濃厚接触者の隔離期間に「差」自治体の基準にズレも[2022/01/30 22:30]

30日、東京では日曜として最多の1万5千人を超える新規感染者が確認されました。感染拡大が止まらない中、濃厚接触者の自宅待機で破綻寸前の現場が続出しています。

▽東京の病床使用率50%目前に
東京に「まん延防止等重点措置」が適用されて10日。30日、東京の新規感染者は15895人。重症者は前の日より1人増えて23人、病床使用率は48.5%となりました。「緊急事態宣言」の要請を検討する目安の50%に近づいていますが、政府は重症病床の使用率を注視するとしています。
その「重症病床使用率」、東京都の基準では4.5%、国の基準では36.7%となっています。
(東京都 小池百合子知事)
「法律的に国が決められる緊急事態宣言でありますので、特にオミクロン株に対してどういう対応なのかというのをしっかりと伺っていきたい」
全国の感染者は5日連続で7万人を超え、千葉や埼玉などでは過去最多となりました。

▽搬送先がない…“一般救急”さらに逼迫
感染の急拡大で、救急医療の現場では、日ごとに深刻さを増しています。
(佐々木一真アナウンサー)
「今ですね、救急車が到着したばかりなんですけども、もう1台救急車が到着しています。こちらの病院は、救急車の搬送を断らないことを掲げて開設された埼玉県のふじみの救急病院です。ただ、今その搬送を断らざるを得ない事態に陥っていると言います。」
(医師)ベッド満室です。
(院長)どこも厳しい?
(医師)都内まで当たってみたんですけど、厳しいです。
救急搬送されたコロナ以外の患者を治療し、他の病院に転院させているこちらの病院。しかし、病床の逼迫で転院先の病院が見つからないため、一般の救急患者の受け入れ制限を始めました。
(ふじみの救急病院 鹿野晃院長)
「転院ができずに救急外来の処置ベッド、あるいは一部のコロナ用のベッドに入院されているコロナ以外の救急患者さんが溜まってきて、次の救急車の受け入れが出来ない。“24時間365日断らない救急”を掲げて開業したんですけど、今回初めてですね、きのうから救急車の受け入れ制限をせざるを得ないそんな状況になりました」
搬送先が見つからない「救急搬送困難事案」は、全国で4950件と過去最多を更新し続けています。医療従事者は、濃厚接触者となっても、毎日検査で陰性が確認できれば、出勤できますが…
「自分のお子様が熱を出した、あるいは、保育園や小学校で学校閉鎖という状況で、登校ができずに家にいる。面倒見ないといけないので出勤できない」
Q.そこから医療の提供体制が崩れることは考えられる?
「もうそれがすでに始まっているというところですね」

▽隔離期間に「差」も…不安の中“職場復帰”へ
不安を抱えながらも、明日から職場に復帰しようとしている“濃厚接触者”がいます。
「(他の濃厚接触者は)20日間、職場に来られないという話になっていて、私だけが10日間で来られるっていうのは、『そんなに早く復帰して大丈夫なの?』みたいな話は(会社で)されているみたいなんで」
関西圏に住むAさんは、夫と3人の子供を持つ5人家族。今月19日、長男が発熱し、検査の結果、陽性と判明。保健所からの連絡により同居する家族全員が『濃厚接触者』と認定され、会社勤めのAさんは、自宅待機となりました。
(Aさん)「陽性と分かり次第、子供を自分の部屋に隔離しました。陽性判定を受けた子供は2階。それ以外の子供については1階で寝食をしていました」
6LDKの戸建てに住むAさん家族は、長男を一部屋に隔離。食事を運んだり、換気の時には感染対策をして部屋に入ることはあっても、日常生活では極力、長男との接触を避けました。その旨、保健所に報告すると、濃厚接触者であるAさんの待機期間は、19日に陽性と判定された長男と同じ“10日間の29日まで“とされたと言います。
「ほかの(濃厚接触者の)同僚とかは20日ぐらいなので自宅待機が。私も勘違いではないかという懸念があったんです。(保健所に)再度確認をし、10日で間違いないということでしたので(会社は)それならそれで構わないということでした」
10日から7日間に短縮された濃厚接触者の待機期間。それは、感染者と最後に接触した”最終接触日”からカウントされます。しかし、基準となる”最終接触日”の考え方が、自治体や保健所によってまちまちだと言うのです。
ある保健所のHPをみてみると…
『陽性者と部屋を分けることが可能であれば、隔離を開始した日を最終接触日にする』と書かれているのに対し、こちらの自治体では、同じ隔離であっても『同居者が患者の看護を行う必要がないとき』に限られ、この場合、食事の運搬などの看護をしていたAさんの最終接触日は伸びる可能性もあります。
「隔離状況によって(待機期間が)変わるのであれば、同じ地域であっても、隔離できる個室がある方とそうでない方で外出制限(待機)期間が大きく変わるっていうことが考えられますので、ちょっと納得はいかないシステムかなというのは思いますね」

