「捜査受けてませんか?」直撃に…三浦清志被告との30分間で感じた“違和感”[2023/07/13 12:00]

 今年3月、太陽光事業をめぐり計4億2000万円を横領したとして逮捕・起訴された投資会社「トライベイキャピタル」前代表の三浦清志被告(44)の初公判が7月14日に始まる。

 一貫して無罪を主張している三浦被告。実は私は逮捕の7カ月前、東京地検特捜部が踏み込んだオフィスで三浦被告に単独インタビューをしていた。一対一の30分間。相手の威圧感に気おされながらも質問を続けた。
(テレビ朝日報道局社会部 石出大地)

▼ガラス張りのオフィスで「サシ取材」 苛立ち「何もないですよ」

「何がお知りになりたいの?」

 総理官邸から歩いて数分。東京・永田町にあるガラス張りのオフィス。配管むき出しの天井にペンダント式の間接照明がぶら下がるモダンな印象だ。

 昨年8月の平日正午過ぎ、私はその中に三浦氏と二人だけでいた。少し白髪の混じった短髪。白い長そでの糊のきいたカッターシャツを着た三浦氏はぐいっと椅子を引きながら、少しいらだった様子で私に言葉を投げかけた。左腕にはシルバーのロレックスの時計が光っていた。

「検察が動いているのではないかという情報があります。事実確認をさせてください」
威圧感のようなものを感じ、私は声を上ずらせてしまった。

 オフィスに三浦氏と長テーブルをはさんで2人だけ。突き刺さるような視線を感じ、目をそらさないようにするので必死だった。心臓の音が速くなるのを感じていた。

▼配属1カ月後の直撃取材 目の前に現れた三浦氏は…

 どうやって三浦氏とオフィスでの「サシ(一対一)」の取材にこぎつけたのか。話は6日前にさかのぼる。

 当時、我々司法クラブは、三浦氏が兵庫県福崎町の太陽光発電開発プロジェクトをめぐって投資家とトラブルになっているという情報をつかんでいた。関係者によると、三浦氏は開発地の地元住民の同意がないのに、同意を得たと装う書類を作り、ウソの説明で投資家から10億円をだまし取った疑いで東京地検特捜部に刑事告訴されているという。

 直撃取材して疑惑を確かめないといけない。

 私は入社6年目で念願の社会部へ異動し、東京地検を担当する司法クラブの担当を命じられたばかりだった。三浦氏に特捜部の手が伸びるのか…。司法担当総出で警戒を続けていた。

 まずは三浦氏に当たらなければ。
 その日、私は三浦氏が出入りしているという港区のとあるマンションの前にいた。昼間の暑さが残り、じんわりした汗を感じていた。他社は見当たらない。

 通りは行き交う人が多く、三浦氏を見逃さないように注視していた。2時間が経ったころ、マンションへ向かって歩いてくる人影があった。三浦氏だ。本人に間違いない。ハンディカム越しに「もし違ったら…」と少し不安になりながら、玄関に近づいてくる三浦氏に正面から駆け寄った。

 初めての「直撃」に、声はやや遠慮がちになってしまった。
 初めて会った三浦氏は、焼けた肌に鍛えられた体型を強調するようなぴっちりとした白いTシャツ姿で放つ強い目力、ただならぬ雰囲気だ。「怒ると怖そうだな」などという考えが頭をよぎった。

「三浦清志さんですか」
「そうですけど」
「東京地検特捜部から捜査を受けていませんか」
「ないですけど」
 鋭い視線がむけられ、たじろぎそうになった。

「あなたの名刺、ちょうだい。名刺ちょうだい」
 言われたままに名前を名乗り、名刺を渡した。三浦氏は名刺を手に私の名前をスマホで検索している様子だ。

 スマホ画面を見ながら話しかけられた。
「いろいろデマを流されたんだけど、何かきっかけあるの、今?」
「検察から捜査を受けていないですか」
「何もないよ」
「不正に関与していることはないですか」
「ふふふっ、ないよ」

 約5分間、質問を続けたが、視線はスマホに落としたまま、回答はすべて否定だった。
口を開かなくなった三浦氏を前に、この日はその場を去ることしかできなかった。

 疑惑がある以上もっと話を聞かないといけない。ダメもとでトライベイ社に電話で取材を申し込むと、「カメラなしなら」という条件で受け入れる返事が来た。

 「応じてくれるんだ」。取材を疎ましく思っていたと想像していたのに、正直、意外だった。もしかして私が記者として経験が浅いと見抜かれたのか。見くびられているならそれでもいい。“怖いもの知らず”で今度こそくらいつこうと闘志が沸いた。

 撮影はできないが、もし事件になったときは重要な証言になる可能性がある。何よりも、一対一で聞きたいことをぶつけられるチャンスだ。

 配属直後にめぐってきたこの機会を無駄にするわけにはいかない。取材前夜、私は高揚と緊張でなかなか寝付けなかった。

 そして三浦氏のガラス張りのオフィスを訪れることになる。与えられた時間は短い。
 「検察が動いているのではないか。事実確認をさせてください」
 三浦氏は、初対面の時と同じように突き刺すような視線を私に向けながら、口を開いた。

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