対する意識がどう変化するのか、非常に気になります。民主主義の危機のような、予期できないぐらい深刻なことがアメリカを揺るがすかもしれません。
(聞き手:テレビ朝日デジタルニュース部 大場美優)