被災した文化財を救え!クラファンで“世界からの寄付”広がる「次の世代に残したい」[2022/12/11 22:30]

およそ600年前に建てられた貴重なお堂。
8月に東北などを襲った大雨で、土砂崩れが発生し、建物が全壊しました。
修復費をどう工面するのか、お堂を守る檀家たちの決断とは。

▽全壊“身代わり”観音堂 再建に秘策!?
日本の原風景が残る、山形県・飯豊町―。そこに、被災したお堂はありました。町最古の建造物、『天養寺・観音堂』。
(「天養寺・観音堂」堂守 長岡英雄さん(77))「ショックでしたね。今まで何百年もこういうことがなかったわけですけども、言葉出なかったね」
このお堂を長年守ってきた、堂守の長岡英雄さん。
(長岡英雄さん)「あれがこの柱」
Q. そこの柱が?
「この上に乗っていた」
Q. 石の上に乗っていた?
「そうです、全部。それで、この山一体が崩れて、これ(お堂)をこう押した」
今年8月、東北や北陸を襲った、記録的な大雨。その影響で裏山が崩れ、お堂を直撃。倒壊こそ免れたものの、建物全体を3m以上押し出しました。柱が折れ、ひさしや階段が崩れるなど、全壊となったのです。
(長岡英雄さん)「飯豊町そのものは相当被害を受けたんですけども、この地区では(大きな被害が)なかった。観音堂が身代わりになってくれたのかなって私はとらえておりました」
かつて遠方からも多くの参拝者が訪れた『天養寺』。しかし、戦後まもなく本堂が焼失。唯一残された観音堂の管理は、檀家にゆだねられました。今では、わずか25軒となった檀家たちによって、清掃などが行われ、なくてはならない存在になっていったのです。
(長岡英雄さん)「思い出すと、色々なことが頭を巡って…涙が出てきてだめなのよ。なんとかこれを再興したいなと。再興して次の世代に残したいなと思っています」

▽“身代わり”観音堂 檀家を救う秘策が
この日ひらかれた、役員会。
(飯豊町教育委員会 歴史文化室 高橋拓室長)「見積もりを簡単にとってもらったところ、建物だけで3500万円っていう金額を出してもらってます。分解で1500万、組み立てで2000万」
県の指定文化財となっている観音堂の修復には、自治体から補助金が支払われます。現在、決まっているのは、1500万円ほど…。残りの見通しは、まだ立っておらず、所有者である檀家の負担も発生するのです。
「いや無理だ、あのお金は…」
さらに…
(「天養寺・観音堂」執行役員 渡部君男さん(78))「やっぱり観音様は観音様で、災害はこの他にもいっぱいある」
(長岡英雄さん)「橋もやられてだめだとか、通れない所がいっぱいあるんですよ。だから観音様だけ(修復を)終わらせれば良いっていうことは世間では言えない」
被災した街に住む、檀家たちの葛藤。こうしたなか、ある提案があがりました。
(高橋拓室長)「『クラウドファンディング』と言うのがあるんですね、インターネットで全国的に募金を呼び掛けるような」
10月下旬から始まったクラウドファンディングは、残り一週間で、まだ目標額の半分足らず。

▽山火事逃れた仁王像 危機から復活へ
この仕組みを、一足早く始めていたお寺があります。栃木県足利市にある『大岩山多聞院最勝寺』。鎌倉時代の作と言われる毘沙門天を本尊とするお寺です。しかしそこに、本尊の姿はありません。山門には、印刷された仁王像が睨みをきかせていました。
(最勝寺 沼尻了俊 執事)「足利市でおおきな山火事がございまして、その時に、この仏様も燃えてしまっては大変だということで避難をしていたんですけども」
去年2月に起きた、森林火災。3週間以上燃え続けた炎は、最勝寺にも迫って来ました。搬出作業では、多くの文化財が、経年劣化も加わり、破損。修復を余儀なくされたのです。
修復所では、仁王像の解体が進んでいました。
(三乗堂 森崎礼子修理師)「穴が大きく空いているんが、蜂が巣の材料にするのに食って破っていって内側に大きな穴を作ってしまった状態です」
虫による被害は至る所にあり、修復が終わるまで4年以上はかかると言います。
(最勝寺 沼尻了俊 執事)「かなり傷んでいるであろうという見通しはあったんですけれど、ここまでとは…という感じですね」
仁王像を始め、他の文化財などの修復にかかる費用は、およそ1億円。こうしたことから、最勝寺では、今年2月からクラウドファンディングを始めていました。1年に2500万円ずつ、4年に渡って募る募金は、現在、今年の目標を遥かに超えて、およそ3300万円。
((文化財クラファンを支援 文化財マネージメント 宮本晶朗代表)「氏子・檀家が少ないなかで、この金額を集められないと、結果的に物(文化財)が無くなってしまう。クラウドファンディングだと全世界からお金を集めることができる。文化財としてずっと残ってきているものなので、地域に残していきたい」


12月11日『サンデーステーション』より

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