三浦清志被告との30分間で感じた“違和感” 「残念ながらアウトもある」真意は?[2023/07/13 12:00]

 太陽光事業をめぐり計4億円あまりを横領したとして東京地検特捜部に逮捕、起訴された、投資会社「トライベイキャピタル」前代表の三浦清志被告(44)。

 私は逮捕前、三浦被告に「直撃インタビュー」した。場所は、テレビやネットでもよく出てくる東京・永田町のガラス張りのオフィス。「事実を偽って資金を集めたのではないか」私の問いに、三浦被告は…。
(テレビ朝日報道局社会部 石出大地)

▼早口になった三浦氏 この取材はうまくいくかもしれない

 昨年8月。永田町にあるトライベイ社のオフィス。私は机を挟んで三浦氏と向かい合っていた。その6日前、三浦氏のマンション近くで突撃取材を試みたが、「何もないよ」を繰り返され、思ったような答えは引き出せなかった。

 「リベンジ」を決めて改めて申し込み、オフィスでの「サシ取材」をものにしたのだった。

 当時、私が所属する社会部・司法クラブは、三浦氏が兵庫県福崎町の太陽光発電開発プロジェクトをめぐって投資家とトラブルになっているという情報をつかんでいた。関係者によると、三浦氏は開発地の地元住民の同意がないのに、同意を得たと装う書類を作り、ウソの説明で投資家から10億円をだまし取った疑いで東京地検特捜部に刑事告訴されているという。

 せっかく自分1人で時間をとって話を聴ける。「独自ニュース」の発言を引き出したい気持ちにかられる。

 疑惑について三浦氏自身はどう思っているのか。
「太陽光発電を巡って投資家から刑事告訴されていることを聞いていますが」。視線に気おされながら、きいた。
「投資をめぐるトラブルで損をした人たちが逆恨みして、あることないこと言っているというだけ。こっちからすると至極迷惑な話なわけ」
 三浦氏は少し早口になり、6日前にあしらわれた時よりも感情を交えた具体的な言葉が流れるように出てきた。

 この取材はうまくいくかもしれない。
 私はメモを取るペンをしっかりと握りなおした。

▼「同意はとれていなかった」 直撃取材で認めた

 トライベイ社は兵庫県福崎町に太陽光発電所を建設するという計画を立ち上げ、出資者と共同投資を行う関係だった。
 なぜ刑事告訴をされるまでに至ったのか。

 私がまず聞きたかったのは、「建設地の住民同意がとれているように偽って資金を集めた事実はないのか」ということ。自分自身の頭の中を整理しながら、言葉を選んで丁寧に質問をした。
「事実じゃない」
 三浦氏は語気を強めた。そして続けた。

「現地の条例の影響でそもそも難易度が高い案件だったというのはあります。関連会社が住民の同意をとることになっていました」

 住民の同意はあったのか、なかったのか。
「同意はとれていなかったんです。ある程度までいかないと住民同意なんてとれませんから、住民同意が取れてたって主張した記憶はないですけど、何というかプロジェクトにはいろんな段階があるわけなんですよね」

 同意がなかったことを認めた。きた!ここからだ、はやる気持ちを抑えながら頭の中で次の質問を練った。
 「では、同意が…」私の次の質問をさえぎり、三浦氏は、「同意がとれたように偽ったことはありません」と声のトーンを上げて言った。そして続けた。

「ここからは僕の憶測でしかないですけれども、出資者は自分たちの損だけを早く取り返そうとして言っていますけど、法的には僕らは何も問題ないので。僕らは粛々と契約通りに資金回収に走っているんだけれども、それを待てない、待ちたくない人たちが雑音をたてる、そういう現実です」

 被害を訴える人がいるにも関わらず、法が味方だと言わんばかりに自身の正当性だけを主張し、都合のよい解釈のようにも感じた。
と同時に私は汗で手に持っているペンが滑るのを感じた。動揺を悟られないようにゆっくりと聞いた。

