新人は“81歳”! 未経験でも活躍…元気に働くシニア 企業「若い人より優れている」[2023/10/14 11:00]

 一度はリタイアしたシニアたち。様々な理由で新たな職種で働く現場を取材してみると、それぞれ元職の知識や経験を生かしたスゴ技で、ピンチを乗り切っていました。

 大手うどんチェーン店の「持ち帰り」窓口では、65歳女性の“気配り”でフル回転の活躍。

 「中古家電販売店」の洗浄現場を支えているのは、60代〜80代のシニア集団。まさかの“小道具”を使い驚くほどピカピカに仕上げていました。

 「若い人より優れている!」高い評価を受けるシニアたちを追跡しました。

■「食べるため」「継続雇用」 様々な理由で働くシニア

 50代から70代を対象に行われた意識調査では、60代以降も「働きたい」もしくは「働く必要がある」と感じている人は、およそ6割という結果になりました。

 街ゆくシニア世代に「働く理由」を聞いてみると…。

 ホテル清掃のアルバイト(70):「(Q.仕事帰りですか?)そうです。ホテルの清掃ですね」「(Q.仕事は楽しい?)楽しい?食べるためです。食べるため」

 物価高騰などによって年金だけでは生活できないといいます。

 一方で、人材不足などの理由から企業側から必要とされるケースもあります。

 飲食店のアルバイト(69):「コロナの影響で辞めた人がなかなか戻ってこない。ずっと社員だったけれど、それからアルバイトに、継続雇用で。(自分が)いないと困る、回らない」

 仕事を続ける背景には、様々な事情があるようです。

■長年の経験生かし…チェーン店で働く65歳

 そこで番組は、シニアが働く現場を取材しました。

 大手うどんチェーン「丸亀製麺」で働く、加藤美代子さん(65)。加藤さんは主にテイクアウトの窓口を担当。一日5時間勤務で、週に3日働いています。

 4月にアルバイトで入ったばかりの新人ですが…。

 客:「パワフルですね。見えないですね、65歳には」

 同僚(58):「丁寧なところがすごい、お客様にも」

 客からも同僚からも評価される、その秘密は一体何なのでしょうか?

 加藤さんは元々、別の飲食店でホールスタッフとして働いていましたが、今年2月、65歳を迎え退職しました。

 丸亀製麺 江戸川春江店 加藤さん:「いざ仕事を辞めると時間を持て余してしまって。できればまたお仕事したいなと思って」

 日曜日。午前11時のオープンと同時に続々と客が入ってきます。

 加藤さん:「こちら1つ、はい」

 テイクアウトの窓口で注文を取ると、これまで経験のなかった盛り付け作業。そして、お会計もします。手際よく対応し、順調なすべり出しです。

 ところが、客のピークとなる午後12時すぎ…。

 同僚:「モバイルお願いしたいです」

 ネットからの事前注文「モバイルオーダー」が入りました。受け取り希望は午後12時15分。目の前の来店客と同時に対応しなければなりません。加藤さんピンチ…すると!

 加藤さん:「ヘルプお願いします。モバイル作らなきゃいけなくて」

 すかさず別のスタッフに窓口対応を依頼。そして、加藤さんはモバイルオーダーの商品作りに専念します。なんとか受け取り時間に間に合いました。

 と、ここで加藤さんが何かを発見しました。

 加藤さん:「『かしわ』と『いか』お願いします」

 うどんに欠かせない天ぷらが残りわずかに…。なくなる前に気が付きました。

 長年、飲食店で働いた経験から周囲に気を配る癖が自然と身に付いていたのです。

■積極的にシニアを雇用 「培った経験」に期待

 加藤さんより37歳年下の店長・清水俊宏さん(28)もその働きぶりに一目置いているといいます。

 丸亀製麺 江戸川春江店 清水店長:「どういうふうにお客様にサービスしてあげればいいんだろうとか分からないシーンがあるが、そういう時に『こうしたらいいんじゃない?』とか。大先輩なので学ぶところは多い」

 加藤さん:「体を動かせることと、働くことによってお金もいただけるので、できる限り続けていきたいと思っている」

 積極的にシニアの新規雇用を行う丸亀製麺。「これまで培った経験」に期待しています。

 「丸亀製麺」を運営 トリドールホールディングス人事部 渋谷伴生次長:「これまで六十数年生きてこられたなかで、色んなご経験をされていると思う。引き出しをたくさん持っていると思うので、引き出しをどんどん開けてお店の中に提供していただきたい」

■就業先は? 「違う業種」に就く人が多い

 一方、シニアの人材派遣を行う会社では、登録者数が年々増加。一度リタイアしたシニアが、再び仕事を求める理由は?

