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2025年2月8日 21:00

【池上解説】本気?それとも??トランプ大統領過激発言の意味とは

2025年2月8日 21:00

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トランプ氏がアメリカの大統領に就任してから約3週間が経ちました。
「グリーンランドを買う!」「パナマ運河を取り戻す!」「関税の引き上げる!」など、トランプ大統領の発言が連日ニュースとなっていますね。果たしてこうした発言は「本気」なんでしょうか、それともお得意の「取引」なのでしょうか。トランプ大統領の発言の狙いを解説してまいりましょう。

■「グリーンランドを購入する!」

実はこの発言、最近言い出したことではありません。トランプ大統領は1期目から言っていたんです。それだけグリーンランドを重要視していた、ということです。
ではそもそもグリーンランドとはどういう場所でしょうか。地図で見るとアイスランドの隣、カナダの北東に位置する島です。

地図

面積は日本の約6倍で、人口は5万7000人ほど。大部分が北極圏でとても寒く、年中雪に覆われています。ここはデンマークの自治領ですが、独自の政府と議会を持っています。でもそんな雪の大地がなぜ「グリーンランド」、緑の大地と呼ばれているのかご存知でしょうか?

実はグリーンランドの前に発見されたのが、アイスランドでした。同じく寒いこの島を「アイスランド」と名付けたところ、「いかにも寒そう」「氷の島なんて行きたくない」という声が続出して人気がなかったそうなんです。そこで次に島を発見した時に「グリーンランドにしたら人が来るのでは??」と名付けられたと言われています。(諸説あります)そんな極寒の島をトランプ大統領は購入したい、と言っているわけです。一体なぜでしょうか。

まずはアメリカの安全保障の問題、と言われています。北極を中心とした地図を見てみると、グリーンランドは丁度アメリカとロシアの真ん中にきます。

地図

特に冷戦時代などソ連(今のロシア)からアメリカにミサイルが飛んでくる可能性もあったわけです。その場合はグリーンランドの上を通ることになります。そこでグリーンランドにはアメリカ軍の基地があり、ミサイルのための警戒レーダーが配備されているんです。でもトランプ大統領は「基地があるだけでは十分ではない。グリーンランドをアメリカのものとする必要がある」と考えているんです。
対するロシアももちろん北極海での覇権を狙っています。だからこそトランプ大統領はグリーンランドをロシアにとられたら大変!と思っているわけですね。

さらにトランプ大統領が警戒しているのはロシアだけではありません。もう一つ、北極圏を狙っている国があるんです。それが、中国です。中国は中国で「氷上のシルクロード」という構想を持っています。

氷上のシルクロード構想

北極海の氷が溶けだしたことで、従来の南周りの航路ではなく北回りの航路が通航可能となっています。中国にとっては北回りだと航路が短くなりますから、時間的にもコスト的にもメリットがある、というわけです。この航路をなんとか自分の思い通りに使いたい、中国はそう考えているのです。

それだけではありません。グリーンランドは精密機器に欠かせない、レアアースなどの地下資源が豊富とにあります。中国は既にグリーンランドのレアアース採掘に向けて莫大な投資を始めています。トランプ大統領は北極圏で影響力を強めようとしている中国をけん制したい、そんな狙いもあると言われています。

トランプ大統領はグリーンランドの購入に前向きですが、デンマーク政府は「グリーンランドは売りものじゃない!」と反発しています。実際に購入は難しいかもしれません。でも今後、住民たちの動きによってはアメリカ寄りの政策を取っていく可能性はあります。これからトランプ大統領がどんな手をうってくるのか、注目してみてください。

■パナマ運河を取り戻す!

トランプ大統領

トランプ大統領はパナマ運河を取り戻す!とも発言しています。まずそもそもパナマ運河とはなにかから解説しましょう。

パナマ運河は北アメリカと南アメリカの間、大西洋と太平洋をつなぐ水路です。

パナマ運河

ここを連日多くの船が荷物などを運ぶために通っています。世界中のほとんどの船はパナマ運河の幅に合わせて作られているほどです。もしパナマ運河使わない場合はぐるっと南回り、南米の最南端、ドレーク海峡を通っていくことになります。でも、このドレーク海峡は船にとって難所中の難所。一年中海が荒れていて、なかなか通ることはできないのです。そこでなんとか安全に大西洋と太平洋を行き来できるように、とアメリカがパナマをコロンビアから半ば無理矢理独立をさせて、作ったのがパナマ運河です。完成後そのままアメリカが80年以上パナマ運河を管理していました。でもパナマで「運河を返してほしい」という声が高まり、1999年には返還していました。そんなパナマ運河をトランプ大統領は再び取り戻そうとしているんです。

トランプ大統領が取り戻したい、と言っている理由の一つは通航料の高さです。今パナマ運河を通航できる最大の貨物船が一回ここを通るだけで約126万ドル、日本円に直すとおよそ1億8000万円にもなるんです。本当に高いですよね。まさにパナマという国はパナマ運河で成り立っている国、というわけです。パナマ運河をアメリカのものにしてしまえば通航料を払わずに済みます。そこでトランプさんはなんとか手に入れたい、と思っているわけですね。さらにパナマ運河でもあの国が登場します。

そう、中国です。2017年、パナマと中国の間で国交が樹立して以来、中国はパナマへの投資を続けています。そして今では運河の入り口と出口、両側の港を管理しているのは香港系の会社です。トランプさんからするとこれはなんとかしたい、このままパナマ運河が中国の影響下に置かれたらたまったもんじゃない、そう考えているんです。パナマ政府は中国の影響はない、としていますし、中国もパナマの主権を尊重する、と言っています。でもトランプさんはなんとかパナマ運河をアメリカのものとして安心したい、というわけです。

池上彰さん

このほかトランプ大統領は「DEI政策をやめる」、「パリ協定から離脱する」など次々と大胆な政策を打ち出しています。自国ファーストというのはもちろんいいんですけど、あまりに近視眼的に目の前だけを見ていていいのか、もっと全体を見ていく中で、自分の国が良くなるためにはどうしたらいいのか、どこの国のリーダーも考えていってほしいと思います。

(池上彰のニュースそうだったのか!!2月8日OAより)