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2022年12月1日 20:02

高齢ドライバー 教習所に殺到 “危険ミス”続出…“免許返納”促すサービスに依頼も

2022年12月1日 20:02

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今年5月から運転免許更新の際、一定の違反をした75歳以上を対象に「運転技能検査」が導入されました。

しかし、依然として、高齢者の重大な交通事故が相次いでいます。

自動車教習所の高齢者講習を取材すると、「一時不停止」や「脱輪」など驚きの運転が見られました。

課題となるのは、運転技術に不安が残る高齢ドライバーの「免許返納」。そんななか、ドライブレコーダーの映像から、運転技術を客観的に分析できる技術が大きな注目を集めています。

高齢ドライバーの運転の実態を追跡しました。

■“高齢ドライバー”が連日…教習所に殺到

一定の違反歴がある高齢ドライバーに「運転技能検査」が新たに義務付けられて半年。しかし、今もなお高齢ドライバーの法令違反や運転ミスによる重大事故が、各地で相次いでいます。

先月23日、自動車教習所に集まっていたのは、全員が75歳以上の高齢ドライバー。目的は、運転免許証の更新です。

新東京自動車教習所 松見昭指導員:「『今まで事故を起こしたことがない』。それは、今までであって、これからではない。事故を起こしてからでは、何にもならない」

高齢のドライバーが、免許の更新をする時には「認知機能検査」と「高齢者講習」を受ける必要がありますが、75歳以上で一定の違反がある場合は、「運転技能検査」が義務付けられました。

今年5月から導入された「運転技能検査」の合格率は88.9%。検査に合格しなければ更新ができないため、高齢ドライバーが連日、教習所に殺到しています。

運転歴62年 男性(86):「毎日、運転はやっています。妻を病院に連れて行ったりするから」

運転歴58年 男性(75):「通常乗っていますから。特に、運転に違和感はないですね。体が普通に動いているんだったら、(免許証)持っていたい」

講習では、検査時に減点の対象となる「一時停止」や、右折や左折する際の「車線はみ出し」「脱輪」などがないかを指導員がチェック。まさに、本番さながらの講習なのですが、次々と、驚きの実態が明らかになります。

「止まれ」の標識がある場所では「一時停止」なのですが停止せず、そのまま交差点を走り抜けます。

高齢ドライバーによる死亡事故の原因で3番目に多いのが、信号や標識の見落としです。

踏切も、一時停止しなくてはならないのですが、完全に止まり切れない車が続出していました。

■18人中5人“脱輪”…危険な操作ミスも発生

法令違反が、危険な事故を招く恐れもあります。80代の男性が運転する車が、一時停止の標識を見落としたことが原因の事故も起こりました。

さらに講習中には、こんな場面もありました。

左折待ちの車の前を右から来た車が通過しかけた、その時でした。車が通過しきっていないのに、突然前へ進もうとしました。

高齢ドライバーによる死亡事故の原因で、2番目に多いのが「安全確認不足」。指導員がとっさに「補助ブレーキ」を踏まなければ、事故が起きていた可能性がありました。

松見指導員:「(周りを)見る人はしっかり見ているし、(危険を)見落としてしまう人もいる。普段そういう運転をしているから、そういうふうになっちゃう。50年、60年、長く運転しているからね」

そして、高齢ドライバーの死亡事故で最も多いのが、ハンドルなどの「操作ミス」や、アクセルとブレーキの「踏み間違い」などの運転操作の誤りです。

この日の講習を受講した18人のうち、狭い場所を曲がる際「脱輪」したのは5人。左折時に対向車線へはみ出してしまったのは半数を超える10人でした。

そして、中には、バックに入れたつもりのギヤがニュートラルになっていた人もいました。一つ間違えれば、暴走事故にもつながりかねない、危険な操作ミスです。

■“返納”年々減少…「旅行先で運転したい」

福島県で6人が死傷する暴走事故を起こした、97歳の容疑者。親族が、本人の免許返納について検討していた矢先の事故でした。

松見指導員:「ただ『年だから返納したほうが良い』と言っても、本人は納得しない。認知機能が良かったら、自信を持ってしまう。『俺は大丈夫だ』と」

75歳以上の高齢ドライバーの免許返納率は、2019年をピークに年々減少。家族や周りが説得しても、返納には踏み切れない人も多いとみられます。

受講者(75):「(周りは)『運転が危ない』って言っています。怖いんでしょうねえ」「(Q.免許返納を考えたことは?)『返納かな』と思ったことは、一度もない」

受講者(75):「(返納は)何か、きっかけがないとね。旅行に行った先で、車を運転したいし。動いているほうが、体には良い」

■依頼殺到…“免許返納” 促すサービス

一筋縄ではいかない免許の返納。そうしたなか、高齢ドライバーの家族から依頼が殺到しているという“あるサービス”があります。

高齢者安全運転診断センター 小林竜也分析員:「運転をドライブレコーダーで記録。運転を分析員が目で見てチェックしていく。『返納するか、続けるか、考えて下さい』という役割になっている」

ドライブレコーダーの映像から、教習所の元指導員などの専門スタッフが、安全運転に必要な40項目をチェック。ドライバーの危険につながる癖や操作が無いかを診断するというものです。

その診断をする上で、最も重要なポイントが「安全確認」の有無だといいます。

住宅街の狭い道路を走る車の映像を見てみます。

小林分析員:「『止まれ』があって、一時停止。まず、止まっていないですよね。顔を見ると、左右の確認ができていません」

車は、一時停止をしないまま交差点に進入。ドライバーの顔は、前を向いたままです。その後、頭を左右に振りますが、車はすでに交差点の中に。

さらに、普段運転している時の顔や目の動きから、これまで見過ごされてきた、安全確認が不十分という“危険な癖”が浮き彫りになりました。

小林分析員:「顔の角度からすると、カーブミラーだけ見ている。それで『車が来ていないな』で、そのまま…」「『自分はこんな危険な運転をしていたんだ』というところで。実際に、免許返納された方もいます」

運転が客観的に分析され、問題点が明確になることで、最近では高齢ドライバーを抱える企業からの依頼も増えているといいます。

小林分析員:「企業も高齢ドライバーが結構多くなってきている。診断を受けて、内勤にするとか判断をしているところも」

(「スーパーJチャンネル」2022年11月30日放送分より)

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