コロナ後遺症の倦怠感など 認知症治療薬に効果期待[2022/07/23 12:27]

 新型コロナ後遺症の倦怠(けんたい)感とうつの症状について、動物実験の結果、その原因を突き止め治療に期待できる薬が明らかになったと東京慈恵会医科大学の研究グループが発表しました。

 東京慈恵会医科大学・近藤一博教授:「新型コロナウイルスが鼻の奥にある嗅球(きゅうきゅう)という部分を攻撃することにより、脳内のアセチルコリンという神経伝達物質が減って、脳が非常に炎症しやすくなる状態になることを見つけました」

 東京慈恵会医科大学の近藤教授のグループは、コロナ後遺症の倦怠感やうつの症状を持つ研究用のマウスを初めて作ることに成功し、脳に起きている異常について調べました。

 近藤教授によりますと、これまで新型コロナをそのまま感染させた動物は肺炎などの症状が強く現れ、短期間で死亡するなどコロナ後遺症の症状を持つ研究用の動物を作ることができていなかったということです。

 倦怠感やうつの症状を持つマウスは、鼻の奥にあるにおいを検知する「嗅球」という脳の一部に損傷が見られたほか、脳全体にも炎症が起きていました。

 この原因について研究を進めると、嗅球とつながる脳の組織では本来、「アセチルコリン」という脳内の炎症などを抑制する神経伝達物質が活発に作られますが、その活動が大幅に低下していることが分かったということです。

 そこで、認知症の治療薬として使われている「ドネペジル」というアセチルコリンの濃度を高める薬をマウスに投与したところ、脳の炎症が改善し、倦怠感やうつの症状がなくなったとしています。

 東京慈恵会医科大学・近藤一博教授:「ドネペジルというのは、安全性が確認されているお薬ですので、LongCOVID(コロナ後遺症)に効くかどうかの治験は、すごくやりやすい」

 「ドネペジル」は、すでに使用されている薬のため、安全性について改めて治験を行う必要がありません。

 そのため、今年秋から人に対してどのような効き目があるのか臨床試験が行われる予定で「ドネペジル」による後遺症治療について、実用化を目指したいとしています。

 近藤教授はウイルスとうつ病に関する研究の第一人者でおととし、うつ病の発症は子どものころに感染するヒトヘルペス6ウイルスの遺伝子が嗅球の細胞死を誘発して、脳のストレス状態を強めることが原因だとする研究成果を公表しました。

 今回、新型コロナによる後遺症が嗅覚障害やうつ症状を引き起こすことからメカニズムが似ていると研究を始めたということです。

 近藤教授は「非常に近い仕組みだと判明したため、コロナ後遺症の治療薬として効果があることが分かれば、うつ病の新たな治療薬の開発にもつながると考えている」としています。

こちらも読まれています