参院選を控える今年は、国連が「国際女性デー」を定めて50年を迎える年でもある。
その節目を前に、永田町では「クオータ制を推進する会(Qの会)」による集会が開かれた。クオータ(quota)とは「割り当て」を意味し、政治においては、女性の議席を一定数確保する制度を指す。男女雇用機会均等法の制定に尽力した故・赤松良子さんが、2012年に立ち上げた会だ。
世界経済フォーラムが去年(2024年)に発表した「ジェンダーギャップレポート」によると、日本の政治分野の順位は、146カ国中113位。政界では現在、女性の政治参画の状況はどう捉えられているのか。女性議員を増やすためにどんなことが取り組まれているのか。6日に開かれたQの会の院内集会で、各政党の代表者が語った。
(テレビ朝日デジタルニュース部 大見謝華奈子)
■政党助成金の増減 比例上位に女性…各政党の取り組みと方針は
集会では、今年の参院選での女性候補の擁立状況をはじめ、政党助成金のインセンティブに対する考え方や、クオータ制の導入等について、それぞれの政党の現状や見解が述べられた。主な発言をまとめた。
自由民主党 本田顕子 女性局長(都合により欠席のため代読)
(次の参院選では)現時点で22%、女性候補を擁立している。アジェンダの中に、衆議院の比例代表の上位に女性(を処遇する)というのが書き込まれていて、地域の実情を踏まえて判断していきたい。地方議会は大変重要で、女性未来塾特別講座や、女性候補者育成コースなどを地方においても進めている。女性地方議員数は右肩上がりに増えている。
公明党 竹谷とし子 代表代行(都合により欠席のため代読)
衆院選の比例で女性を上位に処遇するというのを前向きに考えたい。候補者男女均等法について、努力義務から義務規定に変更することには賛成。政党助成金が男女比で増減することは有効な方法だと考えている。
立憲民主党 辻元清美 代表代行
(次の参院選で擁立する女性候補割合は)現在、選挙区44.44%、5割まであとちょっと。比例区は33.33%で、合計41.67%。推薦込みで43.24%。前回の参院選では候補者をフィフティ・フィフティにいたしました。衆議院も積極的に女性候補を擁立し、衆議院全女性当選者数73人のうち30人が立憲民主党ということになっております。女性候補を立てれば当選率は高いということは、証明されているんじゃないでしょうか。引き続き、あと一歩で5割ですので頑張ります。
(衆議院の比例の上位に女性を処遇することについて)前回の衆院選で既に実行しました。全部(の地域)ではない。まずやってみようということで北海道ブロックで、1位と2位を女性、一人は元職、一人は新人。北海道ブロックの女性二人が当選しました。結果や反応を見て、今後党内で検討していきたいと考えている。まずやってみるということが大事。衆議院は11ブロックありますので。まずできるところからやってみるということで、今回初めて踏み切りました。
国政選挙におけるクオータ制を導入し、パリテ(男女半々の議会)の実現を目指すと、公約に明記しています。様々な工夫で、まず党内でやれることをということで、(男女)半々の候補者を擁立などをやってきたということで、これからも強力に各党にも働きかけていきたいと思っています。
海外の事例を見ると、いろんな国でインセンティブをつけてクオータの実現を目指している、または実現している。その事例を私たちは相当勉強してきました。これは効果があると。いまクオータ制は 100 か国以上が採用しているわけです。それは、一定の割合の男女がきちんといたほうが良い政治になるから広がっているわけです。立憲民主党では今、(女性議員が少ない場合に)ペナルティとするというよりも、(男女の差が)近づいていたら政党助成金が増えるという、ポジティブ思考のインセンティブがいいのではないかという意見も出ています。
日本維新の会 高木かおりダイバーシティ推進局長
次の参院選での候補者の割合、現時点で男性13、女性2で女性13%ということで、なかなか振るわず、という状況ではございますけれども、政界にチャレンジしていただける女性候補者の発掘に全力で邁進しているところです。
(衆議院の比例の上位に女性を処遇することについて)なかなか党内では議論が進んでいないというのが現状。先の衆院選をふりかえると、候補者164 人中29人(17.7%)。当選者が38人中4名(10.5%)ということで、なかなか振るわない結果でございます。こういうところに風穴を開けていかなければいけないというふうに思っています。
私自身、(候補者均等法の法改正について)努力義務から義務規定へというせめぎあいの議論の中には、実務者として今まで参加してきた経緯がありますが、党としてと申し上げると、「岩盤を突破する」というのがなかなか厳しい状況でございます。個人的にはやっていくべきだと思っております。
国民民主党 円より子 男女共同参画推進本部長
昨年の総選挙では4倍もの人数の衆議院議員を当選させていただきました。その中で、女性候補比率は22%だったんですが、当選した女性は28人中6人。21.4%となりまして、前回の選挙では9%でしたから、大変女性が増えました。今後とも、参議院の方でも、本当だったら 50%を目標にしたいが現実的に、35%の女性当選を獲得したい。
政治の世界は現実的ですから、(女性議員の割合によって)インセンティブをつけて政党助成金を減額するというぐらいのことをしないと、なかなか女性候補は増えないし、当選者も増えないんじゃないかと思っています。