 シニア人材を派遣する 高齢社 村関不三夫社長:「働いているから社会や人とつながることができる。働くこと自体が幸せな老後を作ってくれる」

 そして、シニアの就業先に“ある傾向”があるといいます。

 村関社長:「元の職場とは全然違う業種に就いて働いている人が多いですね」

■未経験で活躍する“シニア集団” 一番の“新人”は…「81歳」

 未経験にもかかわらず現場で活躍する“シニア集団”を取材しました。

 埼玉県にある店。店内に並んでいるのは、家具や家電など中古品を買い取り、新品同様に生まれ変わらせた、いわゆる「リユース品」です。

 パワーセラー 臺真樹代表:「(Q.これ中古ですよね?)はい、そうです」「(Q.めちゃくちゃきれい。輝いていて)当社には専門のクリーニングのスタッフがいる」

 家電のクリーニングをしている場所に案内してもらうと、あちこちにシニアの姿がありました。

 鈴木忠志さん:「(Q.ご年齢は?)今、68歳」

 「電子レンジ」担当の鈴木さん。

 宮下克彦さん:「年齢は80歳です」

 「洗濯機担当」の宮下さん。

 そして…。

 蛇沼昭男さん:「75歳。60歳で定年して、それからずっとですから」

 ここで働いて15年目。「リーダー的存在」の蛇沼さん。

 元々は違う業種で働いていたシニアが、それぞれ役割を分担し家電のクリーニングを行っているのです。

 そんななか、一番の“新人”が…。

 林公哉さん:「林公哉といいます。81歳です」「(Q.ここで働いてどのぐらい?)まだ1年です。去年の4月から」

 冷蔵庫を担当する林さんです。

 林さん:「孫のお小遣い稼ぎ。(会うのを)楽しみにしているんですけれど、なかなか孫が来ないんですよ〜」

 林さんは80歳まで建設業界で働いていましたが、体力の衰えを感じ引退。去年、未経験の職種への挑戦を決めました。

■「焼き鳥」や「団子」の串で…「ちり1つも見逃さない」

 売れ行きが好調な「リユース家電」。それに伴い、仕入れる台数を多くしたことで、クリーニングの作業も増加しました。

 人手が不足するなか、あえてシニア人材を求める理由とは?

 臺代表:「朝早くから出勤して準備を始めたり、全然さぼらず真面目に働いていたりとか、若い人より優れていると思います」

 冷蔵庫を担当する新人の林さん。心掛けているのは「ちり1つも見逃さない」こと。

 中古品でも、一見するときれいに見えますが…。

 林さん:「意外とあるんですよ、ほら。これなんか、くっついているんだよね」

 よく見ると、こびり付いた細かな汚れがありました。

 林さん:「お客さんに納めるというのは、気を使うところがある。建設の仕事は1ミリまで。これだってごみ1つ、ちり1つまで取らないと買う人も気持ち良いもんじゃないからね」

 そこで、林さんが取り出したのは…。

 林さん:「これが焼き鳥の串。これがお団子の串です。捨てないで置いておいてくれと(妻に)言って。串でこうやれば、角まで(汚れが)とれる」

 きれいに洗った「焼き鳥」や「お団子」の串。指が入らない部分にも届き、傷も付きません。

 林さん:「竹だから丈夫なんですよ。なんでも捨てりゃいいってもんじゃない。使いようですよね」

■シニア同士で助け合い「健康につながる」

 一方、洗濯機のクリーニングを行う、80歳の宮下さんのもとにやってきたのは15年目のリーダー的存在、蛇沼さん。

 宮下さん:「これなんだ?これ」
 蛇沼さん:「それはしょうがないね。ほこりだけブラッシングして取ってもらえれば」

 シニア同士で互いに助け合うことで、作業の漏れやミスをなくし、高品質のリユース家電が店頭に並ぶのです。

 林さん:「全然畑違いの商売ですから、最初はできるかなと不安だったけれど、だんだん慣れてきて、皆良くしてくれるから」

 蛇沼さん:「色んな世代の人と一緒に仕事をしているから、言葉の交流、休憩時間の交流で、心が弾み笑顔もこぼれる。おのずと健康につながっている」

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