【北極ノート】傾斜30度超えの斜面で調査!地滑りのメカニズム解明へ[2023/08/01 12:24]

シオラパルクの周辺は、氷河の浸食によって作られた急斜面な地形に囲まれています。
ここで2016年と2017年の夏に、
豪雨によって大規模な斜面の崩落が立て続けに起きていました。
人的な被害はありませんでしたが、狩猟用の小屋が流され、
河沿いの家屋が土砂をかぶるなど被害が出ました。
今回、この地滑りのメカニズムを解明するために
現地で調査を行っている日本の研究者に同行しました。

地滑りが発生したポイントまでは、集落から徒歩でおよそ1時間です。
集落を出てすぐは緑が多く緩やかな地形。
真っ白なホッキョクウサギも元気に走り回っていました。
しかし進むにつれて段々と傾きがきつくなり、石や岩がゴロゴロとしてきます。
傾斜が30度を超えてくると、手をつかずには登れないような斜面です
目的地に着くころには肩で息をしていましたが、ここからようやく調査が始まります。

地滑りした斜面を近くで見ると、表面から1〜2mほどの厚さが
崩れてなくなっていて、茶色い地面がむき出しになっています。
調査では、崩れた斜面に電極を1m間隔で設置して、電気を地面に流し込みます。
これで、地中の構造を測定できるそうです。
地中に何が存在するかによって、電気の流れ方が変わることを利用。
深さ10mまで調べることができるということです。
シオラパルクでこの調査をするのは今回が初めてで、地中の構造がわかれば
地滑りのより詳しいメカニズムの解明に繋がります。

シオラパルク周辺の地形は、地表の下に基盤となる岩があり、
さらにその下に永久凍土が存在しています。
永久凍土は水を吸収しないため、大雨が降ると
地中深くまで吸収されなかった分が斜面の中腹で湧き出し、
その水圧で地表部分が崩落した可能性があるということです。

地球温暖化による気候変動が進む北極。自然環境が急激に変化することで
災害のリスクも高まっています。豪雨の発生頻度が増えることによって、
今後、北極の他の地域でも同じような大規模な地滑りが発生する可能性があります。

テレビ朝日報道局 松本拓也 屋比久就平

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