【世界初】電気ショックで感電死 アニサキス殺虫[2021/09/02 17:00]

【生の刺身を美味しく食べる大敵 アニサキス】

お刺身といえば、日本人には欠かせない食文化です。
しかし、ある厄介者のせいで、新鮮でおいしい生のお刺身が、安心して食べられない危機に!?
その厄介者の名は…アニサキス
サバ・アジ・イカなど多くの魚介類に寄生し、年間を通して被害は全国で報告されています。
アニサキスに感染すると激しい腹痛、嘔吐、発熱などの症状が…
特に刺身を販売するスーパーにとって、その存在は脅威です。

スーパーアキダイ 秋葉弘道代表
「食に携わる私たちとしては、おいしさと同じくらい安全というのが重要なんですよね」

アキダイでは、豊洲市場などから仕入れた、その日に水揚げされた新鮮な魚を、店内でさばき販売しています。

スーパーアキダイ 秋葉弘道代表
「スルメイカなんて生で食べたいですよね。そういうものの処理としてはお店側ではイカに細かく筋を入れて、アニサキスがいないことの確認とか、アニサキスを殺す意味でもそういう形をとっている。アニサキスへの対応は手間もかかる、時間もかかる…」

【短時間で一気にアニサキスを殺虫 世界初の新技術とは?】

そんなアニサキス問題を、3分で解決してくれる画期的な装置が開発されました。
開発したのは福岡県の水産加工メーカー、ジャパンシーフーズ。
アジの生食用加工食品に関しては、国内でトップシェアを誇ります。

ジャパンシーフーズ 井上陽一社長
「アニサキス問題というのはずっと我々の会社(水産業界)にとって課題ではあった」

これまでアニサキスは、冷凍したり加熱したりすることで殺虫してきました。
しかし、従来のやり方だと、色味が変化したり食感が柔らかくなったりするなど魚の身の品質が落ち、生のおいしさではなくなるという欠点が…。
そこで3年前、ジャパンシーフーズは、熊本大学との共同研究で世界初となる電気エネルギーを使用したアニサキス殺虫装置の開発に取り組み始めたのです。
完成した装置を、この日は豊洲から卸業者の方が視察に来ていました。

卸業者「やっぱりそれだけ高い電圧は必要ですか?」
職員「そうですね、けっこうアニサキスがしぶといので、これくらい高くないと殺虫は厳しいなと」

実際にアニサキスを殺せるのか、実験です。
あらかじめアニサキスを仕込んでおいたアジの切り身3キロを、6度以下に保った塩水に投入。

職員「今から印加します」 ※スイッチオン

瞬間的に流す電気は100メガワット。これを3分の間に、450回流すことでアニサキスを完全に殺虫することができるといいます。
電気処理したアジから取り出したアニサキスを調べてみると…全く動いていません。

(魚のプロ)豊洲の卸業者が試食
「正直全く変わらないですね、これは。電気処理したアジと、通常の生の未処理のアジと同じ見た目、同じ味、非常に技術力が高い」

【味にこだわった開発 研究員3年努力の結晶】
元々ジャパンシーフーズでは、電気を使った殺虫実験はしていましたが、アニサキスは殺せても、魚の身に熱が入りすぎて煮えすぎてしまうなど、味の劣化があったといいます。
電気を流す時間を一瞬に出来たからこそ、加熱されにくく、より生に近い状態を保てるのです。世界初といわれるこの技術、開発成功までには、途方もない作業があったのだとか…

ジャパンシーフーズ 井上陽一社長
「電気を過量に流し続けると、魚の身にダメージが入ってしまうわけで、必要最低限のギリギリ(アニサキスが)死ぬ電気量を見極める必要があった。」

その見極めをするため、研究員2名が3年間にわたり、延べ5万匹のアニサキスを使い実験を繰り返してきました。

ジャパンシーフーズ 井上陽一社長
「実際にピンセットで処理直後、24時間後、48時間後と、3回に分けてアニサキスが動かないことを確認したと。(5万匹を3回なので)15万回アニサキスをつつき続けたと。非常に地道で根気のいる作業になりますね。」

早ければ、今年の秋ごろから新技術で処理した刺身の試験的な販売開始を目指します。

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