トランプ関税を巡る動きが二転三転しています。
スマートフォンを対象から除外すると決断した舞台裏や、中国との関税戦争の行方についても見ていきます。
■トランプ関税 スマホ除外!?トランプ氏の本音と狙いは
相互関税について、アメリカは4月11日、スマートフォンやパソコンなど電子機器や半導体製造装置を相互関税の対象から除外すると通達しました。
発表前、iPhone(アイフォーン)は、世界に流通している80%は中国で生産されていると推測され、中国への関税が145%になることから、大幅な値上がりが予想されていました。
駆け込み需要もあります。
「関税発動前の値段で買いたかった。1台は自分用で、1台は兄弟のため、2台買った」
アメリカが、スマホを関税の対象から除外したのは、消費者の反発を回避する狙いがあるとみられています。
トランプ大統領は、相互関税の対象から除外するとしたスマートフォンなどの電子機器について、4月13日、自身のSNSに
「不公正な貿易や非関税障壁について責任を免れることはできない」とした上で
「関税の除外など発表していない」と述べ、
スマートフォンなどの電子機器には相互関税とは別の関税を課す考えを明らかにしました。
朝日新聞デジタルによりますと、ラトニック米商務長官は4月13日、米ABCの番組で、トランプ大統領が検討を表明している、半導体関税の対象に含まれる見通しを示し、「1、2 カ月のうちに導入される」と語りました。
トランプ氏は、企業にアメリカ国内での生産を迫るため、半導体や医薬品には個別の関税をかける方針を示していて、ABCによると、ラトニック氏は「我々は必須の製品を、外国に頼るわけにはいかない」などと話したと伝えています。
■突然の方針転換 相互関税停止『テレビ番組』が決断後押し!?
トランプ大統領が相互関税を急遽90日間停止すると発表しました。
その舞台裏を見ていきます。
トランプ大統領は相互関税をわずか13時間で撤回しました。
「報復してこなかった国には関税を90日間停止した。きっと素晴らしい結果が出て、2025年中には想像すらしなかったことが実現するだろう」と発表しました。
相互関税発表後のアメリカの金融市場です。
ダウ平均株価が急落、ドルも急落。
そして米国債の価格も急落しました。
相互関税停止発表の4月9日の朝、トランプ大統領が好みの保守系FOXビジネスのテレビ番組を見ていると、JPモルガン・チェースのダイモンCEOが出演。
高関税政策について景気後退の可能性が高いと警告していました。
「ダイモン氏は番組で良い指摘をしていた」と伝えたということです。
この番組が相互関税を後押ししたとみられています。
想定外の米国債売りについてです。
今回、相互関税発表後、安全な資産にも関わらず、米国債が売られます。
米国債が売られると価格が下がり、金利は上昇します。
これはアメリカの信用度が落ちていることを意味しています。
この時、米国債の長期金利は一時、4.5%を超えるまで上昇していました。
金利が上がるとどうなるのでしょうか。
国債の金利はローンの金利と連動しているといいます。
ローンの金利が上昇するということは、国民が利用している住宅ローンやカードローンなどの支払額が増えます。
結果、国民の消費活動が冷え込んでいきます。
アメリカはローン社会です。
中丸前ANNアメリカ総局長によると、アメリカではカードローンを使って様々な消費活動をとるのが一般的だということです。
金利が上昇すると、トランプ大統領の支持層である労働者層にダメージが大きくなります。
金利の上昇は減税政策の危機も招きます。
中丸前ANNアメリカ総局長によると、金利が上昇すると消費活動の冷え込みなどで歳入(税収)が減ります。
さらに国債を返す際の金利が上がっているので、歳出も増加します。
すると、トランプ大統領肝いりの減税政策などが遂行できなくなる可能性が出てくるということです。
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■米国債急落なぜ?SNSでは『中国からの報復』説も■米国債急落なぜ?SNSでは『中国からの報復』説も
なぜ米国債の価格が急落したのでしょうか。
米国債の保有国です。
1位は日本で約154兆9728億円、
2位は中国で約109兆2423億円、
3位はイギリスで約106兆2834億円
となっています。
米国債の下落に、中国からの報復ではないかという話も出ています。
「中国が米10年債を500億ドル(約7兆3000億円)分売ってアメリカに対抗した」と根拠不明の投稿が拡散されています。
「現時点で明らかになっていないが、中国は米国債の保有比率を下げている。米国債の価格が下がるとアメリカの信頼が下がり、相対的に中国は有利になると考えている」
■米中『関税戦争』エスカレート「今後は無視」中国の本音は…
アメリカと中国は関税の応酬です。
アメリカが4月2日、34%の相互関税を発表すると、
中国は4月4日に、34%の報復関税を発表。
すると、アメリカは4月8日に、84%に引き上げ。
これに対し、中国は4月9日に、84%に引き上げます。
さらに、アメリカは4月9日に125%に引き上げます。
3月までに発動済みの20%の関税と合わせて、145%の関税です。
その後、4月11日、中国は125%に引き上げを発表しました。
「なんらかの良い結果が中国から得られるだろう。何が起きるか見てみよう。中国は大きく偉大で、習主席はとても偉大で賢い指導者だ」
「現在の関税では、中国でアメリカ製品が市場に受け入れられる可能性はゼロだ。今後アメリカが関税を引き上げても、中国は無視するだろう」として、今後、関税戦争に応じない考えを示しました。
中国の動きです。
習近平国家主席は、4月14日から、ベトナム、マレーシア、カンボジアを相次いで訪問予定です。
「『自由貿易を守る』と大義を掲げ、味方になる国を増やそうとしたが、アメリカが中国以外の追加関税を停止したのは誤算。各国が交渉にかじを切り、中国だけがダメージを受けかねない。交渉に持ち込みたいのが本音」
■対中国145%関税発動でアメリカ生活どうなる?
中国への関税は145%で、価格に転嫁された場合、どうなるのでしょうか。
ニューヨークのスーパーで売られている豆板醤(とうばんじゃん)。
現在の価格は658円ですが、関税145%が価格に転嫁されると1612円です。
干しシイタケは、現在の価格は1290円ですが、関税145%が価格に転嫁されると3160円です。
「今週の輸入分は関税を上乗せして売らないといけない。店がつぶれてしまう」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年4月14日放送分より)