全盲の女性館長が語る 技術で障害を超えて誰も取り残さない未来[2022/01/28 23:30]

『未来をここからプロジェクト』。持続可能な社会を目指すSDGs企画をお伝えします。28日は“働きがいも経済成長も”です。

Googleは去年、道路に引かれた黄色い線をスマホのカメラに認識させることで視覚障害者が伴走者なしで、走ることを可能にする技術を開発しました。

今、最新テクノロジーによって、障害者の社会進出を後押しする動きが加速しています。

日常の疑問から最新テクノロジーまで、世界の様々な科学技術を体験できる場所『日本科学未来館』。初代館長の元宇宙飛行士・毛利衛さんから継いで2代目館長として就任したのが、全盲の技術者・浅川智恵子さんです。

浅川智恵子館長:「誰一人取り残さない社会の実現に向けて、新しい科学技術を身をもって体験して、共に社会実装に向けて活動ができるような、未来館をそんなプラットフォームにしていきたい」

IBMの技術者でもある浅川さんは、世界初のパソコン上の文字を音声で読み上げるソフトウエアなどを開発してきました。そんな浅川さんが今、開発しているのが『AIスーツケース』です。

浅川智恵子館長:「(Q.このスーツケースのようなものはなんですか)これは視覚障害者のためのナビゲーションロボットです。私たちはAIスーツケースと呼んでいます」

AIスーツケースは、スマホで設定した目的地に自動で誘導してくれるロボットです。赤外線で建物の形状を把握し、登録してあるマップと照らしてAIで解析。自分の位置を認識することができます。スーツケースの上にあるカメラで障害物を認知することも可能です。

電話や自動運転など、これまで障害者の技術支援をもとに進化してきたテクノロジー。だからこそ、けがをきっかけに、全盲となった浅川さんは、障害者が生きやすい未来を作りたいと技術者の道に進みました。

浅川智恵子館長:「(Q.不慮の事故で視力を失って、絶望感を味わわれたのですか)大変でした。でも私たちって選択肢が少ないんです。色んな選択肢があって、その中からある選択肢を選んだとする。それが合わなくても、そう簡単に次があるわけではないので、とにかくやり遂げようと思って頑張りました。勉強しました」

視覚障害者が情報処理を学ぶ専門学校に進学後、日本IBMに就職。2009年には日本人女性として初めて技術者の最高位に就きました。そして去年、日本科学未来館の館長に就任。そこには、ある思いがありました。

浅川智恵子館長:「テクノロジーだけで解ける問題はたくさんあります。ただ、それだけでは多様性にはならない。それは社会の理解も必要だということです。日本化学未来館は、多くの人とつながれる場所であると思ったので、そういう立場から、新しい科学技術を発信していくことによって、社会実装を加速できるかもしれないと思ったのが、就任させて頂いた一つのきっかけです」

イノベーションで新しい社会を描こうとする、浅川さんが見据える未来とは。

浅川智恵子館長:「多様性が問題ではない世界。この世界には多様な人々がいるというのが当たり前に認識されて、すべての日常生活が回っている。そんな未来が来ることを願っています」

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