連日トランプ大統領の関税が大きなニュースとなっています。
色々な数値が飛び交ったり、急に猶予期間が出来たり、と意味が解らなくなっている方も多いと思います。今回は基礎の基礎から解説してまいりましょう。
【そもそも関税って何のため?】
皆さんは関税とは一体何のためのものか説明できますか?
関税とは「自国の産業を守るために外国から商品を輸入するとき、その商品に税金をかける」というもの。自国の産業を守るための税金ですから、外国の企業に税金を支払わせるものなのか?と思う方もいるかもしれません。でも関税を支払うのは「輸入した業者・個人」です。つまり、アメリカが日本から輸入される車に関税をかけた場合、「輸入したアメリカの会社」が「アメリカ政府」に収めることになります。
じゃあ、例えば車に関税をかけられても日本は困らないじゃない?というとそうでありません。関税をかけられると基本、値段がその分上がります。もしアメリカ製の車の方が安くなってしまったら、日本の車は売れなくなるかもしれません。性能のいい日本車のかわりにアメリカ車を買う人はそんなにいないかもしれませんが、「とりあえず今は高いからやめておこう」と買い控えが起こる可能性は十分にあります。
でも近年はEUだったりTPPだったり、と「関税はなくしていこう」という流れになっていますよね?関税によって国内産業が受けるメリットよりも、海外の大きな市場を確保できる方がメリットが大きい、という考え方が今世界では主流なんです。そんな中、今回のトランプ大統領の施策は完全に流れに逆行する形です。
では今回の「トランプ関税」を具体的に見ていきましょう。
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【自動車に25%の関税!?】【自動車に25%の関税!?】
トランプ大統領が日本にかけてきている関税は2種類あります。1つは自動車、鉄鋼、アルミにかけてきた、品目別の25%です。
日本に一番大きな影響があると言われる自動車には、これまで乗用車に2.5%、トラックには25%の関税がかけられていました。そこにトランプ大統領の関税によって更に25%が追加でかけられることになったのです。
その結果乗用車は27.5%、トラックには50%の関税がかかることになりました。
これはかなりの金額です。もしそのまま価格に上乗せされるとすると、これまで400万円で売られていた乗用車が約500万円に値上がりしてしまいます。
トランプ大統領にしてみれば、とにかくアメリカの車を買ってほしいわけです。「日本の車が値上がりすればもっとアメリカの車が売れるに違いない」という狙いがあると言われています。そしてもう一つ、アメリカで日本車を売りたければアメリカの工場で作れ、ということです。そうすればアメリカの雇用が増える、と考えているわけですね。
自動車産業は大変裾野が広い、という言い方をよくされます。車を作るとき、その材料となる鉄やガラス、さらには電子部品まで何百万人もの人が自動車に関わっています。ですから日本にとっては車の売れ行きが悪くなる、というのは死活問題なんですね。
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【相互関税って何?】【相互関税って何?】
トランプ大統領はこの品目別の関税以外に、もう一つ「相互関税」もかけると言っています。よく「24%」という数字とともに語られている方の関税です。
これは自動車や鉄鋼、アルミ以外のものにかけられる予定です。すでにかけられているはずが「予定」、と言っているのはトランプ大統領が一部について90日間の猶予期間を設けたためです。自動車の方は既に25%かけられていますが、こちらの関税は今は猶予期間です。
この相互関税はアメリカに輸出しているすべての国にかけられています。基本税率として10%。そしてアメリカが貿易赤字になっている国、つまりアメリカが輸出している金額よりも輸入している金額の方が多くなっている国についてはさらに追加に関税がかけられています。日本についてもアメリカは赤字なので、10%に追加で14%。合計24%がかけられることになっていて、そのうち14%が今一部の国を除いて猶予期間となっています。
でもこの日本の「24%」という数字、どうやって算出されたと思いますか?
その計算式が発表されたのですが、「こんな単純な計算式で出るはずがない」「デタラメだ」と大不評でした。トランプ大統領が急に90日間の「猶予期間」を設けたのも、あまりに評判が悪く、アメリカ国債が売られた結果、ドルが大幅に値下がりしたからとみられています。
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【日本への影響は?】【日本への影響は?】
株価が下がっているのはアメリカだけではありません。日本の株価も今大きく下げています。日によって大きく上がったり下がったり。まさにトランプ大統領の発言によって世界の経済は大きく左右されているんです。
そして円高も進んでいます。円高で輸出産業はさらに厳しい状況になる、そんな可能性もあるんです。
トランプ大統領がそもそもなぜこんな関税をかけてきたかというと、交渉材料として使いたいから、という側面があると言われています。日本に対してはこの関税という武器で農産物やアメリカの車をもっと買え!防衛費をもっと出せ!など要求してくる可能性があります。果たして日本はトランプ大統領とどんなディールができるのか、これからのニュースに注目していきましょう。
(池上彰のニュースそうだったのか!!4月12日OAより)