アルバムの総売り上げは1億枚を超え、グラミー賞を17回受賞。ロック界のカリスマ、スティング(73)に、デーブ・スペクターさんが独占インタビュー。
最新アルバムやワールドツアーなど音楽の話はもちろん、ユーモアたっぷりに驚きの実生活を明かしたり、日本への愛を口にしたり、さらに混迷深まる世界情勢まで、デーブさんがスティングの秘めた思いを引き出しました。
■73歳で世界ツアー敢行…スティングが語る原動力
「こんにちは」
「おはよう。パリにいます」
「パリ?マカロンでも食べているんですか?」
「マカロンもありますよ。コーヒーもね。今、朝の9時です」
デーブさんが独占インタビューしたスティングは、1977年結成のロックバンド「ポリス」の元メンバー。1980年代半ばからソロ活動をスタートし、ポリス時代を含め、アルバムの売り上げは1億枚以上。グラミー賞に17回輝き、2003年にはロックの殿堂入りを果たした。
そして現在、新たな3人編成のバンド「スティング3.0」で活動中。去年5月からは、150公演にも及ぶワールドツアーを行っている。
「ツアーも楽しみですよね?」
「楽しみです。楽器同士の明瞭さ、空気感はとても刺激的です。各パートがしっかりしているので、3人だけですが観客には壮大に聞こえるでしょう。正直に言うと、やらないといけないことは増えますが、人生を通じてトレーニングを積んできたので、楽しむことができるし、喜んでチャレンジしています」
チャレンジし続ける73歳の世界的スター。その創作意欲と健康は一向に衰える気配がない。
「そんなに健康で生き生きしている秘訣は何ですか?」
「規律です。すばらしいルーティーンを持ち、いつでも楽しみがあること。人々のアイデアを聞き入れることも大切だと思います」
次のページは
■自ら希望し原爆資料館に足を運んだことも■自ら希望し原爆資料館に足を運んだことも
実はスティングは、超が付くほどの親日家。
「新幹線が大好きです。乗ると12歳の少年に戻ってしまいます。富士山の横を通ると感謝の気持ちになります。古き日本、京都の寺院を訪ねるも好きです」
もちろん、日本の食べ物も。SNSには有名ラーメン店を訪れた姿をアップ。今回のワールドツアーでも、9月の日本での公演も決まっている。
「このツアーはドイツのドレスデンからスタートし、広島でもやりますね」
ドレスデンと広島は、どちらも第2次世界大戦で甚大な被害を受けた場所だ。
実は2000年のツアーで広島を訪れたスティングは自ら希望し、原爆資料館に足を運んだ。また、2023年に行われた日本のツアーでも、初日公演の地に広島を選んだ。
「前回、広島を訪れた時、丘の上の記念碑に行きました。市内を見下ろす景色が広がっていて、1時間ほど、その意義について静かに考える時間をとりました。私たちは広島と長崎が受けた悲惨な苦しみを決して忘れてはなりません」
■「ラシアンズ」の歌詞に込めたメッセージ
スティングは絶えず世界情勢に目を向け、社会的なメッセージを曲に込めてきた。
東西冷戦をテーマに、平和への祈りを託した「ラシアンズ」もその一つだ。
「僕はオッペンハイマーの破壊的な玩具から、どうやって幼い息子を救ったらいいんだろう」
この曲について、スティングはこう話している。
「この曲は書いて以来、めったに歌わなかった。また戦争が起こるわけがないと思っていたから」
しかし2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。その10日後、スティングは再びこの曲を歌った。
「イデオロギーは別として、同じ生体組織を持つ僕らなんだ。僕は心の底から願う、ロシア人も子どもを愛していることを」
「歌詞が今とても意味を持っていますが、情勢は変わりません。絶望した気分になりませんか?」
「我々は生き残らなければなりません。希望こそが、そのために唯一必要なものです」
次のページは
■生前のフランシスコ教皇と交流「彼の死は大きな損失」■生前のフランシスコ教皇と交流「彼の死は大きな損失」
「メッセージが適切な相手に届かないのは、フラストレーションを感じるでしょう。亡くなったローマ教皇はメッセージを伝えるために、できる限りのことをしていました。でも、世界の指導者たちは、耳をふさいでいるかのようです」
平和への祈りを込めた楽曲を数多く世に送り出してきた、スティング。同じく世界平和を願い、各国を飛び回っていた、ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇(当時)とは生前、交流があったという。
「教皇の死はとても悲しかったです。私は教皇に会ったことがありますが、非常に真実味があり、人類を心から心配している人物だと強く感じました。彼の死は大きな損失です」
願いはかなわず、紛争は今も世界各地で絶えることはない。
「あなたが多くの人々と出会う一方で、メッセージが適切な相手に届かないというのは、ある意味でフラストレーションを感じることでしょう」
「世界には本当の問題に対処できる指導者が多くいるとは思えません。私は世界の選ばれたリーダーの何人かには失望しています。民主主義は混沌(こんとん)としていて、時には2歩前進し3歩後退することもあります。しかし、統治社会を実現できる唯一の方法です。独裁はあるべきではありません」
国際的な問題について真剣に話し合うなか、デーブさんにはどうしてもスティングに聞きたいことがあった。
「フランスの本場のマカロンですね!良いですね。あなたは田舎の家でハチを飼っていて、実際に刺された(刺す=スティング)と言っていましたが、本当ですか?」
「はい。ある日、巣箱に近づいたら、頭のてっぺんの“ツボ”の所を刺され、全身のシステムが活性化しました。死んでいたかもしれませんが…」
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年5月9日放送分より)