農作物を食い荒らす「ハダニ」がアリの足跡を避けることが分かったと京都大学が発表しました。人体に有害な農薬を使わず害虫を追い払うことができるようになるかもしれません。
京都大学大学院の矢野修一助教授らの研究チームは、1000種類以上の植物を食べる害虫として知られる「ナミハダニ」と「カンザワハダニ」がアリの足跡に残る化学物質を避けることを世界で初めて発見したと発表しました。
矢野助教授らは、捕食者がいる自然の生態系ではハダニが大量発生しないことに着目しました。
アリよりも小さくて足の遅いハダニは捕食者であるアリを警戒し、足跡を避けることで回避していると予測したということです。
日本に生息する「アミメアリ」と「クロヤマアリ」を使って実験したところ、ハダニはアリが通った葉っぱや枝を避けて移動し、アリの足跡に残る化学物質を避けることが分かりました。
ハダニは世代交代のサイクルが早く、新しい農薬にすぐ耐性を付ける厄介な害虫として知られています。
将来、アリの足跡物質を利用した忌避剤を開発できれば有害な農薬を使わずに植物を保護できるほか、もし耐性を付けてアリの足跡を恐れないハダニが現れても捕食されて淘汰(とうた)されるため、理論上は効果が続くということです。
矢野助教授は「農業害虫が自然の生態系では大量発生しない仕組みを解明して応用することで合成農薬に頼り切った農業から脱却できるはずだ」としています。
画像:京都大学
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