苗を育て沖縄の海へ『サンゴ研究部』の挑戦 海水温上昇で進むサンゴ“白化”[2022/08/26 23:30]

今年の夏は、気象庁が『異常気象』だったというほど暑い日が続きましたが、海でも水温が高い状況が続いています。

沖縄の海では、サンゴが白くなる“白化現象”が例年以上の規模で確認されていて、環境省は、来月にも調査に乗り出す方針を明らかにしました。

異変が確認されたのは先月下旬のことです。白化現象が続けば、サンゴは死滅する恐れがあります。

琉球大学海洋自然科学科・中村崇准教授:「沖縄の周辺だと浅いところで、白化しやすいといわれるサンゴが7〜8割白化している。高水温がずっと続いていることが主な原因」

八重山地方周辺の海面の水温は、平年より1度ほど高い状態が続いています。環境省も危機感を強めています。

西村明宏環境大臣:「死滅・絶滅しないようにサンゴの移植を行うなど、再生に向けての取り組みも環境省として進めている」

「サンゴを救いたい」そんな思いで活動している子どもたちがいます。東京・町田市にある玉川学園には、全国でも珍しい『サンゴ研究部』があります。部員は、中高合わせて32人。沖縄の海から預かったサンゴの生態を調べ、育てています。

今年、部の創設以来初めて、育てたサンゴを自らの手で沖縄の海へ戻すことにチャレンジします。

ところが、届いたサンゴは健康な茶色い部分と比べ、一部が白くなっていました。移動中のわずかな温度上昇が「白化現象」を引き起こしたのです。

サンゴは、褐虫藻(かっちゅうそう)という植物プランクトンを取り込んで生きています。これがサンゴの色のもと。しかし、高水温などの影響を受けると、褐虫藻が抜け出て、白い骨格だけが残ります。これが白化現象です。

玉川学園中学部1年・磯川昴くん:「シビアですから、サンゴは」

玉川学園中学部2年・宮崎珠生さん:「ちょっとした変化でも異常が起きる」

復活に向けた挑戦が始まりました。まず、白化がこれ以上広がらないようにするため、サンゴを小分けにします。苗の数を多くすることで、移植の成功率も上がります。

サンゴの苗を育てるのは、限りなく海に近付けた環境。塩分濃度に加え、マグネシウムやアンモニアなど、10項目を細かく測り、水質を常に一定に保ちます。影響を最小限にするため、水槽に手を入れる人数も3人以下に絞りました。これをほぼ毎日、休みの日も部員や先生が世話を続けて1カ月。

玉川学園中学部1年・吉野凛月さん:「復活してうれしいです。サンゴ研究部って、こういうのが楽しみで入ってきたので」

元気になった苗を移植に向け、さらに育てていきます。

玉川学園高等部2年・乙部結生くん:「サンプル体を決めて、成長具合を週に1回記録する」

株分けから3カ月。育てたサンゴの苗を沖縄へ運ぶ日がやってきました。温度管理を徹底し、慎重にサンゴを運び出します。飛行機とバス、フェリーを乗り継いで、東京から約8時間かけて沖縄・伊江島に到着しました。

伊江島はサンゴ礁に囲まれた島ですが、20年前、海水温の異常な上昇で、ほぼ全てのサンゴが白化。住民による保全活動も行われていますが、厳しいところがあるといいます。

伊江漁業協同組合・八前隆一組合長:「漁業者が(サンゴの)苗を作って増やしていくのは、仕事をやりながらは厳しいところがあるので(サンゴ研究部に)期待するところは大です」

苗を移植するのは、サンゴが死んでしまった岩場。海に影響の少ない水中ボンドで固定していきます。

いつか、この岩場をサンゴが覆うことを願って。今回、約50株の苗を植えることができました。ただ、これで終わりではありません。

玉川学園高等部2年・乙部結生くん:「簡単に解決できるものではないのは分かっていて、自分たちの移植活動をいろんな人に知ってもらうことで、サンゴの持つ重要性や大きな意味というものを分かっていただけたらいいなと」

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