“外来・注射”で『抗体カクテル』最前線医師の提言[2021/08/20 23:30]

東京都では20日、新たに5405人の新型コロナ感染者が確認されました。3日連続で5000人を超えていて、専門家は災害レベルの非常事態と危機感を示しています。

医療体制は全国的にひっ迫していて、自宅療養の現場も日に日に、悲惨さを増しています。

こうした状況から、どうすれば脱却できるのでしょうか。これまでに600人以上のコロナ患者の治療にあたってきた、日本赤十字社医療センター・出雲雄大医師に話を聞きます。

(Q.日本赤十字社医療センターは今、どんな状況ですか?)

出雲雄大医師:「当センターも重症のICU(集中治療室)10床、中等症用の40床が満床で、退院すればすぐに新たな入院要請が来る状況で、まさにコロナ災害と考えて対応しています」

自宅療養者は、東京だけで2万6000人を超えていて、入院できずに自宅で亡くなるケースも数多く出てきています。

こうした厳しい状況から1人でも多くの患者を救うため、出雲医師は2つの提言があるといいます。


(1)『抗体カクテル治療薬』を“外来”で“皮下注射”

抗体カクテル療法は、2種類の抗体を同時に投与して、ウイルス増殖を防ぐ治療法です。現在は、一部の宿泊療養施設などで活用が開始されていますが、対象は重症化リスクの高い、軽症・中等症Iの患者で、点滴で投与されています。

(Q.“外来”で“皮下注射”とは、どういうことですか?)

出雲雄大医師:「抗体カクテルは、感染したらとにかく早く打って重症化を防ぐということが重要です。宿泊療養施設で活用するのは、もちろん良いことですが、東京ではホテルにすら入れない状況になっています。そうした災害級の地域では、在宅患者にも行き届くよう、外来で皮下注射できる体制にすべきではないかと思っています」

(Q.点滴ではなく、皮下注射で大丈夫なのでしょうか?)

出雲雄大医師:「海外では、皮下注射での治験も行われています。皮下注射は、点滴で血管を探して注射の針を入れることはせずに、例えばインフルエンザのワクチンのように行うため、非常に簡便に行えます。例えば、コロナ陽性と分かったら、医師が、重症化因子を持っているかどうかをその場で判断し、在宅療養に入る前に、外来で速やかに投与するイメージ」

(Q.抗体カクテル療法では、アナフィラキシーなどの副反応に備えて、24時間めどの健康観察が必要となっているが、外来ではどういった対応が考えられますか?)

出雲雄大医師:「治験では、点滴でアレルギー反応が起こるのは、0.2%ほどと言われていて、皮下注射でも同じ程度と考えられます。皮下注射の場合は、皮下が赤くなったりするのが4%ほどと言われています。平時の状態であれば、入院して経過をみるのが絶対に良いと思います。ただ、今は災害の時です。コロナワクチンのように、30分ほどその場で経過観察をし、その後、何かあったら、患者と連絡を取って対応するのが災害時の対応ではないかと思っています」


(2)抗炎症薬を“在宅患者”にも処方

抗炎症薬は、ウイルスが体内に侵入してきた時、免疫細胞が過剰に反応して暴走し、正常な細胞を攻撃してしまう『サイトカインストーム』を防ぐ薬です。

病院では現在、中等症IIから重症患者にデキサメタゾンという抗炎症薬が使われています。

デキサメタゾンは錠剤もあるので、自宅療養でも使用すべきだということです。

(Q.抗炎症薬を自宅療養でも使うべきというのは、どういうことですか?)

出雲雄大医師:「本来は入院で、私たちの管理下で使用するものであると思います。今は残念ながら、東京都などでは、サイトカインストームが自宅療養でも起きています。デキサメタゾンの飲み薬を前もって渡して、悪化したら自分で使って、重症化を防ぐ。これは平時なら絶対に勧められない方法ですが、今この災害時で命を救うことを考えると、この方法も必要ではないかと思っています」

(Q.デキサメタゾンを飲むタイミングはいつですか?)

出雲雄大医師:「新型コロナの在宅診療のマニュアルから考えると、例えば発症から5日以上経過しても息切れ・熱が続いた時や、酸素飽和度が93%以下になったら飲む。基本的に処方期間は10日間ですが、早い人は一日で楽になる場合もあります。内服しても改善しない人は、最優先で入院するという順位付けをしていくことも大事かと思います」

(Q.服用する時の注意点はありますか?)

出雲雄大医師:「もちろん様々ありますが、一番は糖尿病の患者が使うと、血糖値が上がるので、注意が必要と言われています」

(Q.状況を改善するため、各地で酸素ステーションを設置するなどの対策が進められていますが、重要なポイントは何だと考えていますか?)

出雲雄大医師:「地域によって状況が違いますので、それに応じてになりますが、どんな対策でも早期発見・早期治療介入ということが非常に重要だと思っています。今は、早期に感染が分かっても自宅療養で、悪化しても入院できず、本当に重症になって、やっと治療介入できる状況になっています。これでは、コロナ以外のどんな病気でも救えないので、どんな形であれ、早期に治療介入が少しでもできる方法が大事だと思います。私が提案した方法も当然、色々な批判があると思いますが、現場の医師としては、救える命を最大限、救うために、具体的にできることをやるしかないと思っています」

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