参院選、都議選、地方選に向けて1000人以上の応募が来ていて、その中から女性議員を増やすために頑張っていきたい。
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共産・れいわ・社民の現状と今後の方針は?日本共産党 岩渕友 参院議員
この夏の参院選の女性候補の割合ということですが、現時点で、比例代表で5人の予定候補を発表している。そのうち女性は1人なので、割合でいうと20%。選挙区では18人の予定候補のうち10人が女性なので、割合でいうと55.6%となっています。比例と選挙区の予定候補を合わせた女性の割合でいうと、47.8%ということなので、さらに努力したいと思う。
(衆議院の比例の上位に女性を処遇することについては)賛成。昨年の総選挙では候補者全員が女性というブロックもありました。名簿登載順で、女性候補を1番目にしているというブロックもあった。各党が積極的に、自主的に取り組んでいく必要があるというふうに思っています。
(女性議員の割合によって、政党助成金のインセンティブ等をつけることについて)色々検討する必要があるのかなと思っています。日本共産党は、政党助成金を受け取らずに廃止を求めているということがあって、今国会でも、政治とカネの問題や、企業献金の禁止などいろいろ議論されているわけですけれども。世論調査を見ると政党助成金についても、制度の見直しを求める声というのもどんどん高まってきているというのがあるので、そうしたことを考えても、他のインセンティブを検討していくということがあるのかなと思っています。
日本共産党の地方議会での女性議員の比率は2月1日の時点で41.6%ということなんです。男女50%-50%めざして女性候補の擁立もさらに進めていきたいという風に思っています。
昨日(5日)、年内に策定される第6次男女共同参画基本計画に関わって、国際水準のジェンダー平等を実現しようということで、政府への申し入れを行いました。その中で政治分野を含めて、指導的地位に占める女性の割合の目標を、男女50%-50%に引き上げることということで求めました。その実現に向けて頑張りたいと思っています。ともに頑張りましょう。
れいわ新選組 やはた愛 衆院議員
現時点で、次期参院選での数値目標は特別設けてはいないんですが、当然一人でも多くの女性にも挑戦していただきたいという思いで、全国で「れいわ政治塾」を開催している。その際に興味があるとおっしゃる方の中は、いろんな不安や、実際立候補して家事育児と両立できるのかとか、いろんな女性特有の悩みなどの相談窓口を設けておりますので、引き続き女性の候補の発掘と擁立に努めてまいります。
(衆議院の比例の上位に女性を処遇することについて)私自身個人としては賛成。ただし党内では現在議論中。
政治の世界はもちろんですが、その他、(女性が)意思決定の場に参画する必要があると考える場合、例えば公的機関の各種委員会、審議会の委員とか、大企業の管理職・役員も含めて 50%女性に割り当てるというクオータ制を法制化するというマニフェストを掲げております。
(女性議員の割合によって、政党助成金のインセンティブ等をつけることについて)現在党内では議論中。基本的に議会や選挙制度自体が非常に古く、ステレオタイプだと思いますので、男性的な仕組みであるという視点からは変えていかなきゃいけないと思っております。
地方選挙においては女性候補者の擁立に努めております。オンラインや勉強会、ときにはスカウトしながらというところで、発掘に取り組んでいる。
私は先の衆院選で初めて国会議員になりました。思っていた以上に国会の中が男性社会で本当に驚きました。日本はまだまだ変わらんわと思ってしまったので、本当に女性議員を増やすしかないと決意をいたしましたので、一緒にやってまいりましょう。
社会民主党 大椿ゆうこ 副党首
候補者選定が続いているので、確定した人数ではございませんが、(次の参院選で擁立する候補は)全国比例で 2 人。男女それぞれ 1人。50%ということになります。選挙区で公認が決まっているのが3人。女性がそのうち2人ということで、60%を占めることになります。
現状、社民党はなかなか全国にたくさんの候補者を立てる力がないというところが私たちの課題だと思っていますので、候補者をたくさん立てていけた時には(衆議院の比例の上位への女性の処遇を)実行したい。
比較的、いまパリテに近いところで候補者を擁立できているのかなと思いますけれども、やはりこれだけ浸透している男女差別をなくしていくには、(候補者男女均等法の)努力義務では不十分、そこに頼っている限りはなかなか改善は見られないと思うので、義務規定に変えていくことが必要だと強く思っています。
女性の地方議員の方々が各地で活躍してくれています。やはり社民党がこの間掲げてきた政策、とりわけ人権とか脱原発とか、様々なテーマにおいて、本当に女性たちに共感していただける政策を掲げているというところを強みに、さらに候補者の擁立を進めていく努力をしていきたいと思っています。女性にもっと政治の場で活躍してもらえるように私も力を尽くしていきたいと思います。
女性議員が増えるよう積極的に取り組んでいるという政党がある一方、そうした取り組みへの議論が十分に行えていないとうかがえる党があるなど、政党ごとの状況の違いが垣間見えた。去年(2024年)の衆院選の女性当選者数は、過去最多の73人だった。今年の参院選に注目だ。