「サミット開催は大歓迎 でも…広島の小学校のひそかな悩み」[2023/05/21 18:30]

■サミットの思わぬ余波

 「もっと早く、臨時休校になることを教えてくれたらよかったのに」
 そう嘆くのは、広島市の公立小学校で6年生のクラス担任を務める教師の女性です。勤務する学校はサミットによる交通規制のあおりで、開催期間の前後を含めて平日3日間が臨時休校になりました。このため、授業の進展が大幅に遅れるというのです。
 休校の知らせが学校に入ったのは4月中旬だといい、「近くの中学校は、もっと早めに通知があったというけど…」と恨み節ももれます。
 ただでさえ年度はじめの4月は健康診断や「1年生を迎える会」など、授業以外のイベントが盛りだくさんです。5月のはじめにはゴールデンウィーク、6月には修学旅行が続き、思うように授業は進みません。
 学校が定める「年間指導計画」は、算数の「線対称」などを教える「図形」のテストを、4月中に終えるように組み立てられています。しかし授業はずるずると遅れ、女性が担任するクラスでは5月17日にようやく「図形」のテストを終えられたばかり。そのうえ、サミット関連で3日分が臨時休校となって、遅れに拍車がかかります。
 「5月中は修学旅行の準備に追われる。算数の進み具合が遅いからといって、巻き返す余裕は作り出せそうにありません」と、女性はため息をこぼします。

■「広島だからこそ」

 とはいえ、サミットそのものは、学校ぐるみで楽しみにしていたイベントです。
 この小学校では、広島にやってくるG7各国の言葉であいさつを教えたり、海外から訪れる人に日本の魅力を知ってもらおうと「おもてなしグッズ」をつくったり。あの手この手で小学生たちのG7への関心を高めようと工夫してきました。
 「広島だからこそ訴えられるものがあり、世界に見てもらいたいものがある。『広島で開かれるのはすごいことなんだよ』と子どもたちにも伝えてきました。授業のかわりに、いろんなことを学びとってほしい」
夏休みを削って振替授業にあてる学校もあるといいますが、女性が勤務する学校では方針が固まっていません。「遅れを取り戻すために、急ぎ足で授業をするのは子どもたちもかわいそう」。教科の時間数をうまく調整して、夏休みまでに遅れを取り戻せないかと、女性は知恵を絞っています。

ANN取材本部 (KSB)山本凱生

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