▼焦り?三浦氏の言葉に変化が…。

「では、計画がうまくいかなかった責任はどこにあるのでしょうか」
三浦氏は眉をひそめ鋭い眼差しになり、足を組みなおした。そして、言葉を吐き出すように言った。

「我々は開発会社であり資産運用会社。リスクをとる案件はリスクをとる。でなければリターンはない。投資とはそもそもうまくいくときもあればそうでないときもある。うまくいかないときにはいかないなりに資金回収を最大限努力する。それ以下でもそれ以上でもない」
 計画にはリスクがつきもので、自らに非はないとの主張を繰り返した。

 偽りがないなら、なぜ刑事告訴されるのか。
改めてその点を聞こうとすると、またしても質問を遮られた。
「だから我々は全部開示しているわけですよ。全部開示した上での取引。出資者もプロですし、初期の開発にはリスクを取ってやっていくことは理解されている。僕らも損していますからね」

あえて質問をさせないようにしているのか。自分の主張だけを発し続ける三浦氏の姿に、何か焦っているようにも感じた。しかし、その強い口調に、次の質問を繋げることができなかった。

▼「ホームランもシングルヒットも、残念ながらアウトもある」 三浦氏の真意は…

 三浦氏はこうも言った。
「本件は当初、思っていたほどにはいっていないので最大限資金を回収して、ルールに基づいて関係先に…出資者なり債権者に分配していくわけですよ。(太陽光事業には)ホームランもあればシングルヒットもある、残念ながらアウトになっちゃうものもありますよ。淡々とやるだけです」
 今回のトラブルは「アウト」ということなのだろうか。

 頭の中を整理しようとしていると三浦氏は腕時計をしきりに気にする素振りをみせ、立ちあがろうとした。タイムアップだ。

 太陽光事業のトラブルはどこにでもあるもので、騒ぎ立てるようなことは何もないという三浦氏の説明に釈然としないものを感じつつも、びっしり書き込んだメモをバッグにしまい席を立った。用意していた質問はまだまだあった。だが、三浦氏の「取材は以上。どうぞ、お帰りください」と言わんばかりの身振りに思わず身を引いてしまった。

 三浦氏はドアを開けようとしていたが、最後に一言だけ投げかけた。
「またお伺いしたいことも出てくると思いますが…」
「お電話ください」

 「直撃」は30分だった。実際よりはるかに短く感じたが、重く、張り詰めた空気のせいで30分間とは思えないほどの疲労感が残った。
 三浦氏のオフィスから最寄り駅まで3分ほどの距離であったが、帰り道では足が重く、駅に着くまで倍以上の時間がかかった。

 そして、この日の後、いくら電話を鳴らしても三浦氏が出ることはなかった。

▼口惜しさ味わった30分 それでも取材は続く

 社会部記者として初めて味わった「サシ」の直撃取材の30分間だったが、ニュースにできるネタをつかむことはできなかった。唇をかみしめながらも脳裏に焼き付いていたのは、質問を何度も遮り、時計をしきりに気にしていた三浦氏の姿だ。

 私は直撃取材の前に三浦氏を知る人に彼がどんな人物か聞いていた。
「頭の回転がとてつもなく速く冷静。何に対しても淡々とかわす人」

 だが、実際に私が感じたのは三浦氏の「冷静さ」より、「苛立ち」だった。私の質問のせいなのか、それとも聞かれたくない事実があったからなのか。

 ガラス張りオフィスでの30分の取材から5カ月後、このオフィスに東京地検特捜部が家宅捜索に入り、三浦氏はそこから約2カ月後、業務上横領の疑いで逮捕、起訴された。

 初公判は7月14日。三浦清志被告は、法廷で何を語るのか。
 改めて法廷での姿を見て、30分間の取材で私が感じた三浦被告の「苛立ち」の正体を確かめるつもりだ。

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