往診医「すでに医療崩壊している」ここ数日で深刻化[2021/08/08 22:30]

病床が逼迫する中、急増する自宅療養者。第5波で初となる自宅療養中の死者も確認されています。

▽東京4066人 「まん延防止」8県追加
(佐々木一真アナウンサー)
「雨が上がりました東京・銀座です。買い物袋をさげた人など多くの人が行き交っている様子です。東京に緊急事態宣言が出されて4週間、ただその効果には疑問の声が上がっています」
「オリンピックはあんなに元気にやっているのに、私たち何もできていないじゃないですか、すごく矛盾を感じているのね。」
「緊急事態を出すくらいだったら、ワクチン早くすれば良かったと思います。」
8月8日、東京の新規感染者は、4066人。5日連続で4000人を超え、感染爆発は止まりません。重症患者は、前日7日から1人増え、151人。
この危機的状況に、小池都知事は…。
(記者)「一言よろしいですか?」
(小池都知事)「これから閉会式なのですみません。」
全国の感染者は、前日の7日まで、3日連続で1万5000人を超え、8日から福島・茨城・栃木・群馬・静岡・愛知・滋賀・熊本の8県が「まん延防止等重点措置」に追加されました。
福島・茨城・栃木・群馬・静岡・愛知・滋賀・熊本

(福島いわき市職員)「酒類の提供は終日、自粛をお願いするということでよろしくお願いします」
今回、初めて適用される福島県。対象となる、いわき市では、職員が酒類の提供の自粛を求めるなど飲食店に協力を呼びかけました。
(いわき市の飲食店)「全然厳しいですね。普通にお店やっていたら潰れるような勢いですね。」

感染爆発の中、迷走したコロナ患者の「入院基準」。政府は2日、中等症でも“重症化リスクの低い患者”は“原則自宅療養”という方針を打ち出しましたが…
(田村憲久厚生労働大臣)「例えば中等症で肺炎の所見があって息苦しいといわれている方はそれはもう当然入院するのは当たり前の話でありまして」
結局、軌道修正に追い込まれ、「中等症は原則入院」となりました。東京の自宅療養者は、8日時点で1万8444人と、1カ月でおよそ18倍になっています。
5日には、50代の女性が自宅療養中に急変し、亡くなりました。

▽訪問診療医 “医療崩壊”訴え
自宅療養者の命綱とも言える“訪問診療”の現場も逼迫しています。
(ひなた在宅クリニック山王 田代和馬院長)「手がちょっと冷たいね、あとちょっと手の色がちょっと紫だけど…」
医師が訪問したのは、都内の40代の男性。
「苦しすぎて、夜中意識がもうろうとしてたっぽいんですよ」
(40代男性)「どうやっていつどうしようかな?、(薬を)飲んでてもぼーっとしている、どうやって飲んで良いのか」
男性は、交通事故で肺の一つを失っているため、一時、血中酸素飽和度が50〜60と、かなり危険な状態でした。
しかし、入院先が見つからず、10日間、自宅療養が続いています。意識が朦朧とし、何が起きているのかよくわからない状態です。
(院長)「今日は何月何日ですか?」
(男性)「8月の…・・」
(院長)「肺炎の音が聞こえるので、早めにちゃんとした大きな病院で診てもらうことが重要だと思います」
医師の診断は、「肺炎による意識障害」。保健所に、緊急入院が必要だと報告すると…
「(入院先)見つかりました。あの後。でも本当にプッシュしてプッシュしてって感じでしたね。ほっとしたのもつかの間、次から次に同じような人が出てくるんで…」

こちらは、往診専門のクリニックですが、今年の2月から、コロナの患者を診るようになりましたが、ここ数日で状況はさらに深刻化しているといいます。
(院長)「この辺でちょっとお願いしますね」
布団に横たわっているのは、80代の女性。容体を診た医師は、家族に…

「お母さんは脱水も深刻で、本当におうちで亡くなるかもしれない。ごめんね。こんな話して、でも、一応保健所にも状態伝えるけれども、場合によっては…という覚悟をしないといけないと思います。」
(家族)「わかりました…」
女性は、夫と共に陽性判定を受けましたが、呼吸困難を訴えていないことから、自宅療養になりました。
「ちょっとチクっとするよ」
食事や飲み物もまともにとれておらず、危険な状態。すぐさま点滴を試みますが…
「血管が、水分取れてないから細くなってるね…。点滴が刺さらないですね…脱水症で。」
(家族)「ここじゃ無理なのかな…」
認知症を患っている女性。呼びかけにもほとんど応じられません。
(院長)「息苦しいとか言います?」
(家族)「認知症だから何も言わない。」
(院長)「入院とかの話は出ないですか?」
(家族)「いや、入院は希望してると。保健所の方にもその他医療機関にも言ってるんですけど」
本来ならすぐに入院となるはずですが…
(院長)「病床の入院ベッドの奪い合いをしているような状況。だから、お母様と同じような方で、若い年齢の方がいたら、私としても、どっちを優先するかと聞かれたらね、なかなかお母さんを優先してと、言えない現実があったりするんです。申し訳ないところだけど…」
(家族)「医者として精一杯やれるところまでをやっていただければ…」
(院長)「それは約束する。」
すぐに医師は保健所に連絡します。
「正直ね、このまま亡くなると思います。入院できるんですかね?」
結局、この時点で入院はできないとの回答でした。医師は、すでに医療崩壊が起きていると訴えます。
「これは、一部の訪問診療医が頑張ったところで到底間に合わない数に今後なっていく。直接的な医療が届かないせいで、家でもがき苦しんで気づいたら亡くなっている人は、本当に急増していくだろう」


8月8日『サンデーステーション』より

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