空港“検疫所”に響く怒号「強盗だ」上海からの女性“豚肉”持ち込もうと…抵抗の理由[2022/12/25 11:00]

今年10月、入国制限が大幅に緩和。

外国人観光客が続々と日本へ来日するなか、水際対策の最前線「空港検疫所」で繰り広げられる外国人観光客の人間模様を追跡しました。

■禁止品捜せ!合図は“おすわり”

追跡取材班が向かったのは、成田空港。10月から入国制限が大幅に緩和され、外国人観光客が続々と押し寄せていました。

その影響で、持ち込みが禁止されている食品等の検査数が、制限緩和前と比べ急増していました。

その最前線で活躍するのが「検疫探知犬」。訓練されたビーグルは、嗅覚が非常に優れ、真空パックに入った中身の禁止品も嗅ぎ分けるといいます。

すると、何かを嗅ぎ当てたのか、大量の荷物をカートで運んでいる女性に近づき、おすわり。この“おすわり”が、“発見”の合図です。

■何が…?バッグから“一斗缶”

荷物の検査を受けることになったのは「韓国から帰国した」という女性。カートには、大きなバッグが4つ。その中には、一体何が?

検疫官:「開けても、よろしいですか?」

成田空港には植物と動物、2つの検疫所があり、検査証明書のないものや、禁止されている国や地域からの動植物を監視。植物検疫所では、有害な病害虫等が日本に入るのを防ぐため、野菜や果物の検査が行われます。

すると、女性のバッグから大きな一斗缶が…。中からは、何やらビニール袋に詰められたものが、次々と出てきました。

検疫官:「野菜が入っているので」
女性:「中に入ってます?」
検疫官:「野菜は、持って入れないんですよ」

さらに、別のバッグからも続々と、野菜が出てきます。

女性:「トウガラシも、ダメなんですか?」
検疫官:「トウガラシも、生はダメなんです」
女性:「あーもう、このぐらいにして」

女性が持ち込もうとしたのは、トラジというキキョウの根、ネギ、ナズナ、そしてクリなど10種類の野菜や果物です。

女性:「(Q.誰に、食べさせてあげようと?)(日本で暮らす)家族なんです。しばらく(韓国に)行っていないし。皆、食べたがるから」

日本人と結婚し、日本で暮らしているという女性。久しぶりに里帰りをして、家族のために韓国料理をつくろうと買ってきたといいます。

しかし、生の野菜・果物等は、ほとんどが持ち込み禁止となっているため、これらは廃棄処分になります。

もし、違法に持ち込んだ場合は、罰則が科せられる場合もあります。

■「強盗!」検疫所に響く“怒号”

一方、動物検疫所では、女性の怒鳴り声が聞こえてきます。

女性:「重くて下ろせないよ。下ろせない!」
検疫官:「ここに、のせますね」
女性:「下ろせない!どういうわけよ?」

上海から来たという女性。なぜか、検査を拒否。

上海から来日:「何も持ってないわよ。開けないで!」

検疫官:「開けますね?」

上海から来日:「アケマスネ、アケマスネ!アケマスネ!他にやることないの?これは服と薬よ」

ところが、バッグの中を確認すると…。

検疫官:「NO!NO!NO!ほらー、ジューロゥ(豚肉)。ジューロゥ(豚肉)。ありました」

総重量は、なんと2.6キロ。見つかったのは、豚肉のジャーキーに、牛肉とカモ肉のおつまみ。そして、豚肉のふりかけです。

肉製品は加工食品も含め、ほとんどが持ち込みは禁止です。

検疫官:「お肉持って入れません。ダメダメダメよ!持って入れない」

上海から来日:「何するの!」

検疫官:「だめですよ、持って入れない」

すると、持ち込み禁止の肉製品を強引にバッグにしまおうとする女性。そして…。

上海から来日:「強盗だよ!」

検疫官:「ダメですって。日本入れないよ」

上海から来日:「強盗」

一体なぜ、女性はこれほど抵抗をしたのでしょうか?

上海から来日:「(Q.家族のために、買ってきたんですか?)子どものためよ。久しぶりに会うから、食べ物を買ってきたの。娘のために、ちょっと食べ物を買ってきただけ。やめてよ!子どものための物なんだから!」

どんな理由があっても、家畜を伝染病から守るために必要な措置なのです。

持ち込んだ肉製品は、すべて廃棄処分に。女性は渋々納得して、入国しました。

■新婚夫婦…東京で“緊急事態”

次に動物検疫所へやって来たのは、インドネシア人の夫婦。2人は10月に結婚したばかり。初めての東京観光を楽しみに来日したといいます。

バッグの中に入っていたのは、牛肉のふりかけとソーセージです。

検疫官:「日本に持ち込めないんですよ」
夫・ハキムさん(27):「あー、そうですか」
検疫官:「ここで、さよならしてもらうんですよ」
妻・イーダさん(27):「あー、そうですかー」

この後の予定を聞きました。

イーダさん:「(Q.ホテルは、どこに泊まるんですか?)まだ、決めてない」
ハキムさん:「まだ、予約していない」

なんと、今晩泊まるホテルも決まっていないというのです。初めての東京観光は、一体どうなるのか?気になるので、追跡することに。

成田空港から2時間、到着したのは渋谷駅。移動中、ホテルを予約したというのですが…。

イーダさん:「迷子になった!(駅の)出口は、どこー?」

駅から徒歩10分のホテルまで、なんと1時間もかかってしまい、この日はくたくたでした。

翌日、初めての東京観光に密着…と思いきや。「成田空港に行く途中です」という、メッセージが届きました。

なぜか、成田空港へ逆戻り!?2時間後、何とか2人と再会。意外な理由が明らかになりました。

ハキムさん:「妻の在留カードの更新をしないといけないから、早めに熊本に行ったほうが良いよと言われて」

実は2人は、九州で働く外国人技能実習生。結婚のために一時帰国し、職場に戻る前に東京観光するつもりでした。

イーダさん:「(Q.東京をもう少し、観光したかった?)本当はね。見たかったけど、もう時間ないから」
ハキムさん:「仕方ないですね。また、今度」

時間ができたら、今度こそ新婚旅行を東京で!

■香港の母子「ショウガ」の秘密

次に、植物検疫所に来たのは、香港から来日した親子。母親のバッグに入っていたのは…。

検疫官:「ショウガだな…」

料理に使うために持ってきたといいますが、持ち込みは禁止です。

コウさん(28):「(Q.旅行ですか?)母親のほうは旅行なんですが、私は日本に住んでいます」

親孝行のため、母親のシンさん(58)を東京観光に連れてきたというコウさん。翌日、親子が向かったのは、外国人に人気の浅草です。

コウさん:「手で煙を頭に掛けるんだよ」
シンさん:「掛けなくても浴びてるわよ」

お母さんは、何をお願いしたのでしょうか?

シンさん:「家族の健康をお願いしました」

シンさん:「(Q.息子さんが日本にいて、心配ですか?)心配してもどうしようもないから。すべては、自分でなんとかしないとね」

そう、口では言いますが、実は、あの「ショウガ」には、母親の愛情が込められていました。

シンさん:「料理に使おうと思って、ショウガを持ってきたのよ」

コウさん:「僕のために料理を作ろうと思って、持ってきたそうです」

遠く離れて暮らす息子のため、好物の「ショウガのスープを作ってあげよう」と、わざわざ香港からショウガを持ってきたのだといいます。

外国人旅行者の様々な想いが交差する成田空港の検疫所。日本の安全を守るための検疫は、きょうも続けられています。

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