「世界のどこかで感染続く限り日本も安全ではない」[2020/10/15 01:24]

 WHO(世界保健機関)で日本や中国、フィリピンなどを担当する葛西健西太平洋地域事務局長は、新型コロナについて「世界のどこかで感染が続く限り、日本も安全ではない」と述べ、すべての国が協力することの重要性を訴えました。

 葛西事務局長は14日、日本記者クラブが主催する記者会見にフィリピンのマニラからWEBを通じて参加しました。日本や中国、フィリピンやオーストラリアなどの西太平洋地域の感染状況について「初期の武漢やマニラなどを除き、大きな感染は抑えられている」と現状を報告しました。

 アメリカやヨーロッパに比べて感染者数が少ない理由については「複数の仮説を持っている」と前置きしたうえで、「保健部門だけでなく政府全体に指揮系統を作り、早い段階で対応するなど感染を抑え込んでいる国には共通の特徴がある」と指摘しました。

 さらに、「生物学的なファクターがあるかもしれないが、今のところ『これだ』というものは見つかっていない」としています。

 日本については、「厳密な意味でのロックダウンなしで感染の流行を抑え込んでいることで世界から非常に注目を集めている」「GoToなど経済再開も試みているほか、自民党の政務調査会や民間のグループが非常に短いタイミングで対応を評価し、提言を出しているのは世界的にも珍しい。こういった提言がしっかり実行に移されると世界の見本になるのでは」と評価しました。

 急ピッチで開発が進むワクチンについては「非常に楽観しているが、抗体の防御力や持続期間、安全性については厳格に対応する必要がある」と強調しました。

 会見で、葛西事務局長が何度も繰り返したのが「世界のどこかで感染が続く限り、日本も安全ではない」という言葉でした。「感染のコントロールにはすべての国が一致して立ち向かうことが大事で、見本となるような対策を日本が国内で試行錯誤しながらも作り上げると同時に、世界で『みんなで一緒にやろう』という場面でリーダーシップを発揮することを期待する」と訴えました。

 そして、新型コロナ後の世界については次のように期待を寄せました。「一人ひとりが感染に気を付けることで家族や同僚や高齢者や地域を守ることができる、自分が健康になることは社会にプラスになるという価値観を生み出せないか」「分裂や対立ではなくデジタルの利用など新しいノーマルを上手に作れば目指したい未来に近付くことができるのではないか」

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