インフルと新型コロナ 同時感染で重症化の恐れ[2020/09/15 11:56]

 「インフルエンザとの同時感染で症状が重くなる危険性も」。長年、コロナウイルスを研究してきた専門家は秋から始まるインフルエンザ流行期を前にワクチン接種の重要性を指摘しています。

 東京農工大の水谷哲也教授は、新型コロナウイルスの流行前からコロナウイルスを研究してきた数少ない研究者の一人です。水谷教授によりますと、一般に、1つのウイルスが感染するとインターフェロンなどの免疫作用で2つ目のウイルスは感染しないと考えられていました。

 しかし、中国・武漢の重症患者の50%がインフルエンザにも感染していたとする海外の研究結果が出てきました。この研究によりますと、新型コロナとインフルエンザに同時感染すると全身の免疫が暴走する「サイトカインストーム」が早まり、発生回数も多くなるとみられています。

 新型コロナウイルスは細胞に感染すると細胞内でインターフェロンが作られるのを阻害していることが分かっています。この仕組みがインフルエンザとの同時感染の原因になっているかは分かっていませんが、水谷教授は「秋から始まるインフルエンザの流行期に備えて高齢者を中心に、なるべく多くの人がワクチンを打つことが重要だ」としています。

 また、過去に日本などで新型コロナウイルスに近い未知のウイルスが蔓延(まんえん)し、多くの人に新型コロナへの免疫があるという考え方については否定的です。「仮にそういうウイルスが存在した場合、症状が軽いか無症状のため新型コロナウイルスと同じように短期間で世界中に蔓延しているはずで、日本やアジアだけが防御できることにはならない」としています。

 さらに、新型コロナウイルスの感染を防いでいる未知のウイルスがあるなら新型コロナウイルスの抗体検査で抗体が検出されるはずですが、「日本の抗体保有率は0.1%から3%で、未知のウイルスには感染していないと考えられる」と指摘しています。

 では、なぜ日本の致死率が低いのか。水谷教授は医療機関の頑張りやマスクの着用、手洗い、ソーシャルディスタンスが影響しているとみています。そして、新型コロナ禍の収束には安全で有効なワクチンが鍵になるとしています。

 さらに水谷教授は、“次”を見据えた対策が必要だとも強調します。2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、2012年のMERS(中東呼吸器症候群)、2017年のSADS(ブタ急性下痢症候群)、2019年の新型コロナと新たなコロナウイルスが現れるサイクルが短くなっているからです。

 東京農工大学・水谷哲也教授:「SARSもMERSも国内で感染者を出していないので、対岸の火事のようなところがあった。しかし、今回の新型コロナはまさに我々が経験していて多くの犠牲者を、尊い命を失っているわけなので、ここからは学ばなきゃいけないんです。学んで次の感染症が出た時に、必ず早く対応できるようなシミュレーションが重要だと思います」

 (水谷教授は来月、新型コロナウイルスに関する2冊目の本「新型コロナ超入門」を東京化学同人社から出版予定)

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