▽“取引先の休業”で3Dプリンター生産中止
“濃厚接触者”急増の余波で、生産がストップした現場があります。
創業70年、大田区にあるこちらの町工場。今、力を入れているのが…
(極東精機製作所 3代目 鈴木亮介代表)
「これは従来機に比べて10倍の速度が出る最新鋭の3Dプリンター。こういったフィギュアみたいなものを作っている会社も使うことができる」
1台100万円以上する「最新鋭の3Dプリンター」。来月から量産体制に入るはずでしたが、予期せぬ事態に陥っていました。その理由は…
「これなんですけど…」
取引先から送られた数枚のFAX。休業の知らせでした。
「社員さんが(コロナに)かかっちゃったりとか、社長さんが感染しちゃって、それで指示系統が止まっちゃったみたい。」
部品を作っている複数の会社で、感染者や濃厚接触者が出て、一時「休業」に追い込まれてしまったのです。
「取引先だったところでいうと、5〜6件やめちゃったりとか、1週間完全にストップしちゃったりとか」
Q.濃厚接触者などが出た場合はどういう状況に?
「もう絶対に回らないんですよね。(濃厚接触者で)待機になっている時点でもう…。現場で働いている方たちが止まっちゃうとどうにもならないので。」
この工場では、感染者も濃厚接触者も出ていませんが、取引先の休業で部品が届かず、製造できない状態が続いています。
「納期がどんどん後ろに倒れていっちゃって…」
来月には、20台ほど販売予定だった「3Dプリンター」。2000万円以上の売り上げを見込んでいましたが、製造再開の見通しは立っていません。
「結局これを開発に使いたかったお客様の開発も遅れていくことになると思う。この大田の地には、技術を持った会社がいっぱいあったのに、コロナが明けてみたら、技術無くなってたみたいなことになりかねないんですよね。」

▽オミクロン「生産現場を直撃」
都内の中小企業が加盟する団体が行った最新のアンケートでは、7割以上の企業が「感染者・濃厚接触者など休業者の発生」で事業継続が難しくなっていると回答しています。
(中小企業家同友会 林隆史 事務局長)
「濃厚接触者がものすごい数が多いです。対策も濃厚接触者の休業とかですね、この2年半のコロナの中で、一番大変なんじゃないでしょうかね。生産の現場を直撃するというのがオミクロンの特徴ですね。」
特に製造業の場合、1社が休業すると、関連企業に大きな影響が出てしまうと言います。
「製造業では中々独断でもって明日から休業しますと言われましても困りますよね。いわゆる生態系みたいにつながっているので、すると社会が止まるんですよね。もう必死の思いでこの2年半、借り入れ増やしながら我慢してやってきてそこで生産止まったら会社の最後のとどめになるかもしれない。」


1月30日『サンデーステーション』より

こちらも読まれています