東京慈恵会医科大学の研究班が、特定の遺伝子変異を持つウイルスに感染することでうつ病がおよそ5倍発症しやすくなると発表しました。
うつ病の発症は周囲の環境と体質の2つが関係し、同じ環境であっても、うつ病になりやすい人となりにくい人が存在します。
東京慈恵会医科大学の近藤一博教授らの研究班がこの体質に関して63人を調べたところ、特定のウイルスが持つ遺伝子のうち、うつ病の原因となるタンパク質を作りやすい変異が存在することを発見しました。
この変異は、ほぼすべての人間が保有するヒトヘルペスウイルス6の中にある「SITH−1」と呼ばれる遺伝子にみられます。
この変異を持ったウイルスに感染している場合、そうでない人と比べておよそ5倍もうつ病になりやすいということです。
さらに、このタイプのウイルスによるうつ病患者のうち、家族にもうつ病患者がいる割合は半数近い47.4%でした。
研究班は、うつ病を引き起こしやすい「SITH−1」遺伝子を持つウイルスが親から子に受け継がれることで遺伝に関係するというメカニズムも分かったとしています。
近藤教授は、人の遺伝子がうつ病発症のしやすさを決めるのではなく、遺伝的な要素を決めているのが特定のウイルスの遺伝子変異によるものだと分かったことは、偏見の是正にもつながる重要な発見だとしています。
東京慈恵会医科大学 近藤一博教授
「(うつ病になりやすい人は)生真面目で働き者だという性質を持っている。その良さを引き出す、生かす生き方を工夫することが大事」
近藤教授は「うつ病を引き起こしやすい遺伝子変異に対する理解が社会で深まると、遺伝子検査の実用化ができる」と話しました